ヒット習慣予報 vol.79『聴活ライフ』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの中川です。
ヒット習慣予報のコラムはメンバーが毎週リレー方式で書いてゆくのですが、なぜだか仕事が立て込んでいるときに限って順番が回ってくるんですよね。今回も案の定、作業に追われるタイミングに順番がやってきました。猫の手を借りて、書いてもらいたい状態です(笑)。今回は、そんな忙しい人たちの間で広がる新たな潮流「聴活ライフ」についてです。
「聴活ライフ」とは、仕事をしながら、家事をしながら、運動をしながら、効率的に音声を楽しんで聴覚をフル活用する習慣です。
例えば、最近オフィスで音楽を流す企業が増えてきたようです。一人ひとりが個別にヘッドフォンで音楽を聴くのではなく、オフィスのBGMとしてかける。ヘッドフォンをして仕事をする人は増えてきましたが、それだと社員間のコミュニケーションが減ってしまうから、それなら会社全体で仕事の邪魔にならない音楽をかけてしまおうという動きです。会社用の音楽を配信するサービスも生まれてきました。時間帯によって音楽を出し分け、終業時には帰宅したくなる音楽をかけることで、残業時間が減ったケースも。
また、音声コンテンツサービスが増えています。メディア、企業、個人が音声コンテンツを提供しあうプラットフォームが話題です。経済、ダイエット、ライフハック、組織論、語学などテーマは多岐にわたりとても面白く、特にSNSでファンの多いインフルエンサーが自らラジオ番組のように情報発信していて、リアリティのある話に人気が集まっています。オーディオブックも広がっています。活字を読むのとは違い、家事や作業をしながら聞くことができるので、多忙でも読書時間を確保できるのがメリットです。
さらに意外な音声に注目が集まっています。ASMRと呼ばれるもので、特に若者の間で人気が広がっています。ASMRは、Autonomous Sensory Meridian Responseの略で、日本語に訳すると、「脳がとろけるようにゾワゾワする気持ち良い反応」のこと。本能を刺激する音って感じですかね。具体的には、本のページをめくる音、シャンプーの音、焚き火の音、耳かきをする音など。そしてなんと食べ物の咀嚼音もよく聴かれています。リラックス効果があるようで、仕事中や寝る前などに聴かれています。僕もいろいろ聴いてみましたが、焚き火の音はとても心地がいいのですが、咀嚼音はちょっと苦手でした。。ちなみにASMRは、日本だけではなく世界中で話題になっており、Googleトレンドで見るとここ5年間で3倍以上検索数が増えています。地域別でみると韓国、アメリカ、カナダが上位で、日本は18位でした。
ではなぜ、「聴活ライフ」が増えているのでしょうか。
まずは、情報行動過多です。スマホの影響で多動化が進む中で、新たに情報を摂取する時間がなくなっていきます。そんな目も手も足も忙しい中で、残された耳をフル活用することで時間を効率的に使うようになっています。また、ストレスの多い社会の中で、音声によってメンタルを整えるケースも。音声をうまく活用し、仕事をリラックスして進めたり、受験勉強の集中力を高めたりする人が増えているのでしょう。さらには、テクノロジーの進化も影響しています。スマートスピーカーの浸透、耳をふさがないながら聴きにぴったりのイヤフォン、リアルな音声を録れるバイノーラル録音など音声が楽しみやすいテクノロジーが増えました。
このような「聴活ライフ」が拡がることで、新たなビジネスチャンスが予想されます。
「聴活ライフ」のビジネスチャンスの例
■ 掃除機/キッチン家電と連動し、主婦の家事に応じた音声が流れる。
■ 会社の資料が音声化されて、仕事の移動中に聴ける仕組みを作る。
■ 教育系の企業が、勉強中に聞く集中強化音楽や耳で学べる教材など“聴覚”にこだわったプログラムを開発する。
など。
最近、仕事中や歩いて帰るときなどに、よくラジオを聴くようになりました。テレビとは違って、ちょっとマニアックな話やゆるい話と時間帯に合った音楽が、妙に心地よくてハマっています。スマホで簡単に聴けますし、新しい情報との出会いも多いのでとてもオススメですよ。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂 統合プラニング局チームリーダー
ヒット習慣メーカーズ リーダーメーカーの商品開発職を経て、2008年に博報堂中途入社。
マーケティング職として、日々お得意先や社会の課題に向き合っている。飲みながらいろんな業界の人と話をするのが好きだが、気づくとお酒に飲まれている。好きな落語家は五街道雲助師匠。