ヒット習慣予報 vol.69『子どものデジタル待ち合わせ』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの荒井です。
4月になって、新しい学校・新しい会社などで生活が変わった方が多いかと思います。
特に小中学生などは、学校を卒業し、元々の友達と会う機会が減ったり、クラスが変わって前のクラスの友達と遊ぶ機会が減ったりと、友人関係が大きく変化するタイミングでもあると思います。
そのような中で、今回は子どもの友人関係に注目してみました。
まず、このグラフは博報堂生活総合研究所の調査「こども20年変化」で、子どもが自宅以外でよく遊ぶ場所を聞いたものです。
これを見ると、放課後に友達の家で遊んだり、校庭で遊んだりすることは減っています。
では、どのようにして友達づきあいをしているのかというと、その一つとして、デジタル上で遊んでいるという傾向があります。
特に特徴的なのは、デジタル上での待ち合わせを学校で約束しているという行動です。
例えば、Twitterで「子ども」・「友達」・「ゲーム」と共に投稿されている文章を見ると、「一緒」・「仲間」・「遊び」というように友達とゲームを楽しんでいるという投稿と共に、「学校」・「約束」というように、学校でゲーム上で会うことを約束している傾向が見られます。
今、ゲームの多くはオンライン化しています。私が子どもの頃は、ゲームといえば、一人もしくは、二人プレイで、ボスを倒すとか、トーナメントで優勝するとか、何かしらのクリアを目指して行うものでした。それが、オンライン化したことで、ステージがどんどん動的に変化し、クリアを目指すものから、そのゲームの中で友達と遊ぶためのものに変わってきているのです。ゲームでは様々なステージが用意されていて、そこでオンライン上で複数の友達と一緒になって戦ったりしています。
しかも、音声のやり取りも同時に行います。最近どう?みたいな話をチャットでしながら、ゲームを楽しみます。だからこそ、普通に遊んでいるという感覚なんでしょうね。しかも、自宅でやっているので、門限を気にする必要もありません。そのような事から、「19時に○○ステージで待ち合わせね」といった会話が生まれているのです。
また、それに伴い、友達づきあいが長期化しているようです。
例えば、中学生の子どもを持つ知人に聞くと、そのお子さんは、今でも小学校時代のクラスメイトの80%と何らかの会話をしているようです。冒頭のこども20年変化調査では、友達の数が1997年50.7人→2017年77.3人と過去最高になっているという結果もありますが、それも納得できます。デジタル上での待ち合わせは一日に何度も行われます。一つのステージで20分ほど会話しながら遊び、今度は違う友達と待ち合わせているステージに行くという事も普通に行われているようです。待ち合わせではなくても、友達のログイン状況もわかるので、デジタル上で一緒に遊ぼうと誘うこともあります。
そのようにして、ゆるい友達付き合いが長く続いているという状況です。
では、なぜそのような習慣が生まれているのでしょうか?
もちろん、ゲームのオンライン化によるところは大きいと思いますが、それ以外にも、習い事をする子どもが増えているという理由があると思います。放課後に習い事に行くので、なかなか学校が終わってすぐに友達と遊ぶ事ができない。でもデジタルで待ち合わせをすればお互いの空いている時間で柔軟に遊ぶ約束を作ることができるという事ではないでしょうか。
私は中学生の頃、よくゲームに熱中しすぎて、コントローラーを握りながらいつの間にか寝ていた事がよくありましたが、当時オンラインゲームで友達と遊ぶ事ができていたら、その時間も、もう少しは友達づきあいを深める意味のある時間になったかもしれません。
さて、ビジネスチャンスですが、以下のようなことが考えられるのではないでしょうか。
「子どものデジタル待ち合わせ」のビジネスチャンスの例
■ 友達と待ち合わせをして、一緒にテレビを見たり、お菓子を食べたり、炭酸飲料で乾杯したり等ができるアプリを提供する
■ ゲーム横断で、友達と遊んだ履歴を残せるダッシュボードを提供する
■ 子ども同士だけでなく、恋人、親子、親戚、学校の先生 などとの付き合いを深める事ができるゲームを提供する
など。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局 ヒット習慣メーカーズ メンバーSIer、メディアサービス企業、経営コンサルティングファームにて、事業企画に当事者・第三者として関与。これまで培ったビジネス視点に生活者視点を融合すべく博報堂へ転職。