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データをひきだすファシリテーション術第9回
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データをひきだすファシリテーション術第9回

“あいまいさ”は冒険だ!

“あいまい”なモンスターとデータで戦うみなさん、はじめまして!
VoiceVisionの櫻井です。

過去の連載では、VoiceVisionが得意とする「ファシリテーション&クリエイティブ」の必須スキルについてご紹介してきました。今回は先週まで連載していた”新しい答え”を創る「うみだし」に便利なフレームワークで、世の中の“あいまいさ”を捉え、具体化するためのフレームワークをご紹介します。(過去の連載はコチラからご覧になれます。)

 突然ですが、筆者は今温かいミルクコーヒーを飲んでいます。(だからなんだ…)
みなさんは「コーヒーにミルクを入れた飲み物」と聞いて、何を思い浮かべますか?
「カフェオレ」「カフェラテ」「カプチーノ」…コーヒーが1%しか入っていなければそれは「ほぼミルクなコーヒー」であり、「バターコーヒー」も類に含まれているかもしれません。

ここでお伝えしたいのは、単に「コーヒーにミルクが入った飲み物」だけでは“あいまいさ”を生み、人によって思い浮かべる飲み物が大きく変わってきてしまうこと、しかし反対にその“あいまいさ”から新しい価値や視点をうみだすこともできるということです。
私たちのファシリテーションでは、それぞれの立場から繰り出される幅の広い意見をまとめ、読み解く機会が多くあり、具体的な言葉やカタチにしています。その中で気付くことは、“あいまいさ”とは解釈の幅=物事の捉え方が拡がることであり、それは人の冒険心や探求心から生まれる可能性であるということです。データから掘り起こされるインサイトや新たな視点も、まだ世の中に気付かれていない “あいまいさ”を捉え、具体化してみることからはじまるのではないでしょうか。

“あいまいさ”に気付き、具体化する技術とは?

前回コラムのテーマ「もうそうする」では、予想のつかない未来を考える際には“思い込みから脱却”した発想が重要である、とお伝えしました。今回は情報を整理する方法によって“思い込みから脱却”し、新たな発見をうみだすための便利なフレームワークを3つご紹介します。

【1】考えを整理・具体化・拡散させる“マンダラート”

「マンダラート」は発想法のひとつで、9マスの中心となる真ん中に“テーマ”をいれ、周りのマスにはテーマを構成する要素(関連する事柄)をいれてアイデアを具体化させるフレームワークです。
米プロ野球のロサンゼルス・エンゼルスに所属する大谷翔平氏が、高校時代に「プロ野球ドラフト1位指名」という目標をマンダラートで立て、見事達成したことでも有名になりました。

ここからは具体的な例を挙げてみていきます。
たとえば、これからの時代を生きる「未来の生活者予測」をテーマに設定し、技術や環境の変化を深掘りし、生まれうる生活者の変化を予想していきましょう。

 まず真ん中にテーマである「未来の生活者」を置きます(①)。続いて、「未来の生活者」に関連して生まれうる技術や環境の変化、例えば「働き方の自由化」「自動運転」「家族のあり方変化」などを周りの8個のマスに書いていきます(②)。さらにここから(②)で書き出した要素を次の中心テーマに置いて、アイデアを広げていきます。例えば「自動運転」を真ん中に置いたら、「自動運転」が普及した時代に起こりうる生活者の変化を予測してまた周りの8マスを埋めます(③)。同様に(②)を全て次の中心テーマとして(③)を書き出していけばマンダラートの完成です。

 例のようにマンダラートはテーマを達成するために必要な要素を洗い出すことで、情報を整理することが可能です。抽象的なテーマを具体化したり、異なる視点から発想を拡げることもできる、非常に万能なフレームワークの一例です。

続いて、テーマの深掘りに特化したフレームワークをご紹介します。

【2】「なぜ?」を繰り返し真の課題を見つける “5W1H思考”

 「5W1H思考」はトヨタ自動車が業務で活用していることで知られていますが、元々は工場内で起こる問題に対してロスのない改善をはかるため、“WHY”の繰り返しによって根本原因を探った上でアクションすることを徹底するためのものだったそうです。
このフレームワークは深掘りしながら本質的な課題を捉えることができ、テーマの具体化やアイデアを実行する根拠などを洗い出す際にも使用できる便利なフレームワークです。

例えば…

身近な例として、筆者の悩みでもある「部屋が汚れてしまう」原因と解決策を探ってみると、このようになりました。
深掘りすると元々解決したかったテーマに対して意外な角度からの原因が発見でき、ただ「片付ける」に留まらず「浪費を減らす」「周りとコミュニケーションを生む」など、バラエティに富んだアイデアを見出せるようになります。この状態をつくることができると「上質な深掘り」ができていると言えるのではないでしょうか。

次は整理や深化ではなく、「普段と異なる視点」を獲得し、アイデア発想をアシストするフレームワークをご紹介します。

【3】「普通」を基準に発想を転換させてイノベーションを生む“逆視点技法”

データを扱うみなさんも同じ角度からでなく、異なる視点から物事をみる機会が多くあると考えます。視点の切り替えや発想を転換させることは、時としてピンチをチャンスに変えるような大きな気付きをもたらすことがあります。

その一例ですが、青森の「落ちないりんご」はご存知でしょうか。青森県では平成3年に起きた台風の直撃により、収穫期を迎えていたりんごがほぼ壊滅状態になったことがあるそうです。多くのりんご農家が悲嘆にくれる中、視点の切り替えで好転させた農家がありました。残ったりんごをただ売るのでなく、「強風に耐えて落ちなかったりんご」という価値を捉え、受験生へ合格祈願の縁起物として販売するという逆説的な発想で乗り越えたのです。
これを「逆視点技法」に当てはめてみると、以下の図のようになります。

まず、左側の青の丸に「りんごの普通」を箇条書きします。
●    沢山の人に食べられる
●    美味しく食べられる果物
●    旬の時期に出荷/販売
●    収穫時の状態で店頭に並ぶ

次に右側に「りんごのNOT普通」を書き出します。
●    沢山の人に食べられる →「受験生に特化」
●    美味しく食べられる果物 →「飾り物」
●    旬の時期に出荷/販売 →「受験シーズンに出荷/販売」
●    収穫時の状態で店頭に並ぶ →「受験生に合わせて“合格”の刻印入り」
このように「普通」と捉えた事柄をひっくり返すイメージで「NOT普通」を発想してみると、「飾り物」「受験シーズンに出荷/販売」などのアイデアを見つけることができます。
この状態で既に、「普通」という固定観念に捉われないアイデアが生まれていますね!

先ほど挙げていた「りんごのNOT普通」を統合し、今はまだないけれど今後拡がる可能性のあるアイデアとして「りんごを“受験時の縁起物”に!」となります。 

「逆説」とは、「真理にそむくようでいながら、実際には真理をついているさま。また、普通とは反対の方向から考えを進めるさま。」(大辞泉より)と説明されています。
このフレームワークでは、事象を逆さに捉えることで、新しい視点にたって考えることを可能にします。
今までにない新しい価値やサービスを生み出すとき、そのアイデアはよく「異端児」と呼ばれますね。つまり、大きなインパクトをうむアイデアであるほど、はじめは普通とは思えない奇抜なアイデアに見えてしまうということです。
その考えを応用すると、考えたいテーマの「普通」を捉えて、それを基準に「NOT普通」を発想することで斬新なアイデアがうまれます。

いかがでしたでしょうか。
これまで“あいまいさ”と説いてきましたが、読んでくださったみなさまへの感謝はあいまいにいたしません!(笑)お読みいただき、ありがとうございました。
ご紹介しました3つのフレームワークで、みなさんの「うみだし」のお役に立てますと幸いです。

さいごに

私が共創やコミュニティに携わりたいと思ったきっかけは、社会に対して自分の気付きを形にできれば、より良い未来を創ることに少しでも貢献できるのではと思ったことでした。しかし最近は“自分でも気付けなかった自分”に多く出会い、しかもそれは他者に気付かされることばかりです。

そこで思うのは、自分の気付きは世の中のほんの少しであること、そして他者の言葉の裏にある想いや気持ちに気付いて形にしてあげられることが大事であるということでした。
ファシリテーションによって言葉にしてあげられる気遣いが世の中に増えれば、より良い社会のうみだしにつながっていくのではないかと最近は考えています。
自分や人の想い・気持ちで素敵な社会を創っていくことを、みなさんと一緒にしていきたいと思っています。

次回は、“記録をグラフィカルに残す技術”をご紹介します。
議論の内容がわかりやすくなるだけでなく、その場の共通認識をつくることができる魅力的かつ重宝される技術ですのでお楽しみに!!

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  • (株)VoiceVision コミュニティプラナー
    宮城県生まれ。同志社大学 商学部 瓜生原ゼミにて、ソーシャルマーケティングによる「日本の臓器移植に関する意思表示率向上」を目指す活動に携わる。大学時代に醸成された“社会への想い”から、より良い未来をつくるべく、自分や他者の世の中への気付きを共創によって“社会の気付き”にしたい想いで2018年にボイスビジョンへ。
    あらゆる立場・人・意見を交差させて発見を増やせる場、同じ志をもった熱いコミュニティづくりを目指し、日々勉強・奮闘中。