ツールを超えた人に寄り添うAI 生活者と企業をつなぐ「共創エージェント」
博報堂DYホールディングスが掲げるAIの中心には「人間」がいる。生活者と密着した姿勢を貫き、創造プロセスの変革と新しい共創による市場を目指すという。同社の森が取り組みの全容を解説した。
(博報堂DYホールディングスが協賛している日経BP主催のイベント「AIリーダーズ100」にて「AIリーダーズ会議」と「分科会」が実施されました。本記事ではその様子をご紹介しております。)
※「日経ビジネス電子版Special」2025年11月21日に公開
掲載された広告から抜粋したものです。禁無断転載©日経BP
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/ONB/25/hakuhodody_holdings1121/
鍵は新たなコラボレーション
人間中心のAIで共創を築く
森は「私たちが掲げる理念はHuman-Centered AI(以下、HCAI)、つまり人間中心のAIです」と切り出した。この理念に基づき、博報堂DYグループは人の創造プロセスをAIでどう変革するかに挑んでいる。
「単なる効率化ではなく、企業と生活者が共に関わり合う新しいコラボレーションの形を生み出し、新しいマーケットを創り出す。そこにAIの可能性があります」と森は語り、コンセプトムービーを紹介。動画では生成AIと実写を融合し、人とAIが協働して未来を描く姿を体現した。
さらに森は、「AIと暮らす未来の生活調査」で浮かび上がった「AIネイティブ世代」の意識に触れた。10代の28%が「AIを恋人にしたい」と答えるなどAIを感情的パートナーとして捉えている点を挙げ、「AIは便利さを超える相互理解を深めていく存在。我々は『共創エージェント』と捉えています」と語る。
具体的な取り組みも進む。生成AIを活用し、子ども向け遊戯施設での来場者の体験を聞き取り、オリジナル新聞を生成するサービスを開発。生活者の関心を自然に把握し、企業との新しい関係性を築いている。社内では「AIメンタリング」制度を導入し、若手と熟練社員がAIを介して学び合う体制を整備。その他にも、8500名以上が研修に参加し、450名以上のAIエージェント開発者を育成した。既に100個のAIエージェントアプリが稼働中で、96%の業務削減率や1万時間の削減効果が生まれている。
これらの成果を踏まえ、森は「AIを通じた共創の仕組みによって顧客企業や生活者を巻き込んだつながりを創り出すことで、社会全体に新しい価値と可能性を広げていきたい」と述べ、HCAIを核に据えた共創の未来に期待を寄せた。

AIを創造性や協働のプロセスに生かし、社員・顧客・生活者との新たなつながりから市場を再定義する取り組みを進めている
【分科会Discussion Report】
想定以上の速さで“パートナー化”するAIの現在地点
Human-Centered AIの考えを掲げる博報堂DYホールディングスでは、「AIと生活者の関係」に注目している。そこで、2025年1~2月に東京・上海・ロサンゼルス・ロンドンの世界4都市での「グローバルメディアテック調査」と「日本/上海のAI生活者インタビュー調査」 を実施。博報堂 メディア環境研究所の山本が、興味深い結果を報告した。
上海では“愛着AI”が浸透中
日本の未来を占うヒントに
海外の生成AIの利用率は、上海は9割、ロサンゼルスは7割、東京でも過半数を超えていたという。さらに海外では趣味・娯楽での利用が進み、山本は「AIが日常の楽しみの一部になっています」と説明する。
最も急進的なのが上海の動向だ。日本でも情報検索や感情の吐き出しなど多様な用途が見られたが、上海では購買行動や意思決定、人間関係の改善、メンタルサポート、恋人にまでAIが生活に深く溶け込み、継続的な信頼・愛着関係が形成されている。
「結果を見ると、上海の数値が際立っていることが分かります。『信頼する情報源はAI』と答えた人が6割近くに達し、他の都市を大きく上回りました。『できる仕事はすべてAIに任せたい』『AIと融合して能力を高めたい』といった思考を過半数が支持。『AIをペットにできる』『AIと友達になれる』といった関係性の受容度も東京の2割程度に比べ、上海では過半数に達しており、AIとの共生を積極的に受け入れる姿勢が見えてきました」(山本)
上海の現地インタビューでは、「AIに相談して毒親との関係改善に役立てた」「実際の彼氏の声をAIに学習させて“彼氏人格”を作り、悩み相談をしている」「理想のキャラクターをAIで作り、疑似恋人として複数キャラと付き合っている」などの回答が得られた。「こうした姿は、日本の未来を占う意味でも重要かもしれません」とした上で、山本は次のように分析した。
「私たちは、現代の生活者とAIの関係を『検索AI』『発散AI』『相談AI』『愛着AI』の4つに整理しています。これらの分類によって、AIが単なる情報ツールを超えて、感情の受け皿や問題解決のパートナーになりつつあることが見えてきます。つまり今後は賢いだけでなく、性格の良さを備えたAIが求められるということ。日本企業やコンテンツホルダーはこの潮流をチャンスと捉え、生活者一人ひとりと共感を築く“パートナーメディア”を意識すべきだと考えます」(山本)
そのためにもAIが出力しやすい “AI-Ready”の体制が必須となる。山本は「正しい情報の箱がないと、AIが生活者に正しい情報を届けられなくなるのではないか」と指摘した。
バーチャル生活者を介して
生活者の本音を引き出す
森が講演で明かしたように、山本が紹介した上海の動きは、実は日本の10代とシンクロしている。
「今の10代は10年後には社会の担い手になります。それを踏まえると、将来の生活者ニーズとのズレが生じるに違いありません。利便性だけにフォーカスするのではなく、感情的に寄り添うAIの視点を取り入れてこそ、次世代にとって意味のあるAI活用が実現できると思います」(森)
そうした考えのもと、博報堂では30年以上にわたる生活者調査データ等を基盤に、AIで生活者を再現する「バーチャル生活者」を構築した。「バーチャル生活者との連動によって、新たな視点を反映した新しいマーケティング支援が可能になるはず。生活者と企業をつなぎ、人の可能性をさらに高めることができると考えています」と森は結んだ。
参加者コメント
コクヨ 野底 土南二・一氏
AIエージェントに任せて最終判断で人間が会話する新しい働き方が現実になると思います。
群馬工業高等専門学校 内海 璃久氏
同世代の若者でもAI活用の新しい視点を得ることは壁になっていると感じています。
Ballista 中川 貴登氏
「ときめき」が大事。AIを使いこなすにしても、まずは熱い気持ちが重要ではないでしょうか。
コスモエネルギーホールディングス ルゾンカ 典子氏
日常利用からうまく突破口を見つけられればビジネス活用も変わる。そんな期待を感じました。
Xinobi AI 馬渕 邦美氏
いかに人間を良い方向に導くにはどうすべきか。本気で議論を深める必要があると思いました。
大丸松坂屋百貨店 林 直孝氏
人間の接客の延長線上でのAI活用。それをデザインすることが我々の価値だと考えています。
サッポロホールディングス 桑原 敏輝氏
相談相手としてのAIの使われ方がここまで進化しているとは驚きです。今回の調査結果はAIの未来を考える良いきっかけになりました。
リンクアンドモチベーション 山中 麻衣氏
日本のAI活用は遅れています。AI-Readyなインフラ構築を進めていく必要があると思います。
トヨタコネクティッド 川村 将太氏
プロダクトが自然な会話をする。それだけでも、体験価値は高まるだろうと期待しています。
楽天グループ 楽天インシュアランスプランニング 幸崎 えみ子氏
「愛着AI」のポジションはとても衝撃的。活用の目安として1つの指標になると考えます。
ディアワンダー 前刀 禎明氏
AIをどう使っていくかに尽きる。海外のAIを使いこなし、何を創造していくかが大切です。
パナソニック コネクト 藤枝 久美子氏
AIは過去のルールを劇的に変える可能性がある。マインドセットの転換も重要になります。
芝浦工業大学 益子 宗氏
学生のAI活用が進む中、自分の言葉をどう育てるか。教育の鍵は、そこにあると思います。
三菱UFJ銀行 安井 也雄氏
子どもの名前を絞るために「相談AI」を活用。様々なAIの活用を学べたのが今日の収穫です。

博報堂DYホールディングス 森 正弥
人間とAIは共創パートナーで一方的な関係ではない。一緒に社会をつくることが大事です。

博報堂 山本 泰士
AIを家族のような存在と捉える人もいます。もはや感情領域を支える存在と言えるでしょう。
この記事はいかがでしたか?


