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ヒット習慣予報 vol.386『お出先調達』
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ヒット習慣予報 vol.386『お出先調達』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの佐藤諒平です。
だいぶ涼しく(もはや肌寒く)なってきており、外出しやすいシーズンですね。
外出するのは気分転換にもなり好きなのですが、ただ私にとって、外出と切っても切り離せない存在が「忘れ物」。無くしてしまうほどではないのですが「家に置いてきてしまった!」「外出先で置いてきてしまった!」と、ちょっとした忘れ物をして取りに戻るというのを私はよくしてしまいます…。

自分の忘れ物癖をどうにか直せないものかさまざま調べていたところ、なんと「忘れ物」の検索数がここ数年じりじりと高まっていることが分かりました。(忘れ物をする人が私だけではないと感じ、なぜかちょっとホッとしました…)

出典:Googleトレンド(「忘れ物」の検索) 

そしてさらに情報を集めていると、そもそも「忘れても大丈夫」な「出先で調達する」生活者の習慣が広がっていることに気が付きました。
そこで今回はタイトルを「お出先調達」と題し、生活者の新しい習慣兆しとしてご紹介させていただきます。

まずは忘れ物の定番、「傘」の出先での調達
傘を持ってき忘れた…置いてきてしまった…をついやってしまうのは、私だけではないはずです。そんな傘の忘れ物をする人にとって便利なのが、出先で 少額で借り、別の地点で返却までできる、いわゆる「シェア傘」。数年前からその存在自体の認知は広まっていましたが、最近とくに街なかで見かけることがとても多くなった気がします。特にコンパクトな折り畳み式のシェア傘/日傘が増えたこと、そして昨今ゲリラ豪雨のような急な雨や、今夏のような日差しの強い日が増えたことによって、使われるようになっているようです。忘れてきてしまってはコンビニや百均でまた買う、を繰り返していた私は、外出先でこれがあると非常に助かっています。

続いては、「香水」の出先での調達
身だしなみとして必須のものではありませんが、つけていこうと思っていたのに、うっかり忘れて家を出てしまうことが私はたびたびあります…。そんなときに助かるのが、通称「香水自販機」。海外で好評を博し、昨今日本の生活者にも注目がされています。これは数百円で、専用自動販売機から香水を1種選択すると、1プッシュ分選んだ香水が噴出され、身に付けられるというもの。SNSで生活者の声をみると、所有し普段使っている香水が多くない方は特に、これまでは使っていなかった香水を新しく”選ぶ楽しさ”が感じられ、より日常使いしたくなる気持ちが高められているようでした。

最後は、「日焼け止め」の出先での調達
すっかり夏が過ぎ、日焼け対策のメインシーズンは過ぎてしまった頃に恐縮ですが、ご紹介させていただきます。
こちらは日本ではまだ見られないのですが、欧米の一部の国で、多く人が集まる公園や海岸、遊園地といった場所に、ディスペンサー式で日焼け止めが設置され、多くの生活者が利用するようになっているというものです。香水の事例のように、1プッシュあたりの単価が決まった有料のものや、自治体が提供する無料のものもあり細かな仕様はさまざまですが、おおよそどれも、便利だという好感の声が多く挙がっているようでした。さらに、好評のポイントとしては、日焼け止めを持ち歩かなくなり、その使用済みや使いかけのごみが減ることも挙がっていました。たしかに私も、日焼け止めを家に忘れ外出先のコンビニで買ってまた家に使いかけが溜まってしまう、ということがよくあるので、ぜひ日本でも導入が進んでほしいと感じます。

 ここまで事例をご紹介したような「お出先調達」をしている生活者がなぜ昨今増えてきているのでしょうか。触れてきたような「忘れ物をしてしまうから/したくないから」というニーズがあることもひとつの理由であると思いますが、それ以外にもいくつか考えられます。
たとえば、過ごす場所の多様化という観点。昨今は、コロナ禍も過去のものとなり、生活者の過ごす場所や、移動する手段がフレキシブルに多くなったことで、できるだけ持ち運ぶ荷物を少なくしておきたい需要が高まり、出先で調達できることへの需要も高まったのではないかと考えます。
もうひとつは、サステナブル意識の高まりという観点。かつては各個人が持つことが当たり前だったものも、使いきらないまま捨てるのはもったいない、必要な分だけ使いたい、という意識は、近年高くなっていると考えられます。そのニーズから、みんなでシェアする、結果としてみんなが出先で調達できる方法が広がっていったのではないでしょうか。

今回も最後に、「お出先調達」のビジネスチャンスについて考えてみました。

「お出先調達」のビジネスチャンス例
■秋冬に乾燥しがちな商業施設やオフィス、映画館・劇場などに設置され、ディスペンサー式で1プッシュ分好みの香りのものを選んで購入できる、乾燥が気になる女性や子ども向けの「ハンドクリーム自販機」
しっかり冷えた/温まったものをすぐ借りて使うことができて、また別のスポットでも返却できる、時間課金制の「(夏期)電動アイスネックリング / (冬季)電動カイロ のシェアリングサービス」
駅やオフィス街で、ごくシンプルな黒靴下がワンコインで買うことができる、大雨が降った日などに便利な「緊急くつした自販機」
など…

この他にも、旅行客向け や 小さな子連れ向け の、出先で調達できるものはこれからより広がっていくのではないかと個人的には考えています。あらゆる「もってくるの忘れた!」に対応できる便利で安心なまちが、近い将来どんどんできたらいいな、と妄想しています。そんな妄想が現実になるまでは、そもそも自分が忘れ物してこないよう、なんとか尽力したいと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 新潟博報堂
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2020年 新潟博報堂に入社。2023年より2年博報堂に出向後 帰任し、地域で一人前のマーケター・プラナーを目指して修行中。鍵を会社に置き忘れたことに自宅の扉前で気づき、熱帯夜に再出社したことが、今夏の地味に辛かった忘れ物の思い出です。