
日本語動画を生成AIで多言語化!AI×クリエイターの力で生み出す「KOTOBATON」とは
株式会社博報堂プロダクツでは、生成AIを活用することで、日本語話者による動画を30言語以上に翻訳する多言語クリエイティブソリューション「KOTOBATON™(コトバトン)」の提供をスタートしました。企業のグローバル展開、インバウンド対応の一翼を担うとともに、動画資産の活用にもつながるという本サービス。その活用事例やKOTOBATONならではの強みについて、担当者に話をききました。
KOTOBATON™(コトバトン)とは---
日本語話者による動画を、話者の声そのままに30言語以上に翻訳。リップシンク技術を用い、あたかも一人の話者が多言語を操っているかのような自然な動画に仕上げます。既存の動画を生成翻訳するだけでなく、動画領域に精通したプロフェッショナルがクリエイティブ全般における制作サポートも行います。
参考:生成 AI×多言語クリエイティブでグローバル・インバウンド展開を支援する「KOTOBATON™(コトバトン)」の提供を開始
▲サンプル動画に出演するのが、映像プロデューサーの桐石雄毅
日本語動画を、話者そのままの声で多言語化
-はじめに自己紹介をお願いします。
- 桐石
- 博報堂DYグループの総合制作事業会社である博報堂プロダクツでは、多様な映像クリエイティブの部署を持っています。テレビCMを制作する部門のほか、私が部長を務める部署ではWeb動画やSNS動画といった動画やデジタルコンテンツの制作を担当しています。動画の撮影はもちろん、モーショングラフィックも得意としていますので、撮影を必要としない動画も多く手がけています。
-KOTOBATONを開発するに至った背景を教えてください。
- 桐石
- もともと我々の事業本部には、韓国や中国のメンバー、英語に堪能な人材が在籍していて、専門性の高い「言語×クリエイティブ」というのがひとつの強みになると考えていました。折しもインバウンド需要の増加や企業のグローバル化の流れで、弊社にも多言語の動画制作依頼が増えていた時期。動画生成AIに特化したパートナーと連携することで、新しいソリューションを生み出すことができるのではないかと考えて開発をスタートしました。コロナ禍が落ち着いて海外からの観光客が戻りはじめた、2023年頃の話ですね。
たとえば、日本発信のゲームを海外に広めたいといったグローカライズ、海外のサービスを日本に紹介したいという日本語ローカライズ、両方のニーズに応えるためのソリューションです。
-従来の動画翻訳とはどう違うのでしょうか?
- 桐石
- ひとつの言語で書かれた原稿を翻訳会社に翻訳してもらい、ネイティブのナレーターに読んでもらうというというのが従来の制作フロー。しかし、KOTOBATONを使うと、日本語で話している動画が、話者そのままの声で多言語に翻訳されます。
口の動きもシンクロしますので、本人が話しているように見えます。
しかし、現状のAI翻訳は100%の精度ではありません。一度AIが生成したものを、言語に長けた人間の目でしっかりチェックするというプロセスを踏んでいます。また、発音についても完全にネイティブが話しているような流暢さにはなっていないというのが実情。
その“違和感”がいい意味で関心を引くという利点もあると思いますが、企業としてオフィシャルなものを発信したいという場合は、従来通りネイティブのナレーターをアサインするなど、ご要望に応じた制作フローを踏んでいます。
いまある動画を活かす。インナーコミュニケーションの武器にする
-どんな場面でKOTOBATONを使うのがおすすめなのでしょうか?
- 桐石
- もともと制作してあった動画をグローバル用に二次利用する、といったケースにすごく向いていると思います。動画は企業の財産。YouTubeチャンネルに眠っている動画や、コロナ禍でたくさん制作したのに、明けてからすっかり使わなくなってしまった動画など、休眠動画を活かすにはぴったりのサービスだと思います。
ゼロから撮影するにはコストがかかりますが、すでにある動画にKOTOBATONの生成AI技術を加えることで、スピーディーかつ低コストにグローバル展開できます。SNSのアカウントや、店頭で流す商品紹介動画など、さまざまな活用をしていただけます。
-いまある動画を活かして、たくさんの翻訳動画をつくりたいというケースにピッタリですね。
- 桐石
- はい。まずはそういった「いまある動画を活かす」ためにご活用いただくのがこのサービスの魅力を知っていただくための第一歩だと思います。もうひとつKOTOBATONの活用法として、インナー向けの発信動画に使っていただくのもおすすめです。社長から社員に向けたメッセージや、販売員向けの新商品紹介動画などですね。
博報堂プロダクツはインナーコミュニケーションのクリエイティブにも強みを持っている会社です。これまで多くの企業のパーパスやビジョンを策定し、社内外に根付かせる活動をサポートしてきた実績があります。そのノウハウを活かして、動画の企画から制作、さらには多言語化までワンストップでお手伝いすることができます。
-既存の動画をライトに多言語化するという使い方、またインナーコミュニケーションをしっかり組み立て、最終的に多言語動画で伝えるといった長期的な活用もできるんですね。
- 桐石
- そうですね。KOTOBATONというネーミングは「言葉」と「バトン」の組み合わせ。「言葉を使ってつながる」という思いを込めて名付けたものなので、単純に多言語でグローカライズするというだけでなく、社内の意思統一やコミュニケーションの一助になれたらこんなにうれしいことはありません。
実際、社内プレゼン用に多言語動画をつくりたいというご依頼も受けるようになり、こんな活用法もあるのかと我々も気付かされているところです。社内用の動画であれば、スマートフォンで撮影した動画でも十分使えますからね。
AIだけでなく、人の力を活かしたソリューション
-KOTOBATONは7月に正式リリースされたサービスですが、実際の活用例などありますか?
- 桐石
- 博報堂生活総合研究所が開催する、マーケティング担当者や経営層などに向けた研究発表イベント「サマーセミナー 2025」のウェビナー動画(45分)を、発表者が元から英語で話しているかのように、発表者本人の表情や声色のまま英語版にしています。日本のマーケターだけでなく世界に発信したいという思いを、ひとつの動画から形にすることができるので、こういったウェビナーなどに活用いただくのも有効だと思います。
-現状AI翻訳の精度は100%ではないとおっしゃっていましたが、この先はどんどん精度が上がっていくのでしょうか?
- 桐石
- そうなると思います。
ただ、発音という意味では、もしかしたらAIらしさというか、ちょっとした“違和感”を残したほうが注目してもらえるかもしれません。その人自身の声が活かされることもポイントなので、アフレコしたような完璧な発音でない方がいいケースもある。そのあたりはAIならではのユニークさでもありますよね。僕が話しているサンプル動画を観た友人も、すごくおもしろがってくれていたので(笑)。
-さいごに、今後どのようなシーンでKOTOBATONを活用いただきたいか、企業やマーケターに向けてメッセージをお願いします。
- 桐石
- KOTOBATONを活用することでコストをかけずに多言語コミュニケーションが可能になれば、さまざまな企業さまにとってグローバル展開の糸口になれるかもしれません。
世界への架け橋の一助となれればうれしいですし、これまで動画制作に踏み出せなかった企業さまもKOTOBATONをきっかけに興味を持っていただきたいですね。
我々が大事にしていることは、AIに100%委ねるのではなく、必ず人の手を入れるということ。AIに任せるのであればどんなサービスでも同じです。しかし、KOTOBATONは「言語×クリエイティブ」に強みを持つ我々がしっかり監修し、最終の編集も人の手で行うサービス。
企業のなかで眠っている動画をどう活用できるかというご提案もできますし、インナーコミュニケーションに長けたスタッフが企画から動画制作までサポートすることも可能です。そういった弊社の強み、クリエイターの力を活かしたサービスとして、企業さまのお役に立てるよう、今後も進化を続けていきたいと考えています。
<KOTOBATONの詳しい概要はこちら>
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博報堂プロダクツ 動画コンテンツクリエイティブ事業本部
クリエイティブプロデューサー広告制作会社を経て、2015年博報堂プロダクツ入社。営業職、グラフィックなどの制作プロデューサー職を経験し、現在は動画コンテンツクリエイティブ事業本部に所属。
“動画”とつくすべての制作物のプロデューサー。(オーダーに応じた、最適な動画や制作物を、最適な人材で、最適なスピード感で、対応力を武器に、“ちょうどいい”プロデュースを心がけています。)