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ヒット習慣予報 vol.320『アウトドアシェアリング』
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ヒット習慣予報 vol.320『アウトドアシェアリング』

こんにちは、ヒット習慣メーカーズの山本です。
夏の訪れを感じ始める昨今ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。僕はといいますと、アウトドアシーズンの到来で、大好きな自然へとキャンプなどで遊びに行く機会が増えてきました。森や川など、自然に囲まれて時間を過ごすのはやっぱり好きだなと思います。いっそのこと、山の土地を買ってみたい!と思って調べてみたりもしたのですが、価格が可愛くなかったり、管理もなかなか大変そうだったりで、やはり並大抵のことではなさそうです。
自然と触れ合うために、気軽に通える自分のアウトドアスペースが欲しいけれど、経済面でも精神面でも一人だと心細い…。そんなことを思っていると、似た考えを持つ人が多いのか、興味深い動きがあることを知り今回テーマにすることにしました。題して、「アウトドアシェアリング」。自然を感じられる土地や物件を複数人でシェアすることで、お気に入りの自然スポットに通う人が増えている、という話です。具体的にどのようなケースがあるのか見ていきましょう。

ひとつ目の例は、アウトドアシェアリング@キャンプ場です。
キャンプ場といっても、広く一般に利用を開放する通常のキャンプ場とは違い、オーナー権をシェアすることで、ワンランク上の体験ができる会員制のキャンプ場が最近人気を博しています。共同オーナー権を買うと、ほかのオーナーの予約が入っていない日程であれば、いつでもキャンプサイトを利用することができるというものです。最近僕も友人の紹介で、ある共同オーナー制のキャンプ場に遊びに行かせてもらったのですが、きれいな川や見晴らしの良い景色を満喫できるだけでなく、有名建築家の方がデザインした設備が完備されていたり、大人も楽しめるツリーハウスのような遊具があったりと、贅沢なキャンプ体験を自分の好きなタイミングでいつでも楽しめるのが素敵だなと思いました。聞くところによると、オーナー権がなかなか出ず、出てもすぐに売れてしまうのだとか。ほかにも調べてみると、一日一組に限定せず、ヨガプログラムや交流を楽しめるバーエリアを設けることでコミュニティとしても機能しているキャンプ場もあるようでした。

続いてご紹介するのは、アウトドアシェアリング@レンタル畑です。
レンタル畑とは、畑などの農地を複数人でレンタルすることで、小区画からの土いじりや野菜作りを自宅の近くで楽しめるサービスです。民間企業が運営しているものから、行政が畑を区画分けして複数人に格安で貸し出す市民農園と呼ばれるものまで様々なタイプがあり、庭や菜園を持っていない人でも気軽に緑を育てられると人気のようです。Google トレンドで「レンタル畑」と検索してみると、コロナ前の時期に比較してコロナ禍以降は検索数が大きく伸び、現在もそのトレンドが継続していることがわかります。

「レンタル畑」の検索数推移

出典:Google トレンド

レンタル畑の中でも最近話題になっているのが、コミュニティ菜園と呼ばれる交流型のタイプのものです。コミュニティ菜園は、割り当てられた区画の畑を一人で管理する通常の運営タイプと異なり、参加者みんなで1つの菜園を耕し、収穫した野菜もみんなでシェアするのが特徴です。野菜作りのノウハウや、肥料やスコップなどの準備物など、畑仕事に必要なものがシェアできるため気軽に始めやすいということに加えて、農園らしい気持ちの良い場所でのBBQ会や畑の野菜を使った料理教室会など、交流のためのプログラムが充実していることが人気の理由のようです。このような動きは、地域交流の手段として注目される動きもあるようで、ある市が大手企業と組み、公園の一部をコミュニティ菜園として運営する実証実験をはじめたことが最近ニュースになっていました。地域交流に限らず、自然の中で体を動かして人とコミュニケーションをとることが、子どもの教育や高齢者のフレイル予防にもつながるとして期待されているようです。

最後にご紹介するのは、アウトドアシェアリング@エコビレッジです。
最近、エコビレッジと呼ばれる地域コミュニティが、密かにトレンドとして注目を集めています。エコビレッジとは、食糧やエネルギーの自給など、持続可能な自立した暮らしを目指す地域コミュニティを指す言葉です。街づくりや不動産開発のコンセプトとしても使われる言葉で、1960年代にあったデンマークの共同体に発祥があるといわれています。日本でも、防災や環境問題への関心の高まりも後押しして、再び注目され始めているようです。Google トレンドで調べてみると、今年に入ってから検索数が急上昇していることがわかります。

「エコビレッジ」の検索数推移

出典:Google トレンド

ネットの記事や動画でさらに調べてみると、農園で食べ物を自給したり、廃材を加工して家具や建物を自作したりと、住民同士が協力して自然と共に暮らすライフスタイルが紹介されていますが、コメント欄を見て驚いたのは、週末だけやひと月限りなど、限定的な参加でエコビレッジに関わる人も多いことです。興味はあるけれど、都市部から移住するのは踏み切れない人々が、ボランティアとしてやお試し的に通えるような体制を整えたエコビレッジが注目されているようです。環境問題や自然災害への関心の高まりも相まって、自然に寄り添ったライフスタイルをより手軽に実践してみたいと感じる人が増えているのだと思います。

ここまで「アウトドアシェアリング」の例を紹介してきましたが、なぜいま注目を集めているのでしょうか。
ひとつ目の理由は、シェアすることによって生まれる、「手軽さ・ハードルの低さ」にあると思います。レジャーとしてのアウトドア浸透や、災害や環境問題への関心の高まりもあり、自然と触れる時間の重要性が再認識されている昨今、ニュースでは農地や山林を自分で購入する生活者の姿も話題になりました。しかし、自然に触れるために通えるサードプレイスとしての場所を求めれば、当然手間もコストもかかります。そんな気持ちの受け皿として、複数人でシェアすることでハードルを下げる体制やプログラムを展開するアウトドア施設が増えていることが背景にあると考えます。

2つ目の理由としては、自然体験を通じた「つながり・コミュニティ」を求める人が増えていることがあると考えます。今回ご紹介した例を見ても、前述したような合理的な理由だけではなく、農作業や体験プログラムなどの自然体験を誰かと共にすることで繋がりを育みたいという気持ちが「アウトドアシェアリング」の背景にあるように思いました。コロナ禍のアウトドア人気は、人目を気にせず楽しめるレジャーとしての側面もあったように思いますが、リアルでの交流が戻るにつれ、自然での体験もよりみんなで楽しめる生産的なものが求められ始めているのではないでしょうか。

最後に、「アウトドアシェアリング」のビジネスチャンスについて考えてみました。

「アウトドアシェアリング」のビジネスチャンスの例
■みんなで施設をDIYしていく共同オーナー制の無人島の販売
■秘境で川サウナを楽しめる会員制コミュニティの運営
■コミュニティ型のアウトドアスペースに特化した不動産メディアの立ち上げ

キャンプ場もシェアする時代なのか!という発見から始まった今回のテーマでしたが、菜園などの身近なものから、暮らしの場としての村まで、その形は様々です。僕もいつか、シェアして通えるような理想のアウトドア基地に出会えるように、引き続き動向をチェックしていきたいと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2017年に博報堂入社以来、ストラテジー×クリエイティブの統合発想を武器に、企業やブランドの戦略・企画立案に従事。写真と音楽とすべてのユースカルチャーをこよなく愛する。