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ヒット習慣予報 vol.158『手間抜き朝食@中国』
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ヒット習慣予報 vol.158『手間抜き朝食@中国』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの江です。

中国人にとって、最も郷愁を感じるタイミングは紛れもない春節。今年の春節もコロナの影響により国をまたぐ移動が制限される中で帰省が叶わず、異郷で暮らす僕の故郷や家族への断ち切れない思いが募る一方です。

コロナになる前は、毎年1、2回のペースで中国の実家(湖南省長沙市)に帰っていましたが、その際の楽しみは、家族や友人に会える喜び以外に、何と言っても僕の中で最高に美味しい湖南料理を思う存分食べられることに尽きます。朝食に長沙っ子のソウルフードでもあるスープ米粉(ビーフン)をすすれるなんて、これ以上にない幸せです。中国では、「朝食は豪華に食べ、昼食は腹いっぱいに食べ、夕食は少なく食べる」ということわざがあるのですが、朝食のバリエーションが想像以上に豊富ですし、食べる場所はともかく、今まで作る手間や買ってくる手間がかかることで朝食を抜くという話はあまり聞いたことがありませんでした。しかし、最近は中国の朝食事情が少しずつ変わってきているようです。

今回のテーマとしてご紹介したいのは「手間抜き朝食」です。
「手間抜き朝食」の象徴として、「早餐機(朝食マシン)」というキッチン小型家電は、ECサイトの売れ筋商品ランキングにもよく載るほど、にわかに人気を集めています。Baidu指数の推移をみても、早餐機への関心がこの1年で急激に高まっていることが見て取れます。


      
出典:Baidu指数(中国)

人気ブランドの早餐機商品紹介動画を見ると、慌ただしい朝に、早餐機1台で10分もかからず、ベーコン、目玉焼きやパンを焼きながら、ヨーグルトを自動で作ってくれるほか、サンドイッチも食パンと好きな具材をセットするだけで一瞬でできあがってしまいます。それに、おしゃれなデザインもマルチ機能に負けていません。そんな動画を見ていたら、僕も早餐機が欲しくなりました。

早餐機のほかにも、おうち時間で手軽に楽しめる、様々な自熱式の食品は若い世代を中心に話題を呼んでいます。自熱式インスタントラーメンもあれば、自熱式弁当や自熱式火鍋も売れています。加熱材をパッケージにセットして水をかけると発熱して具を温めてくれるという仕掛けであるため、火をつけなくても、電子レンジに入れる手間も省けます。
待っている間には10分ぐらいの時間を有効活用して、身支度を整えることができますね。

ではなぜ、「手間抜き朝食」は広がっているのでしょうか?
理由は大きく3つあると考えられます。

1つ目はやはりコロナの影響です。中国では朝ごはんを外で食べたほうが安く済むし、歩きながら食べれば時間の節約にもなります。家で作って食べるのはよほど時間とお金に余裕のある人だと思います。このご時世に、コロナの感染リスクを考えると、朝食を提供してくれる食堂や屋台の衛生状況や人の混み具合を不安に思い、しかたなく自宅で済ませようする人が増えているのでしょう。

2つ目は中国人の食生活の多様化です。中国の経済成長に伴い、若い世代は幼い頃からファストフードの味に慣れ親しんでいて、作るのに手間がかかる肉まんや油条(小麦粉をこねてひねりを加えて棒状に成形して油で揚げたもの)などの定番だった朝食より、トーストやサンドイッチなどのパン類を好んで食べるようになったと言われています。


   
(※写真はイメージです)

3つ目は、「おひとり様消費」の台頭です。今、中国には2億2000万人もの独身者がいます。特に、大都市にいる多くの独身者は、自分の時間をなるべく仕事に費やしたいと考えており、家事を分担してくれる家族もいなければ、貴重な睡眠時間を削ってまで早起きして朝ごはんを手作りで準備する気力もありません。

最後に、「手間抜き朝食@中国」から発想してビジネスチャンスを考えてみました。

 「手間抜き朝食@中国」のビジネスチャンスの例
■コンビニのネットワークを活用して、近隣の住宅団地まで、共同購入で注文されたできたてあつあつの朝食をまとめて配達するサービスの提供。
■栄養バランスや味の好みに配慮した朝食セットのサブスクリプション配達サービスの開発。
■自宅で朝ごはんを手作りで作って食べる際に、その種類や所要時間に合ったテーマ曲・BGMが選択できる音楽アプリの開発。
など。

僕はもともと料理が得意で主夫力高めと自負していますが、リモートワークでせっかくおうち時間が増えているわけですから、あえて手間暇かけて朝ごはんのレパートリーを広げながら、春の訪れを待ちたいと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。 感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 博報堂 統合プラニング局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2017年博報堂に中途入社。
    近いようで遠い中国のヒット習慣から仕事のヒントを探す日々。
    中国で一番辛いと言われる故郷の湖南料理をこよなく愛する、生粋の「辛党」。