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アニメーションがもたらす映像革命 ──新しい映像の時代に挑戦するクラフター
TECHNOLOGY

アニメーションがもたらす映像革命 ──新しい映像の時代に挑戦するクラフター

世界トップクラスのアニメーション制作力と、CGやVRを駆使するテクノロジー力。その二つを融合して新しい映像領域を開拓しているのが、博報堂DYグループの映像コンサルティング会社、クラフターです。5Gが実用化されて、いよいよ私たちの身の周りに映像が溢れる時代にクラフターが果たすべき役割について、CEOの古田彰一が語りました。

■作画とCGのいいとこ取りをした独自のクリエイティブ

クラフターは映像コンサルティング会社ですが、一般的な映像制作会社と異なるのは、手掛けている映像がアニメーションであり、かつその表現や技術を使って社会や企業の課題を解決することをビジネスの一つの柱にしている点です。世界でもおそらく類例のない「映像で課題解決する会社」、それがクラフターです。

アニメ制作には大きく二つの方法があります。手描きで作画する伝統的な方法と、CGを活用する方法です。日本のアニメが海外でも人気があるのは、作画のクオリティが非常に高いからです。しかし、作画には専門的なアニメーターのスキルが必要とされるために、ベテランの人材が不足してきており、コストと時間がかかるという難点があります。一方CGは、若手の参入も多く、テクノロジーが日進月歩で進化し続けるというメリットがあります。

その二つのメリットを組み合わせたのが、「スマートCGアニメーション」というクラフター独自のクリエイティブです。手描きで作画したようなアニメーションルックの映像をフルCGでつくるのが「スマートCGアニメーション」で、クオリティとコストを両立できるだけでなく、はじめから3D映像として制作するので、幅広い用途に応用できる点に大きな特徴があります。

実写映像の場合は、基本的にタレントや俳優などの起用が必須で、コストやスケジュール、撮影場所といった制約や、病気やケガなどの不測の事態も起こり得ます。一方、アニメーションの場合は、制作側がキャラクターを100%コントロールすることができます。時間的、空間的な制約もありません。結果、ビジネスリスクを下げながら、映像の可能性を格段に広げることができるわけです。

もう一つ、これはとくに日本のアニメーションの特性ですが、非常に少ない情報量で豊かな表現をすることができます。例えば、キャラクターの感情表現、動く速度、場面ごとの空気感などです。私たちは、そういった要素を研究する「アニメーションテクノロジーラボ(ATL)」というワークショップを立ち上げ、アニメ独自の表現の探求を続けています。

■人のリアルな動きをアニメ化する独自技術

クラフターの映像制作技術のひとつに、「モーションキャプチャー」を活用して制作したスマートCGアニメーションを、広告などのコミュニケーションに活用するという方法があります。モーションキャプチャーとは、ご存知のとおり、マーカーをつけたボディスーツを着た人の動きをカメラで捉え、映像化する技術です。これをリアルタイムエンジンというソフトと連携させることで、人の動きをまさにリアルタイムでアニメ映像にすることができます。
モーションキャプチャーはハリウッド映画やゲームの世界では広く使われているテクノロジーですが、これをリアルタイムエンジンと組み合わせてアニメーション芝居を強化する取り組みは、世界でもまだ始まったばかりだと思います。

映画やゲームの制作の場合は、体育館くらいの広さのスタジオで人の動きをキャプチャーしていくケースが多いのですが、クラフターでは本社内にある比較的コンパクトなスタジオですべての作業を行っています。大きな動きを撮ることよりも、キャプチャの解像度を上げて、「芝居」のクオリティを上げることを重視しています。

専用のマーカーをつけたスーツを着た人の微細な動きを、スタジオ内に設置した高精度なカメラで捉えてアニメ空間に取り込み、それを適宜組み合わせて一つの世界をつくっていきます。もちろん、キャラクターはすべて別撮りが可能ですし、撮り直しもすぐにできます。

スタジオ内に設置した最新鋭のカメラと、その場で作業可能なシステムが揃っている

質の高い映像をつくるには、3DCGアニメーションのモデルをつくるモデラーと呼ばれる人たちの高いスキルが必要になります。また、生成されたアニメーション映像を最終的な作品に仕上げていくのも人の力です。モーションキャプチャーで100%のクオリティの作品をつくることはできます。しかし、それを120%のクオリティにするのはあくまでのクリエイターの力です。それができるところがクラフターの大きな強みであると自負しています。

さらに、ボディスーツを着て演技をする人たちのスキルも必要になります。アニメーション映像として「映える」動きができる「モーキャプアクター」という新しい職業が生まれつつあります。

モーキャプアクターの動きはリアルタイムで連動する

この技術によって、これまでになかった広告映像が実現すると考えています。人のリアルな動きとアニメーション制作スキルの融合によって、生活者とのより豊かなコミュニケーションを実現する映像をつくることが可能になります。またそれによって、アニメーションに対する認識が大きく変わることになると考えています。

■「VR×物語」でブランドの世界観を伝える

先ほど「はじめから3D映像として制作する」と言いましたが、それによってVR空間にアニメーションをそのままもっていくことができる点が、スマートCGアニメーションの大きな特徴です。それはすなわち、VRを「物語の空間」にできることを意味します。

これまでのVRの活用方法は、主にアトラクションでした。一方、クラフターにはアニメ映画やテレビシリーズを制作するノウハウがあって、独創的な物語をつくることが可能です。VR空間の中に物語の世界をつくり、その世界に没入してもらうことで、まったく新しい体験を味わってもらう。そんなことができるわけです。

一般には、実写映像の方がVRの没入感は強いようにも考えられていますよね。しかし、実際は逆です。VRが現実に近ければ近いほど、現実との微妙な差に違和感が生じるものです。一方、アニメははじめから現実との距離感があるので、むしろ入り込みやすいといえます。実際に体験してみると、非常に不思議な没入感が得られます。
物語の世界に入り込むことができるということは、これまでにない形でブランドの魅力や世界観、サービスの価値、あるいは製品の使い方などを「体験」として伝えることができるようになります。

広告映像ではありませんが、「クイックキャビンVR」という自動車の実証実験用のソリューションの展開を始めています。これは、3Dアニメーション映像のノウハウを使って、車のコクピットをVR上に完全再現するものです。

これまで、自動車のデザイン、運転席のレイアウト、計器類の配置などを検証する際には、実物大のモックアップをつくるしかありませんでした。それには時間とお金がかかります。しかしVRを使えば、レイアウトを変えることも、メーターを差し替えることも自在にできます。さらに、ハンドルコントローラーを使った運転をVR内でできるし、ドライバーの視点をトラッキングして、危険運転を回避する計器の配置などを実現することもできます。コストを最小限に抑えたスピーディなPoC(概念実証)ができる。それがクイックキャビンの最大の価値です。

3DCGやVRの技術だけでなく、クリエイティブのノウハウを製品開発にいかすことができます。最近では、運転席の計器のパネルがすべてデジタル表示になってきています。さらにフロントガラスなどに情報を表示するヘッドアップディスプレイという仕組みを搭載する車も増えてきています。自動運転が実現したあかつきには、車の窓はすべてスクリーンになるでしょう。
そうなると、これまでとは異なった計器や内装のデザインが求められることになります。面白いことに、そこにロボットもののアニメのコクピットのデザインが非常に役に立つんです。かっこよくてドライバーにとって心地よいディスプレイ表示を実現するための参考資料が日本のアニメの中には山ほどあります。

自動車だけでなく、店舗設計、住居設計、街づくりなど──。「クイックストア」「クイックホーム」といったソリューション展開も考えています。

■クリエイティブとテクノロジーをシームレスにつなぐ

アニメを使うことによって、コントロールできる領域が広がり、小回りの利く映像展開が可能になります。その認識をぜひクライアントのみなさんと共有していきたい。
重要なのは、それを実現するには一気通貫の仕組みが必要であるということです。VR、アニメーション制作、CGなどをそれぞれ専門的に行っている企業はたくさんあります。しかしクラフターは、映画やテレビなどのアニメーション制作力と、VRやCGなどの技術力、そして課題解決のためのコンサルティング能力のすべてを備えています。つまり、クリエイティブの領域とテクノロジーの領域をシームレスにつなげられるということです。それによって、映像の企画・制作から広告展開、さらにその結果を踏まえての映像のブラッシュアップまでをワンストップで担うことができます。このような体制を整備している企業は、広告業界はもとより、制作業界にもないと思います。

生活者の生活は毎日続いているものです。映像でそこにアプローチしていくには、クオリティだけでなく、先ほども述べたように「小回りが利く」ことが重要な要素になります。小さくても丁寧なコミュニケーションを継続していき、映像をいわばラジオのパーソナリティのように生活者にとっても身近な存在にしていくこと。そのような新しい映像展開を提案していくことがクラフターの一つの役割であると考えています。

今後、5G通信が実用化されることで、映像コンテンツはスマートフォンやPCなどのデジタルデバイスだけでなく、自動車、住居、小売店、屋外などあらゆるところで使われるようになり、それにともなってインターフェースの重要性が増していくでしょう。短時間の接触でも生活者に豊かな体験を与えることができるのがアニメーションの強みです。私たちが手掛けているスマートCGアニメーションは、映像時代におけるコアコンテンツになりうる。そう自負しています。

これまでアニメーションはクリエイティブツールとしてのみ捉えられてきましたが、今後はマーケティングツールとしての活用が広がっていくと確信しています。まずは、私たちのモーションキャプチャースタジオをぜひ見学いただければと思います。

  • 株式会社クラフター
    代表取締役社長 共同CEO
    1967年生まれ。
    1991年 博報堂入社。コピーライターとして制作局配属。
    2006年 クリエイティブディレクターに就任、以降様々なTVCMやキャンペーンを手掛ける。
    2008年 博報堂アーキテクト執行役員に就任、クリエイティブコンサルタントを務める。
    2011年 4月1日より現職。博報堂エグゼクティブ・クリエイティブディレクターを兼務。