“生活者データ・ドリブン” マーケティングとは?

生活のあらゆるシーンでデジタル化が進む、デジタルトランスフォーメーション。
それは企業のマーケティング活動にも大きな変化を要求します。
それはどのような変化で、どのように対応してゆくのがよいのでしょうか。

マスとデジタルの接触時間はほぼ半々

テレビ、新聞、雑誌、ラジオのいわゆる4マスメディアと、PCインターネットやモバイルインターネットなどのデジタルメディア。生活者は、そのどちらにより長く接しているでしょうか。
博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が昨年行った調査では、20代はデジタルメディアとの接触が6割以上、30代はほぼ半々。40代、50代はマスメディアとの接触時間の方が長いという結果になっています。全年代を平均すると、接触時間はほぼ半々となります。
一方、企業の広告費はというと、デジタルに比してかなり多くの費用がマスメディアに充てられています。もちろん、接触時間と広告費を同列に比較することはできませんが、広告が現在でもマスメディア主体であるというのは事実のようです。
もちろん、広告展開におけるマスメディアの力は、今後も重視されるべきでしょう。しかし、マスメディアとは異なる性質を持つデジタルメディアが伸長し、コミュニケーションのあり様を大きく変化させているのも確かです。
マスメディアにおける情報伝達には、デジタルに比べて「一方向的」であり、「固定的」であり、「断続的」であるという特徴があります。それに対して、デジタルメディアは、「双方向的」で「可変的」で「継続的」です。マスメディアとデジタルメディアの力をどう上手に組み合わせてコミュニケーションに生かしていくか。それが現在、多くの企業に問われています。

どこが「世の中」なのか?
~年代別のメディア接触時間~
どこが「世の中」なのか?~年代別のメディア接触時間~

デジタル・トランスフォーメーションに
より、
マーケティングも変貌する

デジタル化が進んでいるのは、メディアに限った話だけではありません。また、PCやスマートフォンなど、デジタルデバイスの世界に限定された話でもありません。生活者とデジタルの接触は、生活者自身が意識する範囲を大きく超えています。
例えば、買物時のポイントカードの利用は、「購買行為のデジタル化」につながります。また、年々増えているネットに接続されたテレビを見るという行為は、「テレビ視聴のデジタル化」ということができます。今後、IoT(モノのインターネット)が進んでいけば、このようなデジタル化は社会全体、ビジネス全体に広がっていくでしょう。
社会やビジネスがデジタル化し、それが様変わりしていくこと。それはしばしば「デジタル・トランスフォーメーション」と呼ばれます。デジタル・トランスフォーメーションは、企業のマーケティング、さらには企業の経営全体にかかわる大きな変化です。

デジタル化とは何か。それをひと言でいえば、「世の中の様々な事象がデータ化していくこと」です。もちろん、マーケティング調査データ、視聴率データといったデータはこれまでにも収集され、活用されてきました。しかし、それらのデータは、「サンプル」から抽出され「集計」されたデータでした。
それに対し、ライフログデータ、位置情報データ、IDに紐づいたPOSデータといったデータは、抽出されたサンプルではなく「個」に結びついたデータであり、全体を網羅したデータであり、ものによっては即時に入手し活用することも可能なデータです。
もちろん、従来のマーケティングデータが役割を終えたということではありません。
それらとは性質の異なるデータを収集し活用することが可能になったということです。

PDCAの実践に欠かせない、
自社の「DMP」

こういったデータによって、企業活動はどのように変わるのでしょうか。
これまでは企業の中で広告活動を担当するのは宣伝部であり、販促活動を担当するのは事業部であり、販売活動を担当するのは営業部や販社というように分かれていることが多かったと思われます。担当を細分化することで効率的な活動が実現してはいましたが、それぞれの活動が分断化されていたので、顧客である生活者の全体像を把握することは困難でした。
それに対し、それぞれのフェーズにおける生活者の活動がデジタルデータ化されると、それらを一元管理することができるようになります。広告との接触や反応データ、自社サイトのアクセスログ、会員登録情報、来店履歴、リアル店舗やECでの購買履歴──。そういったデータを一元化し、そこからとるべき施策を導き出し、その結果を検証するというPDCAのサイクルを回していくことが可能になるのです。
そのようなデータ活用を可能にするのが「データマネジメントプラットフォーム(DMP)」です。DMPには、大きく2つの種類があります。1つは、企業が自社のデータを使って運用するDMP(プライベートDMP)です。自社の顧客のデータを集め、顧客を知り、どのような働きかけをすればいいかを導き出す。それが自社DMPの機能です。最近では、そのサイクルを自動化するMA(マーケティングオートメーション)とよばれるツールも活用されるようになっています。
このようなDMPは企業にとって必須と言えますが、このような種類のDMPだけでは実現できない領域もあります。自社DMPは、あくまでも自社への接触データを使っているので、まだ接することができていない未知の生活者、未顧客を開拓することはあまり向いていません。また自社内に閉じたプラットフォームなので、市場全体を見てビジネスチャンスや新しい「芽」を捉えるといったことも難しいでしょう。つまり、自社DMPは、既存顧客の育成やマーケティングコミュニケーションの効率化、最適化は得意であっても、新しい市場を創造していくことは苦手ということです。

自社でDMPを構築する意義と課題
自社でDMPを構築する意義と課題

市場創造のために、生活者の全体像を
把握する新たなDMPを

では、市場創造をするためにはどうすればいいか──。そこで力を発揮するのが「生活者DMP」です。
博報堂が独自に開発したこのDMPの背景にあるのは、博報堂の「生活者発想」です。博報堂は、1981年に生活総合研究所という生活者研究に特化したシンクタンクを設立しました。このような機関をもつ広告会社は、現在においても世界に例がないのではないでしょうか。人々は、「消費者=商品を買う人」ではなく、「生活者=生活する人」である。それが生活者発想の根本を成す考え方です。住まう、学ぶ、働く、遊ぶ、愛する、育てる、食べる、身につける──。そのような多様な活動をする存在として、博報堂は生活者を捉えています。デジタルデータの活用によって、その生活者発想を深化させるのが生活者DMPです。

「消費者=商品を買う人」ではなく、
「生活者=生活する人」として顧客を捉える。
「消費者=商品を買う人」ではなく、「生活者=生活する人」として顧客を捉える。

デジタル化により新たな活用の仕方が可能になったデータには、購買データ、オンライン行動データ、屋外行動データ、メディア接触データ、意識調査データなど、様々な種類があります。通常、それらのデータは別々に収集され活用されています。それらのデータを統合して、市場全体、生活者全体を捉える。それが生活者DMPのユニークな特徴です。
自社の顧客を知り、適切なコミュニケーションをとるために使うのが自社DMPであるとすれば、広く生活者を知り、働きかけ、需要を創造することを可能にするのが生活者DMPであると言っていいでしょう。

博報堂DYグループの生活者DMP
博報堂DYグループの生活者DMP

顧客育成と新規顧客獲得の
サイクルを作る

自社DMPと生活者DMP。この2つのプラットフォームを連携させることで、顧客育成と新規顧客獲得のサイクルを作る新しいマーケティングが実現します。自社DMPを活用してお客さまを優良顧客に「育てる」。そして、優良なお客さまの要素を「見極める」。それをもとに、生活者DMPを活用してまだ見ぬお客さまを「見つける」。そしてそのお客さまを自社の店舗やウェブサイトに「連れてくる」──。これが、2つのDMPの連携によって可能になる顧客育成・獲得のサイクルです。
もう少し、具体的に見てみましょう。
「育てる」フェーズでは、ブランドに対するファン化の指標を使った判定ロジックによって、個々の顧客を判定し、優良顧客に育成していきます。「見極める」フェーズでは、有力顧客への理解を深め、それを新たな顧客を開拓するためのインサイトとして活用します。そこから高精度なターゲティングを行い、見込み顧客を獲得し「連れてくる」ことで、新しい市場を創っていきます。

DMPの構築&連携による“獲得と育成のサイクル”
DMPの構築&連携による“獲得と育成のサイクル”

これまで、未知の顧客に対し認知・理解・興味を得ることを目的としたマスマーケティングと、見込み顧客を顧客化/優良顧客化するデータベースマーケティングは企業の中で別々のものとして行われてきました。組織的に見ても、異なる部署がそれぞれの活動を担うのが普通でした。
しかし、対象が同じ生活者である以上、それらの施策は連続したものになるのが理想的です。それを可能にするのが、2つのDMPの連携なのです。

データは企業のマネジメント
全体を変える

DMPには、購買データ、メディア接触データ、屋外行動データなど、さまざまなデータがつながっていきます。それらのデータが「可視化」されることで、マーケティングコミュニケーションが最適化されます。さらに、それは、マーケティングすべての最適化へとつながっていくでしょう。こうして変容していく新しいマーケティングのあり方が「“生活者データ・ドリブン”マーケティング」なのです。
さらに、変化はそれだけにとどまりません。デジタルデータは、企業のバリューチェーン全体を変えていくことになります。R&D、調達、製造、在庫管理、流通、サービス──。データ活用は、それらの諸活動の中で、埋もれていた顧客の潜在的価値を顕在化させるでしょう。顧客が「見えない」不満、異なる市場にいる「隠れた」競合、事業成長機会の「芽」を明らかにするでしょう。そして、それは新しい市場創造の源泉となるでしょう。
そう考えれば、データには、企業のマネジメント全体を変える可能性があるということになります。逆に言えば、経営のレイヤーでデジタル化に対応しなければ、新しい価値を創造することはできないということです。

ここにCMOの役割があります。経営レイヤーでマーケティングの進化を進め、それを企業全体の活動の進化につなげること。マーケティングの力で企業を大きく成長させること。それこそが、これからのCMOの極めて重要な機能であると言えます。

生活者DMPの構成要素

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