
ヒット習慣予報 vol.359『ニュー友づくり』

こんにちは、ヒット習慣メーカーズの山崎です。
桜が咲いて暖かくなって、職場や学校など新しい環境にも少しずつ慣れてきた頃でしょうか?
大人になると職場で様々な出会いがある一方でプライベートで友人が増えることって少ないな、とふと思います。
社会人共通の現象かといえば案外そんなことはなく、社会人に限らず様々な形でコミュニティを広げている人が多くいるようです。今回はそんな新しい交流・コミュニティの形を「ニュー友づくり」という形でご紹介いたします。
1つ目の交流の形は「愚痴友」
ご想像の通り、愚痴をこぼし合うことが主な目的の友です。愚痴友の特徴は愚痴以外の個人情報をお互いに知らないこと。SNSで繋がることが多く、どこに住んでいるのか、どんな姿なのかは明かさないまま、愚痴を通して精神的に支え合う関係性のようです。
実際にわたしも関心領域ごとに複数のSNSアカウントを持っていますが、価値観や正義感が似ている人に救われることが多くあります。そして、リアル社会で繋がっていないからこそ明かせる本音もありますよね。
2つ目に紹介する交流の形は「家友」
これは、家づくり(注文住宅など)を通して住宅展示場や住まいづくりの説明会で出会い、情報交換をしながら繋がり合うコミュニティです。人生に関わる大きな買い物をするのですから理想も悩みも尽きないもの。さらに住んでいる地域や予算、子どもの有無、親との関係など、家づくりは多くの条件が絡み合っています。リアル世界で似た状況の友人と出会えることは稀だからこそ生まれるコミュニティのようです。実際にSNSでは家が完成したあとに家族ぐるみで交流し、お互いの家に招き合って楽しそうな様子が見られます。
最後に紹介する交流の形は「墓友」
近年では、散骨や樹木葬など家族のお墓を持たない選択をする人も増えました。子に負担をかけたくない、遠方にあり墓参りが難しい、夫婦それぞれの実家のお墓を守るのが大変などの事情から、今あるお墓をたたんで別の場所に移す「改葬」をしたり、先祖代々のお墓を供養しておしまいにする「墓じまい」を選択する人も増えています。
※厚生労働省 衛生行政報告例より
そのような選択肢のうちの一つが合葬墓(共同墓地)。そして、同じ合葬墓に入ることを決めた人たちが生前に集う「墓友」というコミュニティがあるようです。生きている間に食事をしたりお出かけをしたり、さらに先に合葬墓に入った仲間のためにお墓参りや供養を行ったりします。結婚することを「同じお墓に入りませんか」と表現した時代があったように、同じ場所に遺骨を納めることは特別な意味をもつことがあるので、墓友は血縁を越えて同じ墓に入ることへの安心感にも繋がるようです。
伴侶に先立たれたり、子どもが遠方にいたり、高齢になるとなにかと一人になりがちですが、死後も一緒にいる仲間の存在はとても心強いですね。終活というのは、必ずしも人生を終わらせるためではなくて、終わりまでをより良く生きるための活動なのかもしれません。
では、なぜこのような「ニュー友づくり」が広がっているのでしょうか?
表面的な理由は、人との関わりの形がリアル社会以外にも広がっていることです。SNSによって性年代、暮らしはもちろん言語すら関係なくコミュニケーションをとれるようになりました。そして働き方のアップデートにともない物理的・時間的に職場以外のコミュニティをもちやすくなったこともあります。
もう少し踏み込んだ理由としては、現代人の“分人化”が加速していることが考えられるのではないでしょうか。“分人”とは、人は状況や関係によって異なる側面を持つことを肯定する考え方です。人は一つの「自己」だけでなく、さまざまな人間関係や環境、状況に応じて「分けられた人間(分人)」として存在しているという考え方です。SNSで複数のアカウントをもちそれぞれに人格や個性があること、コミュニテイによって見せている顔、明け渡している情報などが異なることもその一つと考えられます。
昔から人は誰しもいくつかの顔をもっていますが、現代ではそれがより複雑に、より多岐にわたっているということです。
最後に「ニュー友づくり」にまつわるビジネスチャンスを考えてみました。
「ニュー友づくり」のビジネスチャンス
■興味関心で繋がりコミュニティを形成するまでをサポートするマッチングアプリ
■自己実現のためにもつべきコミュニティを提案してくれるコンサルAIの開発
■コミュニティごとの人格がよりヘルシーでいられるためのメンタルケアサービス
コミュニティの作り方やコミュニケーションの方法は時代に沿って変わっても、やはり人は、人との繋がりのなかで生きていきたいものなのですね。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂関西支社 第二ビジネスデザイン局 第二プラニングチーム
ヒット習慣メーカーズ メンバー最近、「もしかして、すべては人間力なのでは…?」と気づき始めたマーケター5年目。仕事も、暮らしも、恋愛も、ボディメイクも何もかも。マーケターとして仕事の腕を上げるために、人間力もせっせと磨く今日この頃です。