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AI技術×生活者発想で、コミュニケーションは進化する!<前編>
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AI技術×生活者発想で、コミュニケーションは進化する!<前編>

博報堂DYホールディングスは、2017年12月、IoTにフォーカスした深層学習技術のビジネス活用を進めてきたPreferred Networksとの資本業務提携に合意しました。トヨタ自動車、ファナック、国立がん研究センターなどとの協業によって先進的な取組みを推進してきたPreferred Networksと、生活者発想をフィロソフィーに広告・マーケティングビジネスに取り組んできた博報堂DYグループ。そのコラボレーションはどのような新しい価値を生み出すのでしょうか。Preferred Networks代表取締役社長の西川徹氏と博報堂DYホールディングス取締役常務執行役員の中谷吉孝が、AI技術(Artificial Intelligence Technology、以下AI)のこれからの可能性について語り合いました。

IoTとAIは人間理解を深めるためのツール

中谷

今回改めて対談という形でお話できることを嬉しく思います。はじめに、Preferred Networks(以下、PFN)を立ち上げた経緯についてお聞かせいただけますか。
西川

大学の学部時代にスーパーコンピューターの研究をしていて、大学院一年のときにPFNの前身であるPreferred Infrastructure(PFI)を立ち上げました。創設メンバーの一人が自然言語処理やデータ圧縮の専門家で、僕と彼の専門分野を掛け合わせて、大量のデータを賢く処理する仕組みをつくろうと考えたのがPFIの始まりです。最初は検索エンジンをつくっていたのですが、徐々に機械学習、深層学習の方にシフトしていって、2014年にPFIからスピンオフする形でPFNを設立しました。
中谷

IoTにフォーカスしたのはなぜだったのですか。
西川

PFIでは、画像やテキストなど人が生み出したデータを扱っていたのですが、その領域ではデータ量などの点でSNSや通販のプラットフォーマーには勝てないことに気づきました。そこで、機械によって自動的に取得できるデータに着目したわけです。
僕は、IoTによって得られたデータは、人の理解を深めるために不可欠のものだと思っています。例えば、ある人が書いたテキストデータがあります。それだけを分析しても、その人を深く理解することはできません。なぜなら、その人はいろいろなものを見て、いろいろな情報を学習した結果としてそのテキストを生み出しているからです。センサーなどを駆使して、現実世界から広くデータを集め、その人が接した情報について多面的に分析できれば、その人をより深く理解することができるはずです。
中谷

なるほど。IoTによって得られた多様なデータに深層学習の仕組みを組み合わせることによって、人間理解を深めることができるということですね。
西川
 

おっしゃるとおりです。2014年当時、IoTとAIを組み合わせたモデルに取り組んでいるプレーヤーはほとんどいませんでした。この領域なら勝てるかもしれない。そう思いました。

AIが人間の知性を拡張させる

中谷

現在、深層学習のさまざまなソフトが発売されていますが、使いこなすのは簡単ではないと感じています。現段階では、AIの能力を存分に活用するためには人間側の高度なスキルが求められるように思います。
西川

確かに、パラメーター(プログラムの実行に必要な指示項目)の設定などは、まだ人間が経験と勘で行わなければならない部分が多いですね。しかし、そこも徐々に自動化できるようになりつつあります。今後は、専門的なスキルがなくてもある程度はAIを使いこなせるようになるはずです。
しかし、どういうデータを入力して、それをどのように応用していくかを決めるのは、これからも人間の仕事であり続けると思います。機械にはない人間ならではのクリエイティビティがそこで発揮されるのではないでしょうか。
中谷

AI活用には、大きく二種類の方向性がありますよね。業務の効率化のためにAIを使う方向と、AIによる自動化の結果生じた余力をよりクリエイティブな領域に使うことを目指す方向です。私は後者の、いわば知性拡張のためのAI活用に大きな可能性を感じています。
西川

同感ですね。PFNがより重視しているのも後者で、AIによっていかに人間の能力を向上させるかという視点が非常に重要だと考えています。
私たちは線画に自動で着色していく「ペインツチェイナー」というソフトを開発しました。このソフトを活用すれば、アニメーションの制作過程で、絵コンテではなく彩色されたシーンをもとにストーリーづくりなどを進めていくことができます。それによってより豊かな発想が生まれ、作品のクオリティ向上が期待できます。まさしく人間の能力を拡張させるツールということです。AIが人の仕事を奪うという議論がありますが、むしろAIは人のクリエイティビティを高めるための便利な道具であると捉えるべきだと思います。

アニメとテクノロジーのコラボが生み出すもの

中谷

PFNと博報堂グループの映像制作会社であるクラフターとのアニメーション領域での革新的なアニメーション制作手法の共同開発が始まりました。深層学習技術と、クラフターが有する最先端の3DCGを中心としたアニメーション制作における技術や知見・データを掛け合わせるチャレンジです。このコラボレーションの可能性をどのように考えていますか。
西川

まず個人的なところから申し上げると、私自身アニメーションが大好きなので、アニメ制作のプロの皆さんとの接点ができたことに非常にワクワクしています。これまでのミーティングを通じて、アニメーションは本当に奥が深い世界であることがよくわかりました。
私は、アニメの方法論は「人を知る」ことにとても役立つと思っています。アニメは現実世界をそのまま二次元にするのではなく、誇張や省略などを加えて、分かりやすく「アニメ的」に人を表現しますよね。人を理解したうえで、より伝わりやすい加工を施していくわけです。これは、人と機械のインターフェースをつくっていく際に極めて有効な方法です。
例えば、今後はロボットと人が共同作業を行う場面が増えていくはずです。しかし、現在のロボットは、予備動作をせずにいきなり動き始めたりするので、そばにいるとびっくりすることがよくあります。それに、重いものを持っても重そうに見えないので、すごく違和感があるんですよ(笑)。ロボットを人間社会にうまく溶け込ませていくためには、アニメーションの表現などを流用して、ロボットをより人間らしく見せていくことが必要だと私は考えています。
中谷

ロボットはまずは正確に動くことが重要だけれど、それだけではだめということですよね。機械だけれど優しく見えるとか、可愛らしく見えるとか、親しみがわくとか、そういった感情面に訴える要素があれば、おっしゃるようにロボットは社会にうまく適合していくでしょうね。
そこにアニメの方法論を応用できる可能性があることもよくわかります。自然のままに表現するよりも、ある種の誇張を加えて、いわば「しぐさ化」することによってより人に伝わりやすくなるということですよね。「しぐさ」をもつロボットをつくるというのは実にいい視点だと思います。
西川

逆に、ロボット開発から得た知見をアニメーションの世界に生かしていく方向もありうると思います。ロボットもアニメも日本を代表する産業です。その二つが結びついて新しい領域を切り開いていく。これはとても素晴らしいことではないでしょうか。

後編に続く)

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  • 西川 徹
    西川 徹
    Preferred Networks代表取締役社長 最高経営責任者
    東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修了。IPA未踏ソフトウェア創造事業「抽象度の高いハードウェア記述言語」採択、第30回ACM国際大学対抗プログラミングコンテスト世界大会19位。大学院在学中の2006年に起業、株式会社Preferred Infrastructureを設立。2014年、IoTにフォーカスしたリアルタイム機械学習技術のビジネス活用を目的とした株式会社Preferred Networksを設立。独自技術により、IoT時代に相応しい新たなネットワークアーキテクチャの確立を目指す。
  • 博報堂DYホールディングス取締役常務執行役員
    博報堂の研究開発系で長く活動し、平成20年研究開発局長に就任。また平成22年博報堂DYホールディングス内に設立されたMTC(マーケティング・テクノロジー・センター)の初代室長に就任。データ、テクノロジー関連の開発・実用化促進を進める。現在、博報堂DYホールディングスおよび博報堂の取締役常務執行役員として、生活者DMPなどのデータドリブンマーケティング領域と、マーケティングシステム領域での様々な活動を主管し、その能力強化とビジネス推進を担っている。