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変化する地域創生のニーズに、最新のマーケティング手法で答える!~LoCoBra DMP 開発物語~
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変化する地域創生のニーズに、最新のマーケティング手法で答える!~LoCoBra DMP 開発物語~

2017年6月、博報堂と博報堂DYメディアパートナーズは、地域移住・定住希望者へのセグメント広告配信サービス 「LoCoBra DMP(ロコブラDMP)」の提供を開始しました。(http://www.hakuhodo.co.jp/archives/announcement/39726

移住・定住希望者を調査で7タイプに分類し、生活者データとオンラインアクチュアルデータの総合分析サービス「Querida(クエリダ)」を融合させ、最適なセグメント広告を配信する画期的なサービスです。サービス誕生のエピソードや今後の展望などについて、開発に携わった6人が語りました。

「観光」から「移住」へ、「認知」から「効率」へ―。変わる地域ニーズに答える、オリジナル調査×セグメント広告というアイデア

ーLoCoBraDMPの開発の背景から教えてください。

兎洞
もともと2014年から、博報堂ブランドデザインとして地域社会のブランディングを支援する「LoCoBra (ロコブラ:Local Co-creation Branding)」という活動を展開していたのですが、そこで僕や鷹野くんが行った調査から、移住・定住に関心のある層はきれいに7つのクラスターに分かれることがわかりました(2016年1月12日発表)。この結果を広告のターゲット設定などに活用したら、何か面白いことができるのでは?と思い、当時のデータマーケティング部(現データドリブンマーケティング局)の北畑さんと金さんに相談したのが本サービス開発の始まりです。
当時、地域創生のフェーズも変化していて、「観光」だけでなく「移住」、そして「認知」だけでなく「効率」まで重視されるようになっていました。
北畑
ちょうどそのころ、僕は博報堂DYメディアパートナーズのデータドリブン開発センターに所属している篠田くんと一緒に、生活者の意識と行動を掛け合わせたデータ(=生活者DMP)を使って新しいターゲティングと広告配信を可能にする「Querida」というソリューションを開発、提供していました。実際に某大手企業さんにおける取り組みの結果、かなりの成果が出ていたので、セグメントごとに最適化されたコミュニケーションが有効であることを実感していたんです。
博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局の兎洞武揚
篠田
そして、そうした一般企業が取り入れている最新のマーケティング手法に、地方自治体の方々も興味を持ってくださっていたんですよね。僕の場合、ここ数年ある自治体におけるDMPを使った観光促進事業に取り組む中で、エリアやターゲットによっては観光スポットを推すよりもそこでの“暮らし”を訴求していった方が、観光欲求が高まるという発見があったんですね。そこで、その“暮らし”を扱うためのスキーム、データが必要だとちょうど感じていたタイミングでした。
ターゲティング広告はブロード配信(※)と比較するとどうしてもimp(インプレッション)単価が高くなってしまうので、その中で効果を高めるには、ターゲティングの精度がとても重要になります。しかし、今回のターゲットである潜在的な“移住者”というのは、なかなか特定するのが難しい。その人たちがふだん何を検索し、どんなサイトを見ているかという情報が、まだ世の中的にもたまっていないんです。ですからなおさら、少ない予算でもダイレクトに広告を打てるようになるこのアイデアには、大きな意義があると思いました。

※ターゲットを設定しない広告配信。幅広い認知を獲得する時などに用いる。

北畑
開発の流れとしては、兎洞さんから相談を受けてまず、兵庫県豊岡市さんが行っていた教育関連のイベントでサービスを実証させていただくことになりました。具体的に言うと、現在豊岡市の芸術文化参与としても活躍されている劇作家の平田オリザさんも出演するイベントが東京で開催されることになり、その告知のために、LoCoBraDMPを使った拡張配信広告を2~3週間にわたって打ちました。まずターゲットとなるクラスターに向けたメッセージを開発、Webバナーとして配信し、リンク先として豊岡市のオウンドメディアと、移住や地域に関心のある人が読むウェブメディアの記事に誘引する導線を引きます。そこで、「移住」や「引っ越し」などのキーワードで絞った従来のセグメント広告配信の仕方と、LoCoBraDMPモデルの2通りを実施し、比較してみました。
CTR(クリック率)をメインで見ていたのですが、検証の結果、LoCoBraDMPモデルでは高いものだと3倍くらい、平均的に2倍以上の効果があることが分かりました。そうした結果を受けて、改めて本モデルをサービスソリューションとしてリリースするに至りました。
博報堂DYメディアパートナーズ データドリブン開発センターの篠田裕之

部門や会社の垣根を越え、チームで進めた開発プロセス

ーLoCoBraDMPは博報堂、博報堂DYメディアパートナーズと、部門・会社を超えたソリューションですが、それぞれの役割分担、業務フローについて教えてください。

兎洞
今回の開発に当たっては、部門や会社の垣根を超え、それぞれの部門分野に長けた人たちで合同チームを組むことになりました。まずタイプ分類の調査やターゲティングに関しては、私と鷹野くんが中心になり、博報堂地域会社や支社とも連携を図りながら対応をしています。そして広告配信についての考え方、戦略設計に関しては、北畑さん、金さん、賈さんに、そして実際の出稿など運用面に関する領域では篠田さんにお任せするという体制です。
北畑
そうですね。今後はもっと細かく体制を整えていくことになると思いますが、今回に関して言うと、やはり移住・定住に関する大きな戦略に関しては、兎洞さん・鷹野さんをはじめとするブランド・イノベーションデザイン局が検討を始める。そしてターゲット戦略を考える段階から我々も一緒になってシナリオを考えていきました。その後、ではシナリオに合わせてどのように配信していくか?という作業になると篠田さんが中心的に動いてくれた。専門も所属先も異なるメンバーですが、あまり肩書きに縛られず、主体的にこのプロジェクトに関わっていきました。
博報堂 データドリブンマーケティング局の北畑亮

リリース後の反応はいかがでしょう。

鷹野
実際にリリースしてからは多方面から好反応をいただいていますが、意外だったのはハウスメーカーさんや不動産関係など、移住に関係する周辺業界からの反応でした。考えてみれば、移住するとなったら当然引っ越し先を考えなければならないわけで、当たり前のことではあるんですが。そこは実際にローンチして発見できたことでしたね。
兎洞
ほかにも、すでに導入が決まっているところもありますし、問い合わせも多々いただいています。今後は、移住関心者向けの出版やイベントなどB to C向けのサービス展開も視野に入れたいですね。
博報堂 データドリブンマーケティング局の金奈美

複数のターゲットへの最適なアプローチを可能にする、誠実なソリューション

ーLoCoBraDMPで目指すこと、そして今後どのように育てていきたいかについて、教えてください。

兎洞
僕自身が田舎の出身で、地域に対する魅力をつねに感じています。人口減少が進む中、そんな地方の素敵なところをどうやって残していくかは、この国の喫緊の課題だと感じています。地域創生についても、都会の人口をただ移動させるというよりは、素敵な地域を残す、あるいはつくっていく、という視点からしっかりと考えていきたい。そういう意味でも、本サービスが役立つのではないかと思います。また、インバウンドの価値観クラスター分析のようなものと、本サービスをさらに組み合わせることによって、海外に向けても、地域を活かしたマーケティングといったものに挑戦できるのではないか、とも考えています。
鷹野
移住って、日常で物を買うといったレベルとは異なる、人生の転機となる重大な決断だと思うんです。検討段階も非常に長期間に及びますし、判断自体が難しい。ですから我々がLoCoBraDMPを通じてやりたいことも、単純な広告ではありません。情報が移住意向者にとってのある種のユーザーエクスペリエンスであるととらえて、どんな体験を通してどんな気持ちになってもらい、そしてどんな風に地域を好きになってもらい、気持ちを誘導していけるのか、挑戦していければと思います。そこにはブランディングと獲得という異なる二つの考え方がからんでくるわけですが、その両方をにらみながら、調査、情報配信などを通し、最終的な移住という決断まで導いていく。ロングスパンのカスタマージャーニーの中で、サービスを広げていきたいなと考えています。
博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局の鷹野翔平
篠田
たとえば「移住」と検索し始めた人に移住の広告を出すのではなく、まだ移住は考えていないけど、こういう価値観で暮らしているのだったら、移住したらもっと幸福になれるかもしれませんよ、という形で情報を出すことが必要なんじゃないかと思います。行動履歴からの情報の最適化ではなく、価値観に基づいて現状の代案としての情報をだすことが重要で、だからこそ、タイミングだけによるターゲティングではなくて、兎洞さん、鷹野さんが行ったような、価値観に基づいてセグメンテーションをしておくことに意味があるのではないかと思います。データの最適化は、生活者が行動を起こした後から始まることが多いですが、各自治体がどうなりたいかというビジョンと生活者の価値観を結びつけるという、行動を起こす前段階のブランディングの部分から、このチームでデータサイエンスできたら面白いだろうなと思います。
先ほどの話にあった豊岡市における実証では、こちらの想定していなかった人々の反応というのもありました。地域貢献に関心がある人に地域貢献の情報を、といったストレートなものだけではなくて、こういう訴求の切り口だったら別のセグメントにも響く、といったような知見が、今後もたまっていくと思うんです。これから鷹野さんが言ったようにクロージングまで追っていくとしたら、たとえばもともと僕らが想定していたクラスターに加えて、こんなクラスターの人たちも実は移住していた、といったようなこともわかってくるでしょうし、、それらの要因を深掘りしていくことで各クラスターのポテンシャルが最大限利用できるようになっていくと思います。それに応じて、訴求方法やシナリオの幅を、今後広げていければ面白いのではないかなと思います。
博報堂 データドリブンマーケティング局の賈一丁
鷹野
確かにこれから想定外のシナリオもどんどん出てきて、知見としてたまっていけば、間違いなくこのチームの強みになっていくでしょうね。
私はデータの観点から話をさせていただくと、おそらく行政はたくさんのデータをお持ちで、でも使いきれていないという現状があると思う。個人情報の問題など、クリアすべきハードルは多々あるでしょうが、その地域に興味があるクラスターとの相性だったり、地域で主要な産業や会社の情報だったり、何かしら”地域としてのデータ、情報”をきちんと蓄積できるようなものが提供できれば、また何か新しい可能性が生まれるような気がしています。
北畑
LoCoBraDMPを使えば、ある地方自治体に移住したいと思っている人たちに直接アプローチし、クラスターごとに束ねていくことができる。そうすれば、移住意向者のクラスターごとに相性のいい先輩移住者、あるいは住民の方々を、自治体のサイトやコンテンツ上でマッチングさせることもできる。モチベーションの高い住民をうまく巻き込んでいけば、移住促進の活動を自然とやってくれるようになるし、それは行政の負担軽減にもつながります。地域の活力にもなるし、住民主導のカルチャーが生まれるきっかけにもなる。「移住者・定住者を増やす」だけでなく、「地方自治のあり方自体を変える」という点でも、意義ある取り組みにしたいと思っています。
これまでの移住促進マーケティングでは、移住意向者に対して、その地方自治体のメッセージを直接伝えることは難しかった。また、「マーケティングの定石」にならって、特定のターゲットに絞って狙うばかり、ほかの可能性のあるターゲットを捨ててしまうということがあったと思います。LoCoBraDMPなら、複数のターゲットそれぞれに最適なアプローチができるので、より広く、よりピンポイントなコミュニケーションが可能になります。これまで地方自治体が移住促進戦略であきらめていたことを、あきらめなくてもよくなるはずです。
鷹野
そうですね。短期だけではなく、中長期を見据えてポテンシャルのあるターゲットにアプローチできるのがLoCoBraDMPです。今後もチームみんなで、育成していきたいですね。

<終>

※本記事は博報堂HPに掲載した記事を転載しています。
※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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地域への移住・定住希望者の価値観を7タイプに分類し、各タイプ別に調査・分析、広告配信を行うサービス

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