
ヒット習慣予報 vol.376『進化するキッズ美容』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの中久保です。
つい先日、暑さから逃れるためにカフェに入ったところ、隣の席に10歳くらいの女の子2人が座っていました。クリームが乗った新作のドリンクを美味しそうに飲んでいた彼女たちの手元をふと見てみると、とってもかわいいデザインのネイルをしていました。夏休み期間か~と思いつつ微笑ましく見ていると、断片的に聞こえてきた会話は「こんな色のチークがほしい!…」「ラメがさー、…」という内容。どうやら欲しいコスメがトークテーマだったようで、そのあまりに大人顔負けのメイク事情に、コスメ好きの私としては会話に混ざりたい気持ちになってしまいました。
これまでも、紫外線から肌を守るために日焼け止めを塗ったり、冬場の乾燥を防ぐためにクリームで肌を保湿したり、ダメージケア的な美容を子どもにも適用する習慣は定着していました。
ですがここ最近では、子どもが習慣的におこなう美容の種類が大きく増えてきているようなのです。
実際にGoogle トレンドを見てみると、YouTubeで「小学生 メイク」の検索数がここ3年間でじわじわと伸長しており、いままでは大人のものだと思われていた”美活”が10代以下の小学生にも徐々に広がってき始めていることが伺えます。
出典:Google Trends (「小学生 メイク」のYouTube検索)
今回は、このように徐々に広がりを見せ始めている、10代以下の子どもたちに多様に楽しまれている美容習慣について「進化するキッズ美容」と名付け、事例とともに紹介していきます。
ご紹介する事例1つ目は、「キッズ脱毛」です。
これまでは20~40代を中心とする大人のあいだで行われてきたムダ毛ケアとしての脱毛ですが、ここ最近は10歳以下の子どもであっても習慣的におこなっているようです。
定期的にサロンや美容医療機関へ通い、スタッフに脱毛をしてもらうパターンもあれば、家庭用脱毛器を使って自宅でケアをするパターンもあります。
SNSで脱毛サロンの投稿を眺めていると、キッズ脱毛に言及している投稿がいくつか見かけるのですが、その投稿に対するコメントを見ると、子どもであっても意外とデリケートな問題であるムダ毛を気にすることなく、好きなファッションを楽しめることが子どもたちにとっては大きなメリットと感じられている、といった声が多く見受けられました。また、保護者の視点からも、将来的に直面する可能性の高いムダ毛の悩みや処理の手間を予防できることは良いことだと考えられているようです。
事例2つ目は、「キッズコスメでフルメイク」です。
私が子どもの頃は、高校生くらいから大人用のコスメを使用し始める人が多かったですが、最近はさらに子どもの頃からメイクをしている子が増えてきているようです。メイクの低年齢化に伴い気になるのは、子どもの肌への負担ですが、最近は子供用の肌に負担の少ないキッズコスメも登場しています。
大人用の一般的なコスメと比較すると、添加物が少なく低刺激であったり簡単に落とせたりするなど、肌やからだへの負担が最小限になるよう配慮されているようです。
一方で、色味やラメのバリエーションは大人用コスメ並みに多く、それぞれが好きなようにメイクアップを楽しめるようになっています。
さらにパッケージも、女児たちから人気のキャラクターをあしらったものから大人が使う上質なコスメ同様にジュエリーのようなデザインのものまで、使っていて気分が上がるアイテムが多々あるようです。
そういったキッズコスメを使って、下地やファンデーションなどのベースメイクにはじまりチーク・アイシャドウ・リップなどのポイントメイクまで、フルでメイクアップする小学生以下の子どもたちが増えているのです。
SNSでは実際に、小学生以下の子どもがキッズコスメを使ったフルメイクをして出かける準備をする過程を動画にしている投稿や、子どもがメイクしている様子を親が撮影・編集した投稿も散見されます。
事例3つ目は「ボディジュエリーで親子コーデ」です。
ボディジュエリーといえば、結婚式や海辺でのパーティーなど肌を露出する特別なイベント時にアクセサリー感覚で素肌に施すデコレーションのこと指し、大人の女性を中心に楽しまれてきました。
種類は様々で、手軽なシールタイプのものから、専用のグル―を使って肌にグリッターやスワロフスキーでアートを描くタイプ、エアブラシで立体感のあるアートを描くタイプなどがあります。
ここ最近SNSを見ていると、そのボディジュエリーを親子で楽しむひとたちが増えているようなのです。
一般的にはネイルのように専用のサロンで施すひとも多いボディジュエリーですが、親子で一緒に楽しむ場合には、専用グルーを使用して腕にイラストを描きその上からラメを塗布してそれぞれ好きなデザインを身につけたり、シールタイプのものをおそろいで貼ったりなど、いずれも自宅で行うことがほとんどのようです。肌にデコレーションする過程も親子間のコミュニケーションとして楽しんでいる様子が散見されます。
もちろん、親子一緒にというシチュエーションだけでなく、子どものみが楽しむことも増えているようで、保護者のアカウントがその様子をシェアしている投稿も多く見られました。
では、なぜいまこのような「進化するキッズ美容」 の潮流がきているのでしょうか。
ひとつは、子どもたち自身が美容情報に触れる機会が多くなってきていることが背景にあるのではないでしょうか。
保護者の管理下にあるとは言え、いまは小学生以下の子どもたちも習慣的にSNSと接触しており、美容系インフルエンサーの情報に接触する機会が増加したことで、美意識の目覚めが低年齢化していると考えられます。加えて、子どもたちと近い年齢の美容系インフルエンサーも増加したことで、美容=大人のものという認識が薄れ、子どもにとってメイクやコスメが身近な存在になったのも大きな要因ではないかと思います。
もうひとつは、”美活”が親子間において共有できるコンテンツとなってきていることも背景にあると考えます。
たとえばテレビ番組を一緒に観ていたこれまでの習慣に代わり、美容系の配信動画を一緒に観たりすることも広く習慣化しているようです。
これは美容系インフルエンサーの質問コーナーにおいて、「いつも子どもと一緒に楽しく動画を観ています!」といったコメントが寄せられていることからもよくわかります。
美容について家庭で共通の話題にする機会が増えたことで、子どもにとっても自分ごととして興味を持ちやすいコンテンツとなってきたのではないでしょうか。
また最近は、親子の関係性も以前とは少しずつ変わってきています。「友達親子」と呼ばれるような、親と子がまるで友人同士のように流行の話題を共有したり服やバッグをシェアしたりするという関係性を築いているひとたちもいます。そういった親子関係におけるコミュニケーションの延長上に、子どもたちが保護者と一緒に”美活”を楽しむという新しい習慣がじわじわと広まっているのだと考えます。
最後に、「進化するキッズ美容」のビジネスチャンスをいくつか考えてみました。
「進化するキッズ美容」のビジネスチャンスの例
■子どもたちがキッズコスメのテスターやタッチアップを自由に楽しめる「キッズコスメ博」の開催
■メイクアップやコスメを知育コンテンツとして親子で学べる「メイク図鑑」の刊行
■地方への親子旅行の記念に、地元産の天然成分を使ってからだに優しいコスメを作る体験「親子ビューティーツーリズム」
皆さんのまわりにも「進化するキッズ美容」を楽しんでいる子どもたちがいるか、ぜひちょっとだけ注目してみてください!
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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北海道博報堂 / ヒット習慣メーカーズ メンバー2023年に北海道博報堂に入社。クリエイティブプランナーとして成長すべく修行中。
最近は「肉体が強くなると、大抵のことどうにかなる。」という後輩の言葉を信じ、筋トレに励んでいる。