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デジタル×アナログが必須の時代のマーケティング術 4.エンタメ業界のプロが語る
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デジタル×アナログが必須の時代のマーケティング術 4.エンタメ業界のプロが語る

デジタルメディアやSNSが若者の生活の中心的な役割を担っています。そのため、エンタメ業界でも従来以上にデータを活用して、各ファンの意識や行動に合わせたマーケティングを展開していくことの重要性が増しています。そこで博報堂DYグループはぴあと共同で、生活者のエンタテインメント領域の興味や検討状況をより詳細に把握し、マーケティングに活用することを目的としたエンタテインメント業界特化型のソリューション「カテゴリーワークス Entertainments」を開発しました。
エンタメ業界のマーケティングは今後どのように進んでいくのでしょうか。博報堂でエンタメコンテンツのマーケティングを推進してきた堀内、岡本と、エンタメコンテンツ制作に長く関わっている石川、国内屈指のエンタメ&ライフスタイルメディア「ウレぴあ総研」を運営しているぴあの市川雅仁デジタルビジネス推進局データマーケティング推進部部長と、後藤晴美デジタルビジネス推進局データマーケティング推進部 ウレぴあ総研統括編集長が対談しました。

堀内
博報堂DYメディアパートナーズの堀内です。これまでエンタメコンテンツのマーケティングに長く関わってきました。2018年11月に開発を始めた業種特化型マーケティング・ソリューション「カテゴリーワークス」ではリーダーを務めています。
 今回は皆さんとエンタメ業界の今とこれからについてお話をしたいと思っています。私は近年、宝塚にはまっているので、それらを例にいろいろお話出来たらと思います。
岡本
博報堂の岡本です。好きなエンタメは“イケメン”です。「イケメンは恋するものじゃなく、愛でるものだ」が信条です。最近はまっているのは“あいのり”で、他にもNetflixが配信している番組をよく見ていますね。
石川
博報堂の石川です。ラジオ番組を作ったり、ゲームのプロモーションをしたり、最近は児童書のプロモーションをしています。子供が3人いるのもあって、児童文学や子供向けのアニメなどに今興味がありますね。
市川
ぴあの市川です。ウレぴあ総研というエンタメメディアを運営しています。アジアの秘境を旅するのが好きで、年に数回は行きます。ゲームも大好きです。コンソールゲームや、デジタルとアナログの両方のゲームをやります。
後藤
ぴあの後藤です。ウレぴあ総研の統括編集長をしています。長く映画担当だったので、今でも週に一本は見ています。性格が屈折している主人公のアニメとか、コメディ系日本映画なんかが好きですね。昔はゴダールとかを見ていたんですが、最近は何も考えずに見られる映画が好きで(笑)。
堀内
では、「エンタメ市場の今」についてお話したいのですが、最近はプロとアマチュアの中間みたいな立場の人が描いた若年層向けの漫画が凄く増えていますよね。最近大ヒットしたドラマは、テレビだけでなく、デジタルやSNSを活用していました。また、昔のコンテンツを若手俳優でリメイクした作品も人気です。全体として、若者の情報環境の中でコンテンツの価値が再評価されていて、かつデジタルとうまく統合されている印象です。
岡本
昔ヒットした漫画や、既にファンが多いコンテンツを使うのがヒット作品を生む鉄則のようになってきていますね。私の母親世代がはまったものが、元ネタを知らない自分の世代には新鮮で楽しく見えるというのはあると思います。
市川
親子2世代で、ライブを見に行ったり、漫画を一緒に楽しんだり、という機会は多いようです。親が見ていたエンタメのリメイクを子供が見れば、一緒にいろいろ共有出来ますからね。
石川
2世代で楽しめるとコンテンツとして強いのは確かにそうだと思うんですが、子供向けのコンテンツやアイドルであっても、生き残るものとそうじゃないものがありますよね。なので、本質的にはそれにプラスして何かあるんじゃないかとも感じています。
後藤
親子で楽しめて、さらに何らか発信し続けているものが残っている印象があります。イベント化していたり、テーマパークとコラボしていたり。
市川
対象の年齢や性別、在住地域などのデモグラフィックが明確過ぎるコンテンツは逆にしぼんでしまっている印象がありますね。見ている人の価値観などに訴えるサイコグラフィックで引き寄せるほうが残っていて。ある世代、ある性別だけだと先細りになるんだと思います。
堀内
幹がしっかりしていながら、上手く見せ方を変えているものがヒットコンテンツになっていますよね。太い幹がありつつ、枝葉でどう見せるかをしっかり考えている。
先述したドラマも、メインはテレビドラマなんですが、それが幹でしかなくて、そこからどう派生させるかを考えられていると感じます。
石川
一方で、メディアミックスが大成功した子供向けのアニメが、その後急速に人気が無くなったりすることがあります。それは枝葉を広げすぎて、枯渇してしまった印象です。本来そのコンテンツに合わないものであっても、売り上げを作りたくなってつい手を広げてしまう。そうすると本来持っているキャパシティが壊れ、結果的にLife Time Valueが減ってしまうんです。そういったことについてしっかり考えなくてはいけないと思っています。

定番とデジタルの組み合わせで伝わり方が変わる

市川
事前に堀内さんが宝塚をお好きだとうかがっていたので、弊社にある関連データを調べてきたんです。各ジャンルのチケットにどれだけお金を使っているか、というデータです。比較のために「男性声優」「2.5次元ミュージカル」「男性YouTuberファン」のセグメントも出しています。これを見ると宝塚のファンは宝塚にしか行っていません。男性声優や2.5次元ミュージカルなど、多くのジャンルのファンはスポーツイベントや音楽のライブにも行く傾向にあるんですが、宝塚とYouTuberのファンは例外的にそこにしかいかない傾向が強いです。
宝塚とYouTuberには大きな違いもあって、宝塚は40~60代が多くて、次は20代以下です。親子で見に行く人が多いのでしょう。一方YouTuberは圧倒的に10代です。男性YouTuberのファンは9割が女性で、クレジットカードを持っていないのも特徴的です。
トレンドという意味でいうと、最近はSNSのインフルエンサーの方が弊社に有料イベントを委託いただく例が増えています。これは去年はなかった動きですね。無料イベントだと普段アップしている動画と変わらなくなってしまうので、次の一手として有料イベントを考えるインフルエンサーが多いようです。
石川
YouTuberのファンは、そのイベントのみにお金を使い続けているんですか。
市川
東京ガールズコレクションのようなファッションショーには例外的に行っているみたいですが、音楽フェスなどにはまだあまり行っていないようです。この層をどう育てていくかが、次のマーケティングに寄与すると思います。

トライブ同士をうまく繋げればファンが増える

堀内
「カテゴリーワークス」ではバーティカルメディア(ある分野に特化して深く掘り下げた情報を提供するメディア)に注目しています。特定の領域に強く関心のある人が集まっているためセグメントで捕まえやすい分、データが活用出来る。マスとは大きく違う部分です。
「トライブ」と言われているものですね。例えば、競馬は大きなレースがあるときに人気なエンタメコンテンツとのコラボをしたりしていますよね。パイがいるところに対して掛け算出来るように。競馬と同じく魅力に強さがあるコンテンツを探して、ファンを増やそうとしている。
石川
最近サッカーのJ3の試合をよく見るんです。何でJ3を好きになったのかと考えると、動画配信サービスでの中継が始まったからです。デジタルが発展することでコンテンツの平等性が増していて、誰もがそれぞれ自己同一化出来るコンテンツを見つけていく。
YouTuberでもファンがバーティカル化しているというのには驚きました。人気の人だったら誰でもいいのかと思ったらそんなことはないんですね。
堀内
ぴあはメディアの作り方もバーティカルになっていますよね。
市川
最初はコンテンツ一つずつの粒度なんですが、それを徐々に塊にしていきます。そしてちょっと違うなというものはそこから外したり。弊社が保有する「PIA DMP」で購買、会員、メディア履歴などを活用して、データドリブンでコンテンツを見ています。
後藤
以前、「アメコミ特集」を実施した際、新しい女性ファンに訴求するために、”ダイエット×アメコミ”が、データ的に相性がいいと分析結果がでてまして。その中で、カトパンのモノマネで人気の餅田コシヒカリさんに出ていただいた企画を実施しましたが、凄く好評でしたね。「この記事ではじめて『ワンダーウーマン』というアメコミを知った」という人が多くいました。
石川
YouTuberのファンは常時接続出来ますよね。宝塚やサッカーも、CSやスカパー!など様々なメディアでいつでも見られるようになりました。昔はサッカーが好きでもいつでも見られるわけではなかったんです。常時接続出来るようになると、ほかに目がいかなくなりますよね。そうなるとトライブがどんどん濃くなります。
市川
その動きの最初は韓流やK-POPだったと思います。今やサッカーもYouTuberもそうなっていますよね。
石川
以前サッカーゲームのマーケティングをしていたんですが、20~30万人には簡単に売れるものの、そこからどうやったら広げるのかが課題だったんです。バーティカルなトライブ同士の相性がどうなっているかが分かるデータがあれば、新たなファンをもっと獲得出来るのに、と感じていました。
企業はどんどんファンマーケティングをやりたくなるので、常時接続の状況だと裏も表も見せて、ってなりがちです。そうするとファンはつくんだけど、一方でどんどんクローズドになってしまいます。
市川
売れるアーティストに共通するのは、濃い初期ファンがいて、それを追うファンがいることです。アーティストに人気が出ると、初期ファンはいなくなるけど、後に続く第二、第三のファンの勢力がどんどん大きくなって、という流れになるんですね。アーティストであるとともに、カルチャーと捉えられると成功すると感じています。初期ファンだけだと、ある程度のスケールでどうしても止まってしまうんですよね。
石川
カルチャーを作るには胆力や哲学が必要だと思っています。広告会社が言うのも変ですが、マーケティングし過ぎないことが必要です。カルチャーを作りきれたときに、次のファンが開くというステップを間違えなければ、より大きなステージにいける。売り上げだけじゃなくて、世の中に対しての影響力などをどう判定するかを自制心を持ちながら考えないといけないと思っています。僕らは一足飛びにマーケティングをしてしまう傾向がありますよね。
堀内
僕は30年くらい競馬が好きなんですけど、好きだった馬の子供がまた活躍してっていう永遠のストーリーがあるんです。宝塚もそうで、スターが卒業して東宝に行って、みたいな流れがあります。競馬がエンタメ化していくことを考えると、血統とかジョッキーとかっていうのは面白いけど、カジュアルに好きになる要素としては難しい。映画を見たりするのと変わらない感覚で競馬を楽しんでもらうには、今までとは違った価値観でコンテンツを捉えていくことが必要かなと感じています。
後藤
最近、「車でおでかけ」特集を作ったときに話したのが、車に乗ることが昔は一種のステータスだったけど、今は趣味のためだよねということです。キャンプにいったりサーフィンするためだったり。
市川
もはや、美味しいもの食べるとか車で出かけるとか、全部「エンタメ」と捉えるべきなんじゃないかとも感じています。
後藤
生活と密着してエンタメも楽しもう、みたいなことですよね。

イケメンを“愛でる”メディア「Medery.」

岡本
アメコミって、以前はニッチな分野と認識されていました。でも最近は若者がアメコミを面白がる流れがあって、作り手の側もそれを意識してグッズを沢山出しています。楽しみ方の分かりやすい導線があったり、ハマるポイントを要素分解して押し出し、それがうまくいっている印象です。
後藤
そのような思想で作ったのが、「Medery.」というウレぴあ総研のサイト内メディアです。“全次元イケメンメディア”を掲げ、2次元、2.5次元、3次元のイケメンを扱っています。
Medery.は何度か話題に出てきた“愛でる”という言葉から来ています。イケメンを恋する対象ではなく愛でる対象と捉えている人が増えているんじゃないか、だからこそ子供からお母さん、お父さんまでがファンになって応援するといった状況になっているのではないか、と考えています。
岡本
競馬もそうですが、育っている段階で愛が芽生えますよね。アイドルも成長していく過程を見ているから、それを守りたい応援し続けたいと思うのが長く続きます。その感情を突くコンテンツが強いと思います。
後藤
Medery.にイケメンプロレスラーの記事を載せています。彼らのTwitterを見ると、素顔には意外なギャップがあって凄く素敵なんです。プロレスというエンタメコンテンツへの新たな入り口になっていると思います。
堀内
Medery.の話で言うと、イケメンコンテンツって一般的には閉じたものになりがちですが、そこをどう広げるかに取り組まれていますね。データ活用の発想でコンテンツをどう作るかも常に考えていらっしゃる。チケットの購買データを持たれているので、今後そういった知見も活用させていただいて様々な取り組みをご一緒出来たらと思います。
市川
我々のデータは、実際にお金を払ってその場所に行ったという、あるハードルを超えたユーザーのデータであることが特徴ですね。
堀内
動きやすい人のデータということですよね。
石川
私はバーティカル同士の関わりとか、バーティカル単位の個性とかを明らかに出来たらと思います。分析が人に落ちていくと普通になってしまい、どのトライブも同じに見えてしまいます。バーティカルの個性を把握して、他とどう繋がるかが見えてくると、新しいマーケティングの入り口が見えると思います。
堀内
それはまさに「カテゴリーワークス Entertainments」で大事なところで、ぴあが所有しているデータは、彼らに対してアプローチするのと、その後どう広げていくかの両方に活用出来るのではないかと思います。アウトプットまで一緒に出来る事例を増やしていけたらと思っています。
市川
どのようなオーディエンスにメッセージを届けるかというセグメント選定はもちろん重要ですが、そのオーディエンスに一番刺さるクリエイティブは何かが少しなおざりになっていると感じます。例えば、成果を上げているプロのスポーツチームでは、LPを毎回見直して、対戦チームの選手画像を借りてきて試合全体の盛り上がりを演出するなど、クリエイティブの質を高めるチャレンジを続けています。そうすると数字も凄く上がるんです。
 またファンに凄く大事なのはタイミングです。どのタイミングで広告を出すかはとても重要です。オーディエンスとクリエイティブとタイミングの三つを意識することが必要だと感じています。
堀内
広告だけではなく情報戦略全体で考えていくべきだということでしょうね。本日はありがとうございました。
  • 博報堂 CMP推進局
    京都生まれ京都育ち。2006年博報堂入社。入社以来、一貫してマーケティング領域を担当。
    事業戦略、ブランド戦略、CRM、商品開発など、マーケティング領域全般の戦略立案から企画プロデュースまで、様々な手口で市場成果を上げ続ける。
    近年は、新規事業の成長戦略策定やデータドリブンマーケティングの経験を活かし、自社事業立上げやマーケティングソリューション開発など、広告代理店の枠を拡張する業務がメインに。
    ※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。
  • 博報堂 第二プラニング局 
    2016年博報堂入社。マーケティング職として、飲料、トイレタリー、アパレルなどの商品開発やコミュニケーション戦略立案業務に従事。
    ゲームや映画、など、エンタメ領域のデータを活用したコミュニケーション戦略やコンテンツ開発などに興味があり、勉強中。趣味は生モノ(舞台・ライブ)鑑賞。
  • 博報堂 第一クリエイティブ局

  • 市川 雅仁
    市川 雅仁
    ぴあ デジタルビジネス推進局データマーケティング推進部部長

  • 後藤 晴美
    後藤 晴美
    ぴあ デジタルビジネス推進局データマーケティング推進部
    ウレぴあ総研統括編集長