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ヒット習慣予報 vol.383『手のひらマイワールド』
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ヒット習慣予報 vol.383『手のひらマイワールド』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの金田です。
少し前までまだ暑かったのにここ最近でグッと秋めいて過ごしやすくなってきましたよね。
芸術の秋なんて言葉もありますが、なんとなくSNSや動画を見る受け身な日々が続いていませんか?(私は続いてしまっています…)こんな私とは対照的に、能動的に自分だけの小さな世界を創造して愛でる習慣を送っている人がじわじわ増えてきています。このような習慣を「手のひらマイワールド」として、どんなことを行っているのかいくつかご紹介したいと思います。

まずは、テラリウムです。
テラリウムとは、ガラスなどの透明な容器の中に、苔や植物をレイアウトして育てるガーデニングスタイルのことです。特に密閉容器を使う苔テラリウムは、一度環境が整うと水やりなどの手間がほとんどかからないため、忙しい現代人でも手軽に自然の癒やしを取り入れられるとしてかねてより人気です。

最近ではそのテラリウムが単なる植物鑑賞にとどまらない派生、進化をみせています。水中のアクアリウム要素を組み合わせた「アクアテラリウム」や、湿度の高い環境を再現した「パルダリウム」など、より複雑な生態系を小さな容器の中で再現するスタイルが人気を集めているようです。実際、「パルダリウム」はまだメジャーではないもののここ数年右肩上がりで注目度が上がり続けていることがわかります。

(出典:Googleトレンド「パルダリウム」で検索) 

また、アニメやゲームのキャラクターフィギュアなどをテラリウム内に配置し、推しと一緒に世界観を作る「推し活」の要素を加えて楽しんでいる人も増えてきています。

続いては、「ブックヌック」です。
聞き慣れない方もいるかもしれないですが、ブックヌックとは本棚の隙間に設置する、奥行きのある箱型のミニチュアジオラマキットのことです。本に挟まれた小さな空間に、古書店や魔法使いの研究所、日本の駅といった特定のテーマの景色を再現します。ブックヌックは実際に小さなパーツを組み立てながら世界観を作っていくため、完成品を飾るだけでなく制作過程も楽しめる趣味として注目が集まってきています。SNSでは「難易度はあるがかなり満足度が高い」「ちまちまして最高に楽しい」といった声とともに作成したブックヌックを発信している人も存在します。デジタル化が進む中で、紙の本の隣にある種「物語の世界への入り口」を作るような遊び心が、本棚という自分だけの世界における世界観づくりとして支持されているのかもしれません。

 最後は「デジタル盆栽」です。
元々は中高年の方を中心とした趣味とされてきた盆栽ですが、近年は海外でアートとして注目されていることやテレビ・SNSの影響で若者の間でも興味が高まってきています。この流れの中でもスマートフォンの中で育てられるデジタル盆栽が注目を集めています。
アプリ上で登録されている樹木データベースを活用し、剪定や植え替え、施肥などを計画し記録できるほかに、自分が育てたデジタル盆栽の成長記録をSNSで共有したりもできるようです。実際の盆栽は手入れが難しく、高価なものも多いですが、SNSを見てみるとデジタル盆栽は場所を選ばすに手軽に盆栽を始めて楽しめるところが魅力とのことでした。このようにバーチャルでの鑑賞も広がることにより手のひら=スマホの中で手軽に楽しめる日本伝統文化アートとしてじわじわ人気になってきています。

ではなぜこのような「手のひらマイワールド」が広がりを見せているのでしょう。
1つ目は、低負荷なウェルビーイング志向の高まりです。
忙しくストレスが多い社会の中で、私たちは手間や時間、空間などの制約を抑えつつ、癒しや達成感、安らぎといったウェルビーイングな状態を求めるようになってきています。一見、今回ご紹介した3事例は時間や手間がかかっているじゃないかと思われる方もいるかもしれないですが、これらのような一つのことに没頭できる創作の時間は今の私たちにとってはストレスケアやマインドフルネスとして認識され、自分にとってポジティブに働く必要な時間として捉えられているのではないかと考えています。
また、SNSの発展や自分らしさを求められるような大きな時代の流れの中で、自己表現や自分らしさを発揮し、それを自分でコントロールできることに対する安心感みたいなものも関係しているのではないでしょうか。自分の手で細部までデザインしたものを、愛着をもって所有することは、ある種自分だけの確かな居場所を持つという充足感に繋がっているのではないかと考えます。その結果今回ご紹介したような「手のひらマイワールド」なものたちが人気を集めてきているのかもしれません。

最後に「手のひらマイワールド」をめぐるビジネスチャンスについて考えてみました。

「手のひらマイワールド」のビジネスチャンスの例
■企業向けで癒し×集中力を高められるデスクグリーンの販売
■自分だけのカスタムができるデジタルクラシックカーの販売
■思い出を伝えると絵や文章にしてくれる絵本作成サービス

ブックヌックは完成した時の達成感がすごそうなのでこれを機にトライしてみようかなと思います。 

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • ストラテジックプラニング局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2017年に博報堂入社。大阪生まれ大阪育ちのマーケター9年目。ヘルシー&ビューティー関連が大好き。最近新しい“推し”と出会ってしまい、日常生活がとても活き活きしています。