
ヒット習慣予報 vol.372『あえて○○旅』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの平石です。
先日久しぶりに浅草に行ったのですが、外国人観光客の方を中心に想像以上に混んでいて驚き、人に疲れてすぐに帰宅してしまいました。あまりの混雑度合いからしばらく浅草には行かないかなと、職場で雑談していたところ、他の人も同じようなことを感じているようでした。それもそのはず、今の日本はインバウンド訪日客数が過去最高を更新していっているとのことです(日本政府観光局 2025年6月時点統計より)。
そこでGoogleトレンドで「混まない」と調べると、2022年頃から検索数が一気に増加し、その後もアップトレンドであることが分かりました。
「混まない」の検索数推移
出展:Googleトレンド
世の中から「混まない」ことへの関心・ニーズが高まっているなかで、新しい旅の習慣が広まってきているようです。「あえて○○旅」と名付けて紹介していきたいと思います。
最初に紹介するのは「あえて夜にピーク旅」です。
これは、夜間の観光活動やイベントなどをあえて旅のピークを夜に持ってくる旅習慣です。具体的には、都市のライトアップ、星空観察、ナイトマーケット、クルーズなど、都市/田舎問わない多様なナイトイベントが挙げられます。
実は私も、昨年のある金曜日の仕事終わりに車を借りて、長野で星空観賞をしてから一泊して戻ってくる旅をしました。夜の移動だったので渋滞もなく、数時間前まで仕事をしていたのに星空をゆったりと眺めることができて大満足な旅になりました。
日本に訪れる外国人観光客の方にも広まってきているようで、僕が春まで住んでいた関西では、京都の神社仏閣や歴史的建造物をライトアップしたものを眺めるツアーや大阪の夜の街並みを水上から眺めるナイトクルーズや屋形船が人気で、それを目的に街に訪れる方もいるそうです。
続いて紹介するのは「あえて時期ずらし旅」です。
これは、人気観光地にあえて人気なシーズンや曜日を外して旅するという習慣です。
例えば、年末年始の需要期が終わった2月にあえて長期休暇を取って旅行したり、週末に有休を半日でもつけて金曜夜~土曜や日曜から月曜に、良い宿にお得に泊まったりするようです。混雑を避けながらお得なので、休みがとりやすかったり、土日祝日が出勤の社会人が率先して取り入れている習慣になっています。
事実、私の友人も先日沖縄に行っていたのですが、GWの翌週にあえて予約したことで混雑も少なく何より高級宿に安く泊まれて非常に快適な旅だったと言っていました。人気店にも並ばず入れたようです。
実は中国でも「逆向旅行」と呼ばれる、空いている時期や場所に旅するスタイルが流行ってきているそうで、もはや日本だけではない習慣といえるかもしれません。
最後に紹介するのは「あえて地方LIVE旅」です。
「推し活」という言葉が広く浸透し、自分の推しのためにグッズを買ったり遠征したりすることが今や珍しくなくなりました。そこで新たに広まってきたのがこの習慣です。自分の推しのアーティストのLIVEが全国各地で開催されるときに、あえて自分がいったことがない地方都市のLIVEを申し込んで当選したら周囲の観光地を周遊するような習慣です。少しでも当選確率を上げる、という視点だけでなくついでに知らない土地も旅してみようという意図が感じられます。私の親戚は、あるアーティストのLIVEで宮崎に行ったときに、LIVE中にアーティストがおいしかったと言っていた辛麺を食べてハマり、2日間の滞在で3店舗巡ったそうです。さらにその滞在中に現地の居酒屋で出会った推し友に会うために後日宮崎を再訪していました。まさに「あえて地方LIVE旅」が生んだ素敵な出会いだといえるでしょう。
ではなぜ今このような「あえて○○旅」が広まってきているのでしょうか。
大きく2点の要因があると考えています。
1つは、冒頭で言及した通りインバウンドの増加などによりオーバーツーリズムが深刻になっていることで、観光客に「タイパ」が悪く感じられているのではないかということです。人気の観光地に人気な時期に行くと、人気店に長時間並んだり渋滞に巻き込まれたりすることも珍しくありません。ひとつの体験に費やす時間が増えてしまい、タイパ重視の時代を過ごした若年世代にとっては受け入れられにくい・満足度が低いものになっているのでしょう。結果、ちょっとニッチな時間や場所でスムーズな旅をする方がストレスなく楽しい旅になるのかもしれません。
もうひとつは、「SNS映え・既視感疲れ」による個性的な旅欲求の高まりです。
どうしてもSNSで映えやすい場所や人気な場所には多くの方が訪れて似たような投稿をするため、どこか新鮮さに欠ける旅になってしまいます。
結果、徐々に飽きが来て、もっと他の人とは違う個性的な旅をしたいという気持ちが高まっていることが、この「あえて○○旅」習慣につながっているのではないでしょうか。
最後に「あえて○○旅」習慣を活かしたビジネスチャンスを考えてみました。
「あえて○○旅」のビジネスチャンスの例
■SNSの投稿数が少ない埋もれた観光地を紹介する「実は素敵なニッチ観光地特集」
■全国の観光地の時期別・曜日別混雑予測を一覧化した「観光地混雑度マップ」
■朝の街並みを見渡す「早朝クルージング」
など
僕は温泉ソムリエの資格をもっているので、あえて地方の温泉地巡りをもっと本格化していきたいと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂プラニングハウス
ヒット習慣メーカーズ メンバー2020年博報堂中途入社。
2025年から博報堂プラニングハウス出向。
明るさとポジティブさがウリな広島人です。