
ヒット習慣予報 vol.375『手触りリバイバル』

こんにちは、ヒット習慣メーカーズの山崎です。
突然ですが、あなたは今日どんな手触りのものにふれましたか? わたしはオフィスワーカーなので、思い返せば、スマホの画面とキーボードという “ツルツル” にばかり触れているような気がします。デジタル化は生活が便利な一方で、指先で感じる世界の解像度は気づかないうちに下がっているのかもしれません。
博報堂メディア環境研究所「メディア定点」によると、20代は1日に平均229.2分もスマートフォンに触っており、接触時間は年々伸びています。みなさん “ツルツル” 三昧ですね。
出典:博報堂メディア環境研究所「メディア定点調査」
(https://mekanken.com/projects/media-survey/media-contact/ )
一方そんなツルツル時代の流れに逆らって、日常的に使う道具の「手触り」にこだわる生活者も増えているようです。機能を満たすだけではなく、触れるたびに感覚が研ぎ澄まされていくような、そんな「手触りリバイバル」について今日はご紹介いたします。
1つ目は、打鍵感で選ぶキーボード。
在宅ワークの環境を整えるためキーボードにこだわる人も増えましたが、単なる使いやすさを超えて打鍵感を選択基準にする人たちが増えているようです。「カチッ」と明確な反応を指に伝えてくれるタイプや、ASMR動画にありそうな「フスッフスッ」と微かな摩擦の振動を感じるタイプまで。
心惹かれる楽器を選ぶように、自分が最も心地よいと感じる感覚を追求するのです。
わたしの同僚はオフィスでは周囲を気遣ってフスフスタイプを使い、在宅ワークでは心ゆくまでカコッカコッを楽しんでいるようです。
2つ目は、ぬくもりで選ぶドアノブです。
普段あまり意識しないドアノブですが、ぬくもりがあるか、手に馴染むかどうか、で選び直す人もいるようです。例えば、滑らかに加工された木製のものや、使い込むほどに味が出る革巻きのドアノブ。一日に何度も触れる場所だからこそ、こだわりで日常が少しアップグレードするのかもしれません。
美は細部に宿るといわれますが、SNS上でみるおしゃれな家の投稿はよく見るとどれもドアノブまで上質だったりします。
最後に紹介するのは、手触りネイルです。
ネイルアートはこれまで目で見て楽しむものでしたが、その価値は手触りも広がっています。あえて光沢を消したマットネイルのすべすべとした感触や、砂を模したサンドネイルのザラザラ、編み目のようなニットネイルのデコボコなど、デザインは様々です。
SNSでは「仕事で緊張したとき、自分の爪のツブツブをそっと撫でると気持ちが落ち着く。誰にも気づかれない小さなお守り」といった声も見られ、手触りネイルがパーソナルな癒やしやお守りとして機能し始めています。
では、なぜ今「手触りリバイバル」が広がっているのでしょうか?
主な理由は「デジタルデトックスへの欲求」だと考えます。私たちは日々、スマートフォンやPCの平坦なガラス面を触り続けています。単調極まりない指先世界の中で、よりリアルで多様な「手触り」を求めているのではないでしょうか。
さらに、パーソナライズの加速化もこの風潮を後押ししているように思います。他者から見えるファッションやインテリアだけではなく、触れた本人にしかわからない極めてパーソナルな領域にこだわる。そこに自分だけの喜びと価値を見出すのは新しい豊かさの形なのかもしれませんね。
「手触りリバイバル」のビジネスチャンスの例
■一つ一つのキーの手触りを選べる完全カスタマイズキーボード
■気分をコントロールする手触り着せ替えスマホケース
■暮らしの道具に貼り付けて使う手触りカスタマイズシール
「手触りリバイバル」は、頭でっかちなデジタル社会において、暮らしの、世界の形を再確認したい心の動きなのかもしれません。みなさんも、日々使っている道具の「手触り」に、少しだけこだわってみてはいかがでしょうか。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂 ストラテジックプラナー
ヒット習慣メーカーズ メンバーびっくり異動で関西に舞い降り絶賛大阪ナイズド中。
大声張って、おもしろがって、肩ぶん回して奮闘中。