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ブロックチェーン × ゲーム領域での新規事業開発「PlayAsset」
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ブロックチェーン × ゲーム領域での新規事業開発「PlayAsset」

金融業界だけでなく、広告・コミュニケーション・エンタメ領域でも進みつつある、ブロックチェーン技術の社会実装。なかでもブロックチェーン×ゲーム領域での発展は目覚ましく、今後、新しいゲームジャンルとして大きなマーケットになる可能性があります。そこで、新規事業開発の現場より、マーケット状況の変動が激しいブロックチェーンビジネスの最新動向をご紹介します。

■改めて、ブロックチェーンとは?

「ブロックチェーンは仮想通貨のことでしょう?」というのが、ブロックチェーンに対する多くの人のイメージでしょう。しかし、仮想通貨はブロックチェーン技術が可能にした実装、使用用途のひとつでしかありません。仮想通貨のほかにもNFT、電子証明、スマートコントラクト、マイクロペイメント、P2P取引とできることは多岐にわたるために、ブロックチェーンは、かえって本質がわかりにくい技術になっています。
ブロックチェーンの本質を一言で表すと、「コピーを禁止にする技術」となるでしょう。インターネットはコピー&ペーストを可能にしたことが革新的で、それによって情報が世界に広がることになったわけですが、それとは全く反対の技術なのです。仮に私しか持っていない世界に1つのデジタルデータを例として考えてみます。コピーを禁止にすることによって1つしか無いデジタルデータは増やすことができず、永遠に1つです。そのようなコピーできないデジタルデータには「希少性」という概念が生まれ、希少なデジタルデータは資産として認められるようになりました。それがビットコインなどの仮想通貨です。ビットコインは現在、デジタル通貨として利用されていますが、その背景にはコピー禁止の技術が使われているため資産と認められているのです。

仮想通貨はブロックチェーンの使用用途の一つでしかない

■ブロックチェーン×ゲーム は何を可能にする?

ブロックチェーンという技術を、最も早く社会実装しているのはゲームです。ブロックチェーンに限らず、最新技術が実装され、ユーザーに浸透するのはエンタテインメントの領域が最も早く、特にゲームは格段に早くなっています。インターネットやVRもゲームでの実装が最初でした。現在、ブロックチェ-ンのゲームでの実装は、日本が最も進んでいて、新しい事例をつくっています。

ブロックチェーン技術のゲームを、デジタルゲーム上に存在するキャラクターにあてはめてみると、ビットコインと同様に、ゲーム上のキャラクターも希少性を持つことになるので、キャラクターが資産化し需要と供給の関係により価格が決定されることになります。パラメーターも高く強いキャラクターがゲーム内に1体しかいないとなると、ユーザーの需要が高まり、価格が上がります。また、ゲームをすることによって、資産が貯まり、資産を交換し合う経済圏が生まれ、その中で効率的に資産を稼ぐ職業も生まれる可能性があります。これは既存のゲームにはなかった概念といえます。たとえば、レベル1のキャラクターを100円で買い、ゲームをすることでレベル99まで育て、1万円で売却するといったことが考えられます。数年先にブロックチェーンが一般化すると、ゲームで資産をつくることがサラリーマンの新たな副業になっているかもしれません。
既存のゲームは遊んだあとに、価値として残るものは何もありません。価値が残らないものと、価値が残るもののどちらが選ばれるかは明白です。ブロックチェーンゲームのクオリティは、現状ではまだまだ低いのですが、時間とともにクオリティは上がり、近い将来、市場が入れ替わるのではと考えています。

資産性の有無により、既存ゲームからブロックチェーンゲームが選ばれるようになる

既存ゲームからブロックチェーンゲームへの移行が行われると言いましたが、ではどんな要素を持ったゲームが流行るのでしょうか。ブロックチェーンゲームのような新しいゲーム領域が誕生すると、そのゲーム領域でしかできない体験を持つものが受け入れられていくと思います。実際、ソーシャルゲームではスマホならではの動きや体験のあるものが急成長した経緯があります。なので、ブロックチェ-ンゲームならではの要素を持つものが勝ち残っていくと考えると、「資産性」「交換&再投資可能」「アセット拡張性」の3つの要素があると考えています。

まず「資産性」では、ゲーム内アセットが価値を持つようになったため、可処分時間を消費するだけのものではなくなったことがあげられます。時代とともにゲームのハードは進化しましたが、ゲーム内の資産を現実世界に持ち出すことはできませんでした。それがブロックチェーンの橋渡しによって可能になります。その背景にあるのは、NFTの誕生です。NFTは「Non Fungible Token」の略で、個性のあるトークンのこと。「Fungible」は代替性という意味です。このNFTによって、デジタル世界の中に1体しか存在しない個性のあるキャラクターをつくれるなど、供給量を制限することができるようになりました。反対に仮想通貨は「Fungible Token」、FTと呼ばれており、決済に使われる事がメインの役割なのでひとつひとつのトークンに個性がありません。普段使っている500円玉が丸かったり四角だったり形がバラバラだと人により感じる価値が異なってしまうので、決済用の通貨はFTであることが好まれます。

「交換&再投資可能」とは、文字通りユーザー同士でアセットの交換が可能ということです。ブロックチェーン技術により、ユーザーは資産を「真」に所有することができ、それによって交換やゲーム間での価値の移動が可能になります。既存ゲーム内のアイテムは、ユーザーが保有しているように見えて実はレンタルです。ゲーム内アイテムはゲームを提供している会社のサーバーに保存されているため、ゲームが終了するとアイテムもなくなります。しかし、ブロックチェーンゲームの場合は、ユーザーが資産を「真」に所有するため、ゲームがなくなっても資産は残り、その資産を売却するなど、自由な移動が可能です。これにより、新しいゲームを遊びたいときは、アセットを一度売却して、手元に残った価値を新しいゲームに再投資することもできます。これは、今までゲームに投資した時間やお金、情熱がムダにならない世界であり、ゲームを遊ぶことが価値として残るPlay to Assetな世界です。ゲーム内の資産については、既にNFT専用の取引所で日常的に取引されています。また、ブロックチェーンのゲームは簡単に価値の交換ができ、そこでコミュニケーションも生まれるので、ソーシャルゲームよりもソーシャル要素が強い真のソーシャルゲームなのではないかとも評価されています。

そして「アセットの拡張性」ですが、NFTはゲームの垣根を超えて使用できる特徴を持っています。これは、既存のゲームで所有していたNFTを新しいゲームでも簡単に使うことができるということです。そのため、今までのゲームで体験していたのと同じような世界観で大乱闘や大冒険を体験するゲームを作ることができるのです。また、ゲームがなくなってもNFTは手元に残るので、ほかの新しいゲームで読み込めば再度使用することが可能です。

ブロックチェーンゲームでは、日本が世界をリードしていて、現在は新作ラッシュ。2020年前半にはさらに数が増える予定で、2020年が「ブロックチェーンゲーム元年」と呼ばれることを予想しています。現在、日本におけるソーシャルゲームの市場規模は約1.2兆円といわれていますが、次第にブロックチェーン技術が浸透し、さらに大きな市場規模になると考えられます。しかし、現在はまだまだ黎明期。未来を先読みした開発が必要です。

■現在開発を進めているプロダクトについて

未来について、私たちが思い描いているのは、VRの空間が舞台になったスティーブン・スピルバーグ監督の「Ready Player One」の世界です。さまざまな既存の有名キャラクターが登場する映画の世界観を実現するには、ブロックチェーンとVRの融合が必要であり、今後、進んでいくと考えています。

私たちが進めている「PlayAsset」は、「ゲームを遊ぶことが価値になる世界、Play to Asset」をミッションに掲げていて、事業名もこれをもとにしています。Play to Assetな世界は近い将来、放っておいても実現する未来だと思うのですが、博報堂グループが持つメディアやコンテンツ事業に関わってきたノウハウをこの領域に提供することでその未来の到来が1-2年早くできるのではと思い、日々熱量を持ってプロダクトの開発を行っています。

現在開発しているのが著作権管理システムの「IP Ledger」です。IPホルダーがIPコンテンツを登録し、取引のたびに著作料が半永久的に支払われる仕組みです。わかりやすく例えると、ゴッホの絵画が売買されても、ゴッホには著作料が入りませんが、このシステムでは取引のたびにゴッホに著作料が支払われることになります。ソーシャルゲームの時もそうでしたが、ゲーム領域が盛り上がり始めるとみんなが知っているIPコンテンツと呼ばれるものが参入してきます。そうなると、IPコンテンツの著作権をどう管理すべきかという話になるので、著作権をブロックチェーンで安全に管理可能なIP Ledgerを作ったのです。

■ブロックチェーンゲームビジネスのポイントと今後の展望

ブロックチェーンゲームが増えることによって、デジタル上の資産も増加すると考えられることから、そうした資産を交換する「デジタル2次流通市場」が、今後は伸びることが期待できそうです。2次流通市場はヤフオクやメルカリなどのサービスが元々存在していましたが、コピー禁止の技術によってデジタル上に2次流通市場が形成され、まだ競合が少ない点がポイントです。総務省のデータによると日本のコンテンツ市場は約11.7兆円あるとのことですが、これは全て1次流通です。この市場において、「デジタル上での2次流通」がどのような付加価値を生み出すのか、普段メディアやコンテンツ産業と接する機会が多い我々が真剣に考え、ビジネスチャンスを狙っていかなければならないと思っています。デジタル2次流通市場で流通するアセットはまだそれほど多くありませんが、真っ先に流通するのはゲームです。ブロックチェーンゲームのターゲットは普段ゲームを遊ぶユーザーと個人投資を行っているユーザーの2種類いると考えており、それぞれ「ゲームで遊ぶことが価値になる点」と「ゲームで資産形成が可能な点」が訴求ポイントになると考えています。

さらに「儲かるポイント」としてあげられるのがデジタル2次流通の他に「マイクロペイメントによるインセンティブ設計」です。マイクロペイメントとはトークンを非常に安い手数料で送付する技術です。ゲーム内アセットがマイクロペイメントで送付することが可能なため、誰でも簡単にインセンティブを設計できるようになります。インセンティブはログインボーナスのようなもので、ログインという行動に対して報酬を渡す仕組みです。このインセンティブ設計を運営のみならず、ユーザー側からも設計できるようになることで、ゲームを遊ぶユーザーコミュニティのエンゲージメントを高めるのに有効に働きます。

「PlayAsset」のようなブロックチェーン技術を使った新規事業を構想する際のポイントのひとつは、「1→1'」ではなく、「0→1」で、かつデジタルで完結する範囲で考えることが重要です。既存のルールを変革する「1→1'」は、法規制の調整などに時間を要するからです。金融や不動産領域においてもブロックチェーンの利用が進んでいますが、ルール整備に時間がかかるのでマネタイズは先になり体力のない会社は参入しづらいです。

また、ブロックチェーンが関わるビジネスの場合は、法律や規則に未整備の部分が多いので、1社ではなくコンソーシアムを組んで対応するのが最近のトレンドです。法律や規則を整備することの重要性は言うまでもありませんが、ルールを変更する準備を早期から始めるべきです。ルールの整備が遅れると、海外では合法なマネタイズ手法が日本では違法扱いになるなど実装が叶わず、国際競争力が失われ、日本産コンテンツの価値が相対的に減少してしまう可能性があります。なので、デジタル2次流通におけるガバナンスルールの標準化を目的とした協会が重要になります。博報堂グループは日本中のクライアントとビジネスを行ってきた実績があるので、ブロックチェーン技術の啓蒙と企業誘致には最適なリソースを兼ね備えており、業界の健全な発展に協力できると考えています。

そして、仮想通貨は送金コストが安いので、国内よりも海外を狙ったほうが恩恵を享受しやすいです。日本はコンテンツ大国と言われてきましたが、ブロックチェーンのコピー禁止の技術により、いよいよ日本のコンテンツを海外に「輸出」する時が来たといえるでしょう。

「PlayAsset」は、Play to Assetな世界の実現の第一歩として、開発したIP Ledgerを活用したゲーム開発ハッカソン「dapcon」を、2020年1月に開催予定です。まだまだ事例の少ないブロックチェーンゲームの市場に少しでも多くの事例を投下し、業界の発展に貢献することが狙いです。興味のある方は是非参加していただければ幸いです。

Dapconイベントページはこちら: https://neutrino.connpass.com/event/155753/

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  • 博報堂DYメディアパートナーズ
    ビジネスイノベーション局
    2016年博報堂DYメディアパートナーズ入社。入社以来ゲームアプリ系のメディアプラニングに従事。社内ベンチャーで本事業を提案し、採択され2019年4月に現部署に異動。開発チームでプロダクト開発を行っている。