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CES2019 現地速報レポート前編ー争点は5Gと自動運転
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CES2019 現地速報レポート前編ー争点は5Gと自動運転

今年も年初から、毎年ラスベガスで開催される「CES 2019」(1/8~11日)に来ています。CESは、もはや家電ショーではなく、世界最⼤規模のテクノロジーカンファレンスになっており、今年も世界150カ国から18万人以上、スタートアップも1200社以上の参加が予想されています。

「デジタル」から「データ」の時代へ

CTA CES 2019 Tech Trends資料より抜粋

開催前のプレス向けに、 CESの主催であるCTA(Consumer Technology Association)が、毎年テックトレンドやテーマを説明するのですが、マーケットリサーチ部門のVPであるSteve Koening氏によると、年代別のトレンドで見ると、デジタル時代から、2020年以降は「データ時代」に突入すると示唆しています。IoTやコネクテッドによるデータ量の増加は以前から議論されていましたが、むしろ昨今のGDPRや、IT企業や中国企業によるプライバシー問題などを背景に、今後は、生活者を中心に考えたデータの価値や活用方法、エコシステムを新たに取り組むべき課題と捉えるべきでしょう。

CTA CES 2019 Tech Trends資料より抜粋

今年のトレンドは、「5G」と「自動運転」

AI、Voice、8K、Robotics、VR/AR、デジタルヘルスも昨年から引き続き、トレンドとなるテクノロジーですが、その中でも今年は特に「5G」と「自動運転」が、話題の中心になりそうです。5G時代を想定したプロダクトや、AIを活用したサービスなどが各社から発表されるでしょう。新しいテクノロジーだと、バイオメトリクス(生体認証技術)、ブロックチェーン、レジリエンス(災害問題解決のテクノロジー)周辺もキワードとして出始めており、今年を皮切りに今後、様々な事例が出てくると予測されます。

もう1つのトレンドは、「自動運転」です。

昨年は、トヨタのe-Paletteが注目を集めましたが、今年は、同様のコミューター型のプロダクトが多く展示されていました。また、アウディが3年ぶりにCESに戻り、カーエンタテイメント領域で直前にディズニーとの提携発表もありました。BoschやNvidia、Mobileye、Aptiv、Valeo、Panasonicといった自動運転やEV技術のコアベンダーが、未来のモビリティを変えていくコンセプトやV2X(Vehicle to Everything)領域のプロダクトの発表が予定されており、自動車業界全体の盛り上がりを今年は強く感じられます。

テクノロジーとデータは、「生活者」のために

キーノートの1つであるVerizonは、CEOのHans Vestberg氏が登壇。5Gは、すべてを変える(Change Everything)第4次産業革命である(4IR: 4th Industry Revolution)と位置づけ、最も重要なのは、より良いソサエティのために「テクノロジーは何ができるかではなく、生活者がテクノロジーを使って何ができるようになるか」。それをVerizonは、生活者を中心に考える「ヒューマナビリティ」(Humanability)と呼んでいました。
また、データ速度やモビリティ、コネクテッドといった5Gのケイパビリティを、このHumanabilityを実現する8つのカレンシー(通貨)であるとVerizonは説明。

他のキーノートでも、LGは、CEO兼CTOのI.P.Park氏が登壇し、CLOi(クロイ)というロボットとの掛け合いから始まりました。LGのThinQと呼ぶAIをベースに、スマートホーム領域に学習し続けるデバイスやロボットが人々の生活をいかに良くしていくか、Web OSというオープンプラットフォームを元にモビリティ体験をどう良くしていくかという、AIで人々の生活をより良く変えていく(ベターライフ)という将来ビジョンを強調していました。
IBMのキーノートは、会長兼CEOのGinni Rometty氏が登壇。3つのWhat’s Next?として、1つは「DATAからDEEP DATAへ」として、DELTA航空やWalmartのケースからデータを高度に活用しユーザー体験を改善しているか、2つ目は「ナローAIからブロードAIへ」として、量子コンピューティングのIBM Q System Oneを発表。最後にIBMとして、これらのデータやテクノロジーは、「生活者にとって、より良いソサエティ構築のために」と締めた。

Amazon・Google、「Voice」の更なる浸透

今年もAmazon、Google Assistantが目立っています。Amazonは、恐らくCES初の自社ブース出展ではないでしょうか。私もまだ全部を見れていませんが、開催2日目時点で確認できた範囲でも、Amazon AlexaとAWS(昨年の商談エリア)、Amazon Auto(自動運転エリア)、Amazon Key(スマートホームエリア)の3箇所。いずれもAlexaを搭載したデバイスやスマートキーサービスの紹介を行っています。ユニークだったのはAmazon。バナナスタンドを設置し、各所でバナナを無料で配っていました。
一方、Googleは、LVCC(メイン展示場)に昨年の2倍規模のブースに拡大し、ブース内には様々な生活シーンの体験コーナーが用意。昨年の巨大ガチャポンも健在です。なんと二階にはGoogle Rideの名称で、本物の遊園地にある2分間のライドものまで作ってしまいました。

両社ともパートナーや搭載デバイスの裾野が大幅に拡大しており、徐々にスマートスピーカーの生活者の使い方も米国では広がってきているようです。

「P&G」が、コネクテッドプロダクトを開発?!

個人的に現時点で最もインパクトが大きかったのは、P&GのCES初出展です。今回、6つのコネクテッドプロダクトを発表

彼らはCESのことを、Consumer Electronics Showではなく、Consumer EXPERIENCE Showと表現し、生活者のエクスペリエンスが重要であることを強調。その上で「生活者が変わっていく中で、データサイエンスやテクノロジーを取り入れ、我々自身(P&G)も変わるのは必然。しかもスピードが重要。ベンチャー的なリーンスタートアップのやり方を学んだ」と説明。
新たな方法でプロダクト開発することで、従来とは異なる生活者のエクスペリエンスを提供し、より良い生活を提供し続けていく。また、エクスペリエンスの中で、フィジカルな動作とデジタルを組み合わせて「Phygital」と表現。

CESは、家電や自動車など耐久財メーカーが多いカンファレンスにも関わらず、P&Gは、消費財の大企業として、テクノロジーを取り入れ、自社のイノベーションを実践した好事例と言えます。実際のプロダクトは発売前のコンセプト段階かもしれませんが、こういった取り組みを通じて、社内のマーケティング部門とR&D部門の協業、スタートアップとのパートナーシップ、彼らとのプロダクト開発の経験、新たなブランディグ手法の実践検証といった、恐らく販売成果以外の新規ビジネスの学びが大きいと想像できます。我々、日本企業、特にデジタルトランスフォーメーションが難しいと思われている消費財メーカーにとって、今後のベンチマークになるでしょう。
今回の記事では割愛しましたが、それぞれのプロダクト毎にブレークダウンして見てみると更に学びが深まります。それは帰国後にご報告いたします。

CESもまだ前半戦ですが、イノベーションやテクノロジー視点からビジネスへの刺激がたくさんあり、残りの日程も楽しみです。

後編はこちら

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  • 博報堂 データドリブンマーケティング局 局長代理 グローバルデータマーケティンググループ グループマネージャー
    博報堂のフィロソフィーである生活者発想を軸に、デジタルやデータを活用したマーケティング領域の戦略プランニング、マネジメント、事業開発、イノベーション、グローバル展開を担当。自動車、IT、精密機器、エレクトロニクス、EC、化粧品業界を中心に、デジタルシフト、データ分析、DMP活用、データ基盤構築、組織開発など、マーケティングの高度化を支援。アジア、中国、インドの海外業務やテクノロジー動向にも精通。