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ヒット習慣予報 特別編『2018年の振り返り』
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ヒット習慣予報 特別編『2018年の振り返り』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズです。
年内最後の配信となる今回は、連載開始から約1年間で配信した53個の予報を振り返ったうえで、総括と2019年に広がるヒット習慣の大まかな予測をしていきたいと思います。
普段は担当者ごとのコラム形式となっていますが、特別編となる今回はメンバーでの対談形式でお送りします。

生活者の“欲望曼荼羅”でコラムを整理

中川

振り返りに先立って、これまでのコラムを整理しました。活用したのはヒット習慣メーカーズが独自に開発した“欲望曼荼羅”です。過去のヒット習慣をまとめる中で、“その習慣がどのような生活者の欲望に応えているか”をプロットできるように開発しました。実際にこれまでのコラムをプロットしたものがこちらになります。

中川

曼荼羅の中で対極に置いているのが、対立関係にある欲望です。それぞれの軸ごとに偏りを見ていくと、世の中がどんな欲望にひかれているかを見ることができると考えています。

「本音」「交流」「多動」「緩和」が4大潮流

馬場

軸の片方にプロットの数が偏っているのは、「本音」「交流」「多動」「緩和」の4つの欲望になっていますね。世の中の兆しをもとに、これから来る習慣を予測しているコラムがこうした分布になるということは、まさに生活者がこの4つの欲望にひかれはじめていると言えるのではないでしょうか。

濱谷

そうですね。例えば「本音」だと、SNSの普及で周りに合わせる意識が強まる中で、反発して「本音」をさらけ出したいという欲望がふつふつと湧いてきているんですかね。

中川

たしかに、(「本音」の対極の)「同調」は出てこなかったので、世の中が「本音」の方に向かっているということですね。

植月

ノンフィルター映えとかも広がってきていると思っています。荒井さんの書かれたすっぴんバーとかが登場するコラムですが、たしかに自然に過ごせる方が楽だし、すっぴんバーみたいな上の世代だけの兆しでなく、女子中高生とかも写真にフィルターをかけることに疲れてきて、結局原点回帰していたりします。

中川

いいですね、予報が当たってきている。

馬場

「同調」の流れは本当にないんでしょうか。

中川

「同調」はすでに、周知の事実になっているものが多いので、新しい兆しを見出す予報コラムとしては出てこなかったですね。濱谷も言っていたように、むしろ今の世の中は「同調」に寄っていて、反発して「本音」をさらけ出したいという流れが出てきているのかもしれない。曼荼羅の軸自体は欲望の整理なので変化しないけれど、時間とともに軸の中での偏りは大きく変化していくと思います。

荒井

たしかにファッションブランドなんかも、少し前まではシンプルなデザインがトレンドだったけれど、ごついデザインが増え始めています。シンプルで控え目なデザインから、「本音」で着たいと思えるデザインが好まれてきているともいえるかもしれないですね。

栗田

「本音」が出てきている一方で、「自律」と「交流」を見ると、「交流」に偏っています。一人で何かやるというよりは、みんなと「交流」したいということなんですね。

植月

少し前までは、ひとり○○が流行っていましたけど、最近あまり聞かないですよね。

楠田

たしかに、おひとりさまとか、ひとりカラオケ、ひとり焼き肉などいろいろあったけれど、最近あまり聞かなくなってきた。そう考えると、「自律」から「交流」に向かっている気がしますね。

荒井

「多動」もすごく多いですね。

中川

そうですね、1回飲みに行くたびに10軒のお店をまわるというくらい多動化している人もいますが、お店のレビューサイトも充実してきて、同じ店ばかりでなくいろいろなお店を楽しみたいという気持ちもなんとなく分かる気がします。

濱谷

少し生活者が飽きやすくなってきているというのもある気がします。時短エンタメなどもありましたが、ドラマを1時間見ていられなくて、15分の朝ドラマが人気を集めていたりします。

栗田

他にも、連続ドラマを見続けられないから、一話完結型のドラマの方が人気が出やすいといわれていますね。

濱谷

気分チェンジ用品も、香水やシャンプーなど同じ日用品をずっと使い続けるのに飽きてしまうから、香りを変えるなどして使い分けたいというニーズが出てきているということだと思います。

中川

あとは、「緩和」ですね。たしかに、緩まる方向に時代が向かってる感じはしますね。

濱谷

働き方改革が推奨されていることもそうですし、経営にアートを取り入れるといったような、ビジネスにおいてアイデアやクリエイティビティを重視する動きが出てきているのも「緩和」の一つな気がします。遊べるオフィス楽楽通勤も、緩めた方が創造的に働けるという認識もできあがりつつあります。

中川

私生活でも、借景チルアウトみたいなこともありますね。僕もいま、まさに実践しようとしているけれど、屋外で座る用の椅子を探していると、400gくらいの超軽量で折りたためる椅子が出ていて、商品も追いついてきている気がします。

「簡便化と不便益」や「正常化と無頓着」はお互いひき合っている。

植月

最近話題のキャッシュレスとかも「緩和」なんでしょうか。

中川

キャッシュレスは「簡便化」ですね。「簡便化」と「不便益」はお互いひき合っている感じがします。一気に「簡便化」しすぎて、「不便益」が逆方向に引っ張って、バランスをとっている。「不便益」よりのコラムだと、あえてひと手間かけてコーヒーや抹茶アイスの濃度を好みに応じて選ぶ濃度調整とかが面白かったですね。

馬場

簡便化したいものと不便益にしたいものには、何か傾向があるんでしょうか。

中川

コーヒーのような嗜好品とか、心の豊かさに作用する情緒的なものに関しては、あえて不便益化してよりじっくり楽しみたいのだと思います。一方で、キャッシュレスのように機能的なものは効率や便利さを追求したいということだと思います。

濱谷

ほかにも家で過ごす時間が増えたり、家族の時間を大事にしたりといった傾向がある中で、家で楽しむようなものは、特にひと手間かけてでもじっくり楽しみたいという習慣が出てくるかもしれないですね。

馬場

「正常化」と「無頓着」もひき合っているように見えますね。

中川

そうですね、「無頓着」というと、限界食空中スリルみたいな刺激を求めたり、あえてジャンクなものを大量に食べるといったような習慣で、「正常化」は、人間本来の生き方を希求するという方向性。確かに、これも両方の習慣が見えてきていて、どちらに傾くか揺れていますね。

4大潮流におけるビジネスチャンス。ポイントはサブスクリプションと代行か。

中川

今年の振り返りができたところで、見えてきた「本音」「交流」「多動」「緩和」の潮流に乗せると、どんなビジネスチャンスが考えられるかについても、ディスカッションしてみましょう。個人的には、「多動」の流れで“通信教育講座の受け放題”などが増加していくんじゃないかと思っています。

栗田

面白いですね。ビジネスパーソン向けのサービスだと、すでに提供しているものもありますが、より一般向けのサービスとして、拡大していく気がします。

植月

「本音」だとほかにも、すっぴんの価値向上とかがあるんじゃないかなと思います。最近、オフィスでメイクせずに、夕方からばっちりメイクで街に繰り出す女性なんかも増えているといいますし。わたしも、会社は家との往復しかしないからメイクせずに、休日だけするということが増えてきました。

中川

なるほど。そう考えたときに、すっぴんのビジネスチャンスは何なんでしょう。

植月

素肌をきれいにするために、スキンケアにより注力するんじゃないでしょうか。むしろ手順が多いから、ラインを揃える人が増えてビジネスチャンスが広がるかもしれません。素肌を基から鍛えるという意味では、ワークアウト式美容に近いかもしれません。

濱谷

「緩和」の流れで“マッサージのサブスクリプションサービス”とかも出てくるんじゃないかなと思っています。

栗田

それ、あったら嬉しいですね。

中川

たしかに、すでにありそうな気もするけれど、今後広がりそうですね。全体的にサブスクリプション型のビジネスモデルで、多くの商品やサービスが広がりそうな気がします。

荒井

「緩和」だと他にも代行系サービスもいろいろ考えられそうですよね。

植月

最近、少し話題になっていましたが、退職代行サービスとか面白いですよね。やりづらいこととかは全て代行してもらえる世の中になるのかもしれません。

馬場

いま、世の中にある代行サービスは、実際にどういう代行がされているのかとか、裏側が見えないことが多くて、サービス品質に不安を持ってしまうこともある。例えば、服を自分の代わりに選んでくれるサービスなら、パーソナルコーディネーターが指名できてその人に選んでもらえるといったような、安心して利用できるサービスにすることでビジネスチャンスが増えるかもしれませんね。

中川

ほかにもお墓参りの代行とかもありますね。自分の代わりに行って、掃除をしてくれたり、お花や水をやってくれたりするサービスです。

栗田

たしかに、行かないよりは、きれいに掃除したり、新しいお花が生けられている方がいい気がしますね。お参りに行けない事情もいろいろあるでしょうし。ほかにも、結婚式の2次会の司会代行みたいに、コンパの人数が足りないときに代行してくれるサービスとかもあったら嬉しいですね。若手芸人が来て、盛り上げ役までやってくれたら最高です。

中川

そうだね。代行はほかにもいろいろありそうな気がします。

2019年はどんなヒット習慣が生まれるのか?

中川

最後は、ヒット習慣予報らしく、2018年の振り返りや来年起きる予定のイベントから、2019年はどんなヒット習慣が生まれそうか、ざっくばらんに予想をしてみたいと思います。

栗田

まず、大きい話からすると年号が変わることで、何か生まれるんじゃないかなと思います。

荒井

たしかに、何か新しことをはじめたくなって「多動」の方向が加速しそうな気がしますね。

楠田

新元号に、「緩和」の流れも相まって、どんどん「多動」な人が増えていきそうですよね。

植月

一方で、今年はいろんなことに“平成最後”をつけることで、やりたいようにやっている感じもしました。だから「本音」が多かったんじゃないかなと思います。私自身、平成最後とつけることで、元号が変わったときに「あの時は若かったから」と言い訳してリセットできる気がして、やりたいことをやっていた感じがあります。

中川

たしかに、来年も元号が変わるまでに、“やり納め消費”でいろいろなことにチャレンジする人が増えそうですね。

植月

そうですね。バレンタインで本気の告白をする人が増えたり、お花見が例年以上に盛り上がったり、さらに盛り上がりを見せそうな気がします。特に、はじめて元号の変わり目を経験する平成生まれの若い人たちほど、はじけるのではないかと思っています。

荒井

平成最後といえば、栗田くんは、平成最後の夏Tシャツ作ってたりもしたもんね。

栗田

たしかにそうですね。今日、着て来ればよかった(笑)。平成最後の夏効果で、甲子園が話題化したりもしましたよね。ほかにも、20年以上前の女子高生時代に仲の良かった友人との現在での交流にフォーカスを当てた青春映画が人気を博したり、30~40代女性の青春時代に活躍した有名歌手の引退が話題になったりしました。平成最後×青春の文脈で、まだまだ青春を楽しみたいという「本音」は、平成生まれの人に限らず、年号の変わり目に向けてますます盛り上がるのではないでしょうか。

楠田

逆に、来年は“最初の”が多用されるかもしれないですね。

中川

たしかに、ビジネスチャンスのところでも話した“通信教育講座の受け放題”みたいな形で、新しい時代の訪れに合わせて、新たな習い事や趣味をはじめて、これまで以上に「多動」化する人が増えそうですね。

濱谷

再来年の2020年に控えた、一大イベントに向けた潮流も出てくるんでしょうか。

楠田

そこに向けてという意味では、「交流」がますます活性化しそうな気がします。若い人の中には、2020年までに結婚して、パートナーと一緒に観戦に行きたいという願望を持っている人もいます。

馬場

なるほど。たしかに2020年の一大イベントをきっかけに、日本人同士の交流が盛んになるというのはありそうですね。

楠田

若い人の結婚だけでなく、年齢が高めの層であれば、働いている世代であってもボランティアには参加したい、だから今から日常会話レベルの英会話を習得しようとしている、みたいな人の話も多く聞きます。世界的なイベントが触媒となって、これまで以上に様々な形の「交流」が生まれるのではないでしょうか。

中川

まとめると、“平成最後”で「本音」が盛り上がり、そのまま“新元号”で「多動」が活性化、一方でオリンピックに向けては「交流」がますます来るのではないかということですね。あと一つの潮流の「緩和」はどうなっていくんでしょう。

馬場

関係しそうなイベントだと、来年の10月に予定されている消費増税がありますね。

中川

たしかに、消費税周りの動きは「緩和」に影響しそうですね。難しいのは、前回の消費税引き上げ時の駆け込み需要への反省から、軽減税率を導入したり、キャッシュレス決済へのポイント優遇を導入したりと、並行して政府主導の動きが様々あることでしょうか。結果として、日々の生活必需品への支出なのか、趣味性の高い支出なのかによっても、いまと比べて安くなるのか、高くなるのか、が変わってきます。

濱谷

いまのまま「緩和」の流れが加速するのか、一度「負荷」の方向で引き締めなおされるのか、予測が難しいですね。

中川

そうですね。消費税周りの話は、今後も世の中の潮目を注意して観察する必要がありそうです。もちろん、それ以外の兆しも含め、来年以降もヒット習慣の予報と、ヒット習慣を生み出すための活動は続けていきますので、皆さんよろしくお願いします!

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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