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データをひきだすファシリテーション術第8回
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データをひきだすファシリテーション術第8回

あなたの妄想が未来を生み出す?

数多のデータと日夜向き合うデータドリブンなみなさん、こんにちは。
VoiceVisionの上地です。

「ファシリテーション・クリエイティブ」のスキルをご紹介してきた本連載も8回目を迎えました。今回のテーマは「もうそうする」です。
第1回のコラムで大高より「ファシリテーション・クリエイティブ」には大きく分けると①ききだし力と②うみだし力がある。そんな②うみだし力の中で「こうなったらいいな~と思う、“なりたい未来”を妄想する」ことが重要であるとご説明させていただきました。
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よりよいデータを引き出すために、なぜ妄想することが大事なのでしょうか?

わたしたちが考える妄想とは、「事象やデータの先に、自らの意志を持って具体的な未来の姿を思い描く」ということです。あらゆる変化が同時多発的に起きている現在において、未来は不透明で予測する事が困難です。ビックデータの時代、生活者の様々な行動はデータとして集積され、多くの人がそれらのデータにアクセス可能になりました。それらのデータを客観的に読み解き、確からしい未来を予測し、その未来に向けて事業を投入したとしても、待っているのはレッドオーシャンです。客観的な未来予測は多くの人が同じ結論にたどり着く可能性が高いからです。だからこそ、客観的に未来を予測するのではなく、主体的に未来の可能性を探求し自ら未来を創り出す、妄想する姿勢が大事なのです。

それは仮説か?思い込みか?

未来を妄想する上で、仮説を持って事象やデータを読み解く事は重要です。一方で妄想を拡げる上で、思い込みは捨てるべきものです。思い込みは妄想を制限してしまうだけではなく、間違った方向に誘導してしまうかもしれません。(思い込みはバイアスや既成概念と呼ばれたりもしますね。)

「あらゆるモノやコトをシェアする時代がやってくる」
これは仮説でしょうか?それとも思い込みでしょうか?

どちらともとれますよね?

A「あらゆるモノやコトをシェアする時代がやってくるに違いない!」
B「あらゆるモノやコトをシェアする時代がやってくるかもしれない。」
これだとどうでしょう?

Aは思い込みでBは仮説ですね。
仮説と思い込み、その違いはどこにあるのでしょうか?

それは仮説や思い込みを持った後に、事象やデータに向き合うスタンスの違いです。強い思い込みを持った時、人は想定外を拒否するか歪めて理解しようとしてしまいます。一方で仮説として捉えていれば、一見すると仮説と異なって見える事象やデータに対して、「何が違うのだろう?」「何で違うのだろう?」「何をシェアして何はシェアしないのか?」「シェアする裏にどんな意識があるのか?」と好奇心を持って向き合い、仮説を進化させていくことができます。

つまり、
想定外に寛容であること
仮説を更新し続けること
が重要なのです。

思い込みから脱却し妄想を拡げよう!

ここで1つクイズを出題させてください。

「幼い女の子が両親に、「決して地下室の扉を開けてはいけない。開けたら見てはいけないものを目にすることになる」と注意されていました。
しかしある日、両親が出かけて家に誰もいない間に女の子は地下室の扉をこじ開けてしまいました。
女の子が見てはいけなかったものとは、いったいなんだったのでしょう?

これは既成概念にとらわれず、全く新しい視点からアイデアを生み出すための『水平思考(ラテラルシンキング)』を養うためのクイズです。
この出題文だけから1つの回答を導く事はできません。わたしたちが向き合う事象やデータもそういう意味で近いと言えます。
このクイズには続きがあります。回答者が出題者に対してイエス/ノーの質問を繰り返し、回答を導きだすのです。回答者が質問をする上で重要になるのが事象(出題文)から疑問を見いだし仮説を持つことです。
例えば、「娘は何で扉をこじ開けたのか?」という疑問を持つことができれば「娘は今まで地下室に入ったことがない?」といった仮説を質問することができるかもしれません。ちなみにこの質問への回答は「ノー」です。
これは一見出題と矛盾するように感じますよね。少し考えてみて下さい。女の子はいったい何を見たのでしょう?

正解は「外の世界」です。
つまり女の子は地下室の中に閉じ込められていたわけです。

このクイズには、「女の子が見てはいけなかったものは“地下室の中にある何か”」という思い込みが仕込まれています。しかし実際には地下室の中にあった“モノ”こそが女の子だったわけです。
おばけ、怪獣、はたを織る鶴等、闇雲に“子どもが見てはいけなそうなモノ”を連想するだけでは真実にはたどり着けません。また人の意識や行動から始めた思考は、妄想を重ね思い込みから脱却することで、人の置かれている環境や人と人との関係といった“社会”にまで発想が広がるのです。

水平思考にはいくつかの手口があります。
① 挑戦的発想法:現状を改めて問いなおす。
⇒現状を洗い出し、「そもそも何でそうなのか?」を考える。
② 刺激的発想法:現状の要素を変えて発想する。
⇒現状にとらわれずに、「もしも◯◯だったらどうなるか?」を発想する。
③ ランダム発想法:一見無関係な事象と掛け合わせる。
⇒未来に起こりうる社会や生活者の変化から発想する。
これらの発想法を組み合わせ、事象やデータ、そこからの気づきを「くくり」「まとめる」を繰り返すことで、妄想を拡げていきます。

「くくる」「まとめる」については前回、前々回のコラムを読んでみてください。
VoiceVisionでは企業やブランドの未来を「これまでとこれから」のワークフレームを使って妄想しています。

まず最初に企業やブランドの“これまで”を洗い出します。
洗い出した要素に対して挑戦的発想法で「そもそも何でそうなのか?」を問い直し、違う可能性を探ります。

次に、“これまで”の中でもこれからも持ち続けたい企業やブランドの“コアとなる価値”を抽出し、刺激的発想法によってその価値が拡大強化された時どんな未来が考えられるか?を妄想します。

その上で、対象としている企業やブランドとは関係なく、未来に大きな影響を与えうる変化の芽と、“コアとなる価値”を掛け合わせ“これから”の可能性を妄想するのです。

このワークによって、企業やブランドの未来の可能性と、現状に対する変革のポイントを明確にすることができます。

その妄想はみんなから応援されるのか?

最後に妄想を実現するための視点についてお話します。
重要なのは、妄想した未来がみんなから応援されるのか?ということです。

まずは企業やチーム内のメンバーが応援してくれるのか?
そもそもこの応援が得られなければ、その妄想を実現するためのアクションを起こすことができません。

次に生活者は応援してくれるのか?
この応援が得られるのであれば、その妄想は一定のニーズを捉えることができるはずです。

最後に社会からの応援は得られるのか?
企業(自社)と生活者を超えて社会の応援を得られる妄想であれば、そこには多くの協力者を集めることができるかもしれません。わたしたちはそれをソーシャルヴィジョンと呼んでいます。
それは、企業のありたい姿ではなく、企業として実現したい社会です。

さいごに

技術進化が加速し価値観が急速に変化する今、ひとつの企業が持つリソースで新しい価値を創造し提供していくのは困難です。『共創』によってそんな状況を打破することができるかもしれません。
VoiceVisionではこれまで、生活者、企業、行政、地方自治体等、様々な主体による共創活動をファシリテートしてきました。
多様な主体を巻き込んだ共創活動で重要なのは、求心力です。その入り口になるのは、今回のコラムで紹介させていただいた妄想に他なりません。事象やデータ、その先にいる生活者、その根底にある社会と真摯に向き合い、主体性を持って妄想を続けること、その先に社会から応援されるソーシャルヴィジョンを描き共有することで、未来を創っていくことができるはずです。

未来を生み出す妄想を共にはじめてみませんか?

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  • (株)VoiceVision 取締役
    1979年神奈川県横浜市生まれ。京都大学でコミュニティ、パーソナルネットワークの研究に取り組み。2005年に博報堂入社。ブランディング、コミュニケーションプランニング、商品開発、コンテンツ開発、コミュニティマネジメントなど、様々な領域の業務を通じ、人の思いと繋がりの大切さを痛感し、行きついたのが「共創」。
    2013年VoiceVisionの設立に参加。オープンイノベーションによる新領域開拓、多様なステークホルダーを巻き込むコミュニティの設計、共創人材の育成、共創型組織への構造改革を得意領域に、共創による価値創造のパートナーとして様々なコミュニティ/プロジェクトのプロデュース/ファシリテーションを手掛ける。