おすすめ検索キーワード

企業が利用できるデータの種類・量は日々増え続けており、データ活用の重要性はますます高まっています。このような状況において、データを閲覧するためのダッシュボードとして、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールがあらためて注目されています。
博報堂プロダクツは2013年にBIツール「HAKQEN(ハッケン)」の提供を開始し、現在までアップデートを重ねてきました。IT専業ではない博報堂プロダクツがBIツールをリリースした理由は何なのか、HAKQENを始めとしたBIツール活用のポイントはどこにあるのか。同社の太田彰一に聞きました。

-まずは太田さんの経歴を教えてください。

以前は印刷会社でダイレクトメール関連の業務を担当していました。博報堂プロダクツに入社したのは11年前。最初の6年間は単品通販会社のダイレクトマーケティング業務に従事しました。営業、プランニング、プロデュース、メディアバイイング、分析など様々な業務を一気通貫で実施していました。
その後、通販に限らずデータを扱う業務を担当するようになり、それが現在まで続いています。マーケティングオートメーション(MA)やプライベートDMP、BIなどのマーケティングテクノロジーを使ったデータ分析、コンサルティングを専門にしています。
2018年4月に博報堂プロダクツの部署が再編されて新たにデータビジネスデザイン事業本部ができました。データビジネスデザイン事業本部の中にはいくつかの部署があり、私が所属しているアナリシスプラニング部にはデータアナリストが集まっています。アナリシスプラニング部はクライアントからお預かりした購買データや、Web上のアクションなどから成る行動データの分析を主な業務としています。

-HAKQENを開発することになった経緯を教えてください。

以前所属していたダイレクトマーケティング事業本部は、単品通販会社が主なクライアントでした。その業務の一貫として、BIを使ったデータ分析を行っていました。
BIツールの提供を始める前の段階で、それまで当社が蓄積したノウハウから、単品通販会社がBIを利用する場合に参照すべきKPIは分かっていたんです。具体的には、レスポンス数やコンヴァージョン数、離脱数、LTVなどです。そうした指標の閲覧に特化すれば、安価で使いやすいツールができるのではないかと考えて開発したのが、クラウド型のBIダッシュボード「HAKQEN」です。最初のバージョンは2013年にリリースしました。
HAKQENには、PDCAを促進していくために必要なKPIの定点観測のためのテンプレートが50個以上入っています。これは当社が得意とするプロモーション領域の知見を活かして作成したもので、これまでお預かりした1,500億レコードのデータを分析・管理・活用した経験が詰まっています。基本テンプレートを活用いただくことで、短期間、低コストで導入することができます。
当初は単品通販会社向けでしたが、現在は流通・小売、飲食、顧客カードやポイントカードを保有する企業など、顧客ひとりひとりの販売データを保有するクライアント企業においては、より重要性の高いKPIの定点観測が行えるようになっています。

-HAKQENの提供以外にも、データクレンジングやデータマート構築など様々な関連サービスをメニュー化しているのはどうしてでしょうか。

HAKQENをご利用いただく場合はクライアント企業のデータをお預かりすることになるのですが、そのままHAKQENに入力できる形になっていることはほぼありません。
そもそも企業の情報システム部門が持っているデータは、分析に使うことを目的としたものではなく、商品の売買や契約の成立など業務を遂行するために使うものであり、そのログがデータとしてシステムの中に溜まっている、という状態です。これを分析で使うには、表記や体裁を揃えるデータクレンジングが必要になります。
また分析結果を閲覧する際、生のデータから集計をしようとすると計算に時間がかかってしまうので、ある程度事前に集計作業をしておきます。この集計したデータをデータマートと呼ぶのですが、当社がHAKQENをご提供する場合、クライアントごとにデータマートをお作りしています。

-HAKQENを実際に導入した企業は、どういった流れで導入を決めているのでしょうか。

一番多いのは、「データを持っているけどどう使っていいか分からない」とお悩みの方が、当社の販売促進担当に相談してスタートするケースですね。そこから我々のツールを前提にして話が進む場合と、BIツール導入にあたっての競合プレゼンになる場合の両方があります。競合プレゼンの場合は、だいたい「見るべきKPIと、PDCAを回すための体制を提案してください」と資料のどこかに書いてあります。そこが多くのクライアント企業にとって一番の悩みの種なのかもしれません。
全体のマーケティング戦略をご提案させていただく中の一つとして、HAKQENをご提案させていただくことも多いです。
以前はマーケティング部門からお声がけいただいて、その後情報システム部門の方をご紹介いただくというケースが多かったのですが、最近ではマーケティング部門と情シス部門が統合したデジタルマーケティング部門からお声がけいただくことが増えてきました。

-BIツールは、「うまく使いこなせなかった」「導入したのに誰もダッシュボードを見ていない」など、導入に失敗するケースが多いとよく言われます。HAKQENの場合、そういうことは起きにくいんでしょうか。

いえ、それはHAKQENでも同じです。BIツールは、「マーケティング全体の中で現状何がうまくいっていて何がうまくいっていないかを判断し、マーケティングの構造を把握する装置」なんです。健康診断で血圧を毎回測るように、KPIを定点観測するために使います。BIを使って何が見たいかがはっきりしていないと、HAKQENを導入してもうまくいかないことはあり得ます。もちろんそういったことがないように、事前にいろいろアドバイスさせてはいただくのですが。BIツールの導入はメール配信ツールを入れるような感覚で取り組んでもうまくいきません。
導入がうまく行かない典型例は、クライアント企業の中で、KPIをきちんと設定せず、納品の一歩手前になって初めて画面をチェックするようなケースですね。そういう場合は納品間際でプロジェクトがひっくり返るということも起きます。
HAKQENはKPIのテンプレートをたくさん持っているということをお話しましたが、仮にテンプレートがうまく機能してKPIの達成状況が可視化できたとしても、それだけでは状況は何も変わらないんです。例えば顧客の離反を示す値が出ていた時に、商品が飲料であればそれは顧客の飽きを意味している場合もありますし、サプリであれば顧客の飲み忘れが多いのかもしれません。このように商品の特性によって同じKPIでも意味や解決方法が変わります。BIがそれ単体で何かをしてくれる訳ではない、という認識はBIを使いこなす上で必須だと思います。また、BIは継続的に取り組んでいくべきプロジェクトでもあると思います。

BIプロジェクト PDCA構造イメージ

-HAKQENは2013年のリリース以降、バージョンアップを続けています。今後はどのような機能強化を考えていますか。

単品通販会社様向けのツールとしてスタートしたHAKQENは、徐々に対象となる業種を拡大してきました。様々なクライアントにお使いいただける機能を備えているという自負がある一方で、まだまだ足りないところが多いとも考えています。
例えば流通の場合、競合店を見なくてはいけません。業界におけるシェアや、店ごとの立地などについても分析が必要です。こういった部分は現在のテンプレートではカバーできていません。
また、個人の行動データと商品の購入データとどうマージさせていくのか、も今後の大きな課題です。将来的にはある程度体系化してHAKQENに取り入れていきたいと考えています。
ただ、HAKQENの機能を向上させ、優れた分析ツールを提供するだけではなく、まずはクライアント企業のマーケティング施策の目的やゴールを明確にした上で基礎分析を行いながら、本当に定点観測する価値があるKPIをみつけ、マーケティングの構造を把握できるようなBIに改善していく、ということを目指したいと思います。

  • 株式会社博報堂プロダクツ データビジネスデザイン事業本部 アナリシスプランニング部 チーフデータアナリスト
    2007年に博報堂プロダクツ入社以来、ダイレクトマーケティング業務に従事。
    現在はマーケティングツールの運用業務を中心にデータ活用を推進中。