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企業とユーザーの接点が変わる、サービスも変わる 
~イノベーションサロンVol.1~

9月6日(木)、博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所が主催する「イノベーションサロン」の記念すべき第一回が開催され、メディア環境研究所の加藤薫、D.A.コンソーシアムホールディングス 広告技術研究室の永松範之、原田俊が登壇しました。
ボイスアシスタントやスマート家電、次世代型店舗・住居などの登場により企業と顧客の付き合い方が大きく変わっていくであろう今後、ユーザーとサービスとの接点はますます拡大していくと考えられます。今回のテーマは、「未来のユーザーとサービスの接点をどのように捉え、どんなビジネスをつくっていくべきなのか」。前半ではアメリカ、中国、日本のビジネスケースをテクノロジーと生活者目線でひも解き、後半では約40名の参加者を交えて活発なディスカッションが行われました。

博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 加藤薫
D.A.コンソーシアムホールディングス 広告技術研究室 永松範之
D.A.コンソーシアムホールディングス 広告技術研究室 原田俊

大きなpainではなく小さなfrictionをいかに解決するか

メディア環境研究所の加藤がまず言及したのは、今の若いユーザーが企業サービスを使う際、どんなストレスを感じているかについて。世の中の情報量が年々増加する中、生活者は飲食店のメニューや動画配信サービスなどでの選択肢が多すぎる状態を「つらい」と感じていたり、わざわざ店まで移動したくない、店のレジで待たされたくない、スマホで操作することすら面倒……などと感じていると紹介。

メディア環境研究所 加藤薫

スマホでの簡単な操作やレコメンドなどの意思決定サポートに慣れているため、リアルな空間で企業や社会の都合に合わせることにストレスを感じていると指摘しました。そして、「こうした傾向が一般化していくであろう今後は、大きなpainの解決というよりも小さなfriction(フリクション=摩擦・面倒)を解決するような、“frictionless”(フリクションレス)なサービス設計が、顧客と向き合う上で大切になってくるのではないでしょうか」と述べました。

ボイスUI、キャッシュレス化、スマートホーム――
フリクションレスなサービスの最前線

では、現在どんなfrictionless(以下フリクションレス)なサービスの事例があるのか。国内外の事例を分析していきます。

“frictionless”な国内外のcaseについて分析

D.A.コンソーシアムホールディングス(以下DACHD)広告技術研究室 原田俊からは、音声インターフェイス(ボイスUI)の事例を紹介。自身が体験したある飲食店チェーンのスマートスピーカーアプリを活用した注文システムを振り返り、「実際に体験してみて、僕のように正直電話注文を面倒だと感じている人や、店側にとっても、とても便利なサービスだと思います。UIや店舗側のオペレーションはまだ完璧とはいきませんが、改善されつつあります」と述べました。また、スマートスピーカーのAIアシスタント開発者へのインタビューで語られた、「包括性こそが音声インターフェイスのポテンシャル。つまり高齢者や障害者でも容易にテクノロジーを使えるようになるということだ」という指摘に、目からうろこが落ちたと述べました。

D.A.コンソーシアムホールディングス 広告技術研究室 原田俊

また加藤は、中国においては近年、流通OmO(Online Merge Offline)という言葉が表すような、オンラインとオフラインが一体化したビジネスモデルが拡大していることに触れ、中でもアリババ社の“ニューリテール戦略”では、大型店舗の開発からVR、ARを活用したショップ、無人販売、また小規模な生鮮食品店や雑貨店などのオンライン化を中国全土で着々と進めていると紹介し、オンラインの利便性とオフラインの体験価値を両立させるソリューションを追求していると述べました。

中国にある老舗書店。顔認証を通過して店内に入り、本を選び無人レジで精算をする。24時間営業。

D.A.コンソーシアムホールディングス 広告技術研究室 永松範之からは、日本におけるQRコード決済の実態について社員が行った実験を紹介。とあるモバイル送金サービスだけを使って、どれだけストレスなく生活できるかを体験してみたところ、「店員が慣れていなくて時間がかかったり、電車、タクシーなどでは対応できていないという課題はありながらも、比較的1日を快適に過ごすための対応が進んでいる印象」と言い、さらに「世代によっては口座がなくても利用できる。こうしたサービスはかなりフリクションレスと言えるだろう」と述べました。それを受けて加藤は「キャッシュレスは一見フリクションレスではあるが、そこから新しい価値を創造できるかについてはまだ現状はっきりしていない」と指摘しました。

続いて加藤はスマートホームの事例として、アメリカにあるスマートスピーカーのAIアシスタントが体験できる家を例にあげ、「AIアシスタントを基軸に家電と連携、生活のアプリケーションがいくつも紐づいており、家のOSとも言えるもの」と述べ、また、まるで執事のように、買い物代行や掃除、日用品の在庫管理などをアプリ経由で週38ドルで任せることができる家事代行サービスについても言及。「こうした住宅サービスを介することで、家にさまざまな機能がすでに取り込まれており、個別サービスのアプリをいちいち立ち上げる面倒がなくなっている」と説明しました。

これに対して「当社では、そうしたサービスの複数のプレイヤーをつなげていくことでどういう展開ができるか、すでに実証実験を始めています」と述べるのは永松範之。
これは総務省による「情報信託機能活用促進事業」として、DACHDを含めた6社が協働で現在取り組んでいるプロジェクトで、各企業が抱えるカテゴリーごとの課題やフリクションを、スマート家電やリストバンド型デバイス、データ分析によりどういったソリューション、サービスに落とし込めるか、複数サービスを横断する形で検証するというもの。
「ネット広告を専門とする当社としては、個人情報を厳守したうえで電力や健康のデータ精度を上げ、プロファイルに基づく広告配信を目指しているところ」としたうえで、「IoTデータやAI技術を使うことで、たとえば家庭の消費電力の内訳が、時間ごと家電ごとに細かくわかるようになります。どこまで可能かはわかりませんが、そうしたデータをもとにユーザーのフリクション解決のために何ができるかを考えているところです」と述べました。

D.A.コンソーシアムホールディングス 広告技術研究室 永松範之

日本人はpainに強い?これから必要なfriction解決について考える

前半のインプットセッションを終え、後半は参加者によるディスカッションタイム。前半で提示された「friction」をキーワードに、今後ユーザーとの接点をどうとらえ、そしてどう新しい価値をつくっていくのかについて、さまざまな業種にまたがって活発な意見が飛び交う場となりました。

「そもそもpainを解決するという点でいうと、日本人は比較的我慢強いのでpainをpainだと思わない傾向があるのではないか。けれども小さなfrictionは生活の至るところにあるはずで、その何100万人もが感じているfrictionを見つけることが重要なのでは」という声や、フロリダのNBAチーム、マイアミヒートを例に出し「球場に来る観客や国内外のファン含め、顧客のfrictionを細かく見て、それぞれに丁寧に対応していくことで多方面のコマースがどんどん伸びていっている。本当の意味でのユーザー目線で、顧客理解度を促進していくことが欠かせないだろう」といった声も。「frictionを解決するには、顧客との関係を断続的なものではなく継続的にとらえていく必要がある。“エンゲージメント”というよりは、細く長く、いかに“嫌じゃない”と思われるサービスであるかが問われるのでは」といった声も聞かれました。

参加者からは活発に意見が述べられました。

一方企業によっては「インナーコミュニケーション、社内でのナレッジのシェアが課題」「現場からトップに上げていく際、どういった指標を用いればいいか。大企業ほど頭を悩ませているのではないか」「frictionから考えることは、トップから見るとどうしても“小さい”と思われてしまう」といった悩みも。また「ひとつのfrictionが多部署、多階層にまたがっているケースが多くなかなか課題共有などがスムーズにいかない」といった声に対しては、加藤が「それらを統合する人、スーパープロデューサー的な人材が求められているのではないか。もしかしたら広告会社が得意とするところなのかもしれない」と応じました。

終盤では「frictionlessになっていくと、断続した顧客接点が連続していき、単発の売上機会から、連続した収益の作り方にかわっていくのでは」といった踏み込んだ意見も聞かれ、ディスカッションパートを含め、イノベーションサロンは盛況のうちに終わりました。

■イノベーションサロンvol.1を終えて…/メディア環境研究所 加藤
今回は開催にあたって、WiL(https://wilab.com/jp/)さんと森ビルさんのご協力を得て、幅広い企業の新規事業担当者にお集まりいただき、皆さんと濃いセッションが持てたことが主催側として嬉しく、あっと言う間のひとときでした。「未来のユーザーと、自社のサービスの接点をどのように捉え、どんな設計をしていくべきなのか」というテーマは、すべての企業に当てはまる問いであり、各企業の皆さんならではの視点や意見が飛び交う場は、大変刺激的でありました。今後も、こうした「中規模で濃い議論」ができる場をつくり、広告会社のシンクタンクがもっている知見を皆さんにご提供すべく活動していきたいと考えています。

プロフィール

加藤 薫
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 主席研究員

1999年博報堂入社。菓子メーカー・ゲームメーカーの担当営業を経て、2008年より現職。生活者調査、テクノロジー系カンファレンス取材、メディアビジネスプレイヤーへのヒアリングなどの活動をベースに、これから先のメディア環境についての洞察と発信を行っている。2018年4月より東京大学情報学環 非常勤講師。

永松 範之
D.A.コンソーシアムホールディングス 広告技術研究室 室長

2004年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム入社、ネット広告の効果指標調査・開発、オーディエンスターゲティングや動画広告等の広告事業開発を行う。2008年より広告技術研究室の立ち上げとともに、電子マネーを活用した広告事業開発、ソーシャルメディアやスマートデバイス等における最新テクノロジーを活用した研究開発を推進。現在はAIやIoT、AR/VR等のテクノロジーを活用したデジタルビジネスの研究開発に取り組む。専門学校「HAL」の講師、共著に「ネット広告ハンドブック」(日本能率協会マネジメントセンター刊)等。

原田 俊
D.A.コンソーシアムホールディングス 広告技術研究室

2008年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム入社。社内システムや広告配信ソリューションのインフラシステム開発・運用業務に携わった後、2012年より広告技術研究室にて国内外のアドテクノロジーおよび先端技術のマーケティングリサーチ、ビジネス企画業務に従事。また日本インタラクティブ広告協会(JIAA)やData Driven Advertising Initiative(DDAI)、情報法制研究所(JILIS)にて生活者のプライバシー保護を推進。

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