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トライブの事例について

こんにちは、SEEDATAアナリストの宮下です。
前回のコラムでは、SEEDATAマネージングディレクター岸田が、トライブの定義や、トライブから仮説を得る方法、そしてトライブドリブンイノベーションへ応用する方法などをご紹介させていただきました。

今回お話をするのは、”早育ママ”というトライブについてです。
早育ママとは、教育の中でも0から3歳くらいのかなり早い段階に早期教育をする親を指し、子どもにできるだけ早く教育的配慮を図ることで、その子の人生をより豊かなものにしようとする親たちということができます。

口コミの影響力が非常に強いママというセグメントに効率的に情報を発信するために、早育ママは重要な潜在顧客と言えます。彼女たちは、子どもに最適な教育環境を整えるために、情報収集を怠らないため、ママコミュニティのオピニオンリーダーであることも珍しくありません。そのために、買物行動やネット上の反応だけではなく、早育ママのコアなインサイトを洞察することは、事業成長の一助になるはずです。
今回はSEEDATAで調査を行なった早育ママの調査事例や、調査の活用事例についてご紹介します。

彼女たちをリサーチした理由としては、胎教が一般化したことや、最近は都内を中心に英語を使用するプリスクールが増加しているという背景があります。0~3歳頃にプリスクールに通わせることで、ネイティブな英語を話せるようにしたり、小学生レベルの算数を0~3歳の時点でできるようにしたりと、教育環境を整えている人たちが増え、早育市場が活気付いている印象がありました。
もちろん、私たちの子ども時代も塾に通ったりはしていましたが、こういったサービスやモノを活用して、学力を鍛えるという考え方がどんどん低年齢化しているという現状があります。ではこの先、未来の教育市場にはどんな変化が起こりうるのか洞察するため、早育ママたちの自宅へ伺い、インタビューを実施しました。

まず、非常に特徴的だった話として「兄弟によって通う保育施設を変えている」という発言があげられます。対象者は、子どもの一人は公立の地域の保育施設に通わせ、もう一人の子どもはプリスクールに通わせていました。我々の当初の仮説では、将来子どもが受験や職業の選択で有利になるように、学力を鍛えて環境を整えているのかと思っていましたが、実際は十把一絡げに学力を鍛えるためにプリスククールなどに通わせることがいいと思っているわけではなかったのです。
調査を進めていく中で、彼女たちは真剣に子どもと向き合い、子どもの性格や、何に興味を持っているのか判断したうえで、最適な施設やサービスを判断しようと心がけているということが分かりました。
たとえば、興味を引き出したり見出したり、環境を整えるという意味で象徴的な出来事としては「自分でモノを作る楽しさを感じてもらうために、子供にダンボールだけ置いてある部屋で遊ばせています」という母親の発言がありました。自分の子が絵を書いたり工作をするのが好きだということに気が付き、子ども部屋を創作部屋にしてかなり意識的に環境を作っていたのです。

インタビュー結果をもとに分析していくと、ある程度の学力は前提として重要ですが、それ以上に子どもの興味をいかに引き出し、見出すことができるかというところに今後ニーズがあるだろうという仮説ができました。
では、なぜ彼女たちはこのような考え方を持つようになったのか、その背景には、2020年を目途にセンター試験が廃止されることや、問いを考える力、知識を自分の中で解釈し知恵に変換して問題を解決していく能力が求められるという風に、今ニュースで騒がされてることなどがあげられます。
また、ロボットやAI技術の発展で現在ある職業がなくなるという風にもいわれる社会背景を考えると、これまでのように「テストの点数を取れることが将来の安定」を約束するものではなくなり、彼女たちはそのことを不安に思っていることが分かりました。
テストでよい点をとれることは現状の学校教育において優秀と判断されますが、今の子どもたちが成人する頃には、その点数が職業や人生の幸福度を約束するかは正直分かりません。
では、一体どんな能力を身につけさせてあげれば良いのか分からないというのが、今の子育て世帯の多くの方が持つ不安なのです。

だからこそ、早育ママたちは今の段階から興味を引き出すための環境を用意し、そのための消費に積極的であるという風に解釈することができます。
将来まで予測することはできませんが、不安だからこそ多くの環境を用意してさまざまな選択肢の中から自分の人生を後悔なく決められる子であって欲しいと思っている。これが早育ママたちから得られたコアなインサイトです。
トライブをリサーチすることで、今説明したようなインサイトや、今後どんなサービスが求められるのかというところが分かってきます。
早育ママについてはこちらの記事でも解説していますので、興味のある方はあわせて読んでいただけるとより理解が深まるかと思います。
【トライブレポート紹介13】教育系サービス開発、新規事業アイデアのヒント(早育ママ)

ここからは実際に、早育ママを用いたプロジェクトの例についてお話します。
「いろんな選択肢を用意して子どもの興味を無限に広げ、その中から自分の好きな道、歩みたい道を選んでくれることが親の理想である」というインサイトに着目し、教育事業の事業開発を行いました。
詳細にお話することはできませんが、先ほどのインサイトに基づくと、取り扱うテーマは、点数化できる能力ではなく、たとえば表現力、感受性、知的探索欲求など、あえて点数化できない能力を子どもたちに持ってもらうための事業を考えていきました。

子どもにとっての最高の教育環境というのは、塾に通わせることなのか、プリスクールに通うことなのか、習い事に注力することなのか判断がそもそも難しいからこそ、あえて点数化できない能力にフォーカスし、自分の気持ちを子ども自身が深く知り選びとるための一助になる表現力や、モノを見たとき聞いたときに自分がどう感じるかという感受性、突き詰めて知りたいと思う知的探索欲求というものをテーマとてかかげました。

プロジェクトは芸術家と協力して、どういったサービスフローを作って教えると、子どもが芸術に興味を持ち、表現力を身に着けられるのかサービスデザインを磨いていき、実証実験では実際に子どもに対してプログラムを提供しました。
教育事業において点数化できることは目標達成しやすく、結果も明確になるからこそ、親御さんが価値を感じやすいとうメリットはあると思います。しかし、あえて表現力の体得に取り組んだ結果、当初は「このサービスには本当に価値があるのか?」と心配していた親御さんたちから、サービス提供後、「最近表現することが楽しくてよく絵を描いていて、創作意欲を持てるようになりました」という嬉しい言葉をいただくことができました。

このような形でトライブリサーチを着想の基点として、彼ら彼女らがどんなサービスを求めているのかを精緻に分析していくと、顧客にとって真に価値ある体験というものをサービスに落とし込んでいくことができます。

SEEDATAでは、事業成長に貢献する定量的なデータ分析を行えるよう、定性的な分析に基づいて確度の高い仮説を構築することが重要だと考えます。データが膨大に取得できる時代だからこそ、データを読み解くマーケターの仮説は、マーケティングを進化させるため、顧客に高い価値を提供するために必要なのではないでしょうか。

今回は早育ママのトライブリサーチから導出したインサイトに基づいて事業開発をした例をお話しさせていただきました。次回は別のトライブのご紹介と活用の事例についてお話しします。

プロフィール

宮下 英大
株式会社SEEDATA
チーフアナリスト

明治大学商学部卒業
消費者行動と文化人類学を専攻。
2016年にSEEDATA参画し、通信会社、化粧品会社、飲料会社、食料品会社、自動車会社大手インフラ会社等様々なクライアントに対して、新規事業立案及び推進、新商品開発、成長戦略プランニング等の様々なプロジェクトを推進。
また、教育熱心な子育て世帯、健康意識の高いシニア、多忙なビジネスパーソンなど多分野にわたる15以上のトライブリサーチを担当。

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