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―心の声を発見する“ききだし”の技術―

たくさんのデータに囲まれて毎日をお過ごしのみなさん、こんにちは!
VoiceVisionの古賀です。

「データをひきだすファシリテーション術」、第4回目は、大学で臨床心理学を専攻し、マーケティングリサーチャーの経験で「心の声というデータのリスニング」と共に生きてきた古賀より、「心の声を発見する“ききだし”の技術」についてお話したいと思います。

本連載の初回、代表の大高より「ファシリテーション・クリエイティブ」に必要な2つのスキルには①ひきだし力と②うみだし力があること、そして、ひきだし力のうち1つ「ききだし力」は、“挙がってきた声から、より潜在的な意識を深掘りする”チカラだとご紹介しました。
では、さっそく「潜在的な意識」とは何なのかから少しずつご紹介しましょう。

潜在的な意識はどこにある?

みなさんは「ジョハリの窓」をご存知でしょうか?
「ジョハリの窓」とは、心理学者のJoseph LuftとHarry Inghamが1955年に発表した、対人関係における気づきの心理学モデルです。このモデルでは、自分に対する理解を「横軸:自分は知っている・自分は気づいていない」と「縦軸:他人は知っている・他人は気づいていない」の4つの領域…つまり4つの窓に分けて見立てます。

Ⅰ 開放の窓(自分も他人も知っている自己)
Ⅱ 盲点の窓(他人は知っているが、自分は気づいていない自己)
Ⅲ 秘密の窓(自分は知っているが、他人には見せない自己)
Ⅳ 未知の窓(自分も他人も知らない自己)

さて、いつもデータに向き合っているみなさんならお気づきかと思います。自分も他人もなかなか気づけない潜在的な意識はⅣ「未知の窓」に隠されているのです。では、どうやったら「未知の窓」を少しずつ開放できるのでしょうか。

私はそのカギは「心をオープンに共感しながらフィードバックを繰り返す対話」にあると思っています。
話し手に思ったことをポジティブに真摯にフィードバックすることでⅡ「盲点の窓」の開放領域が広がり、逆に、話し手が安心して心を開くことでⅢの「秘密の窓」の開放領域が広がります。結果としてⅣの「未知の窓」の開放領域も広がりますし、一緒になって気づいたからこそ、その気づきにまつわるチャレンジも広がります。

では、「心をオープンに共感しながらフィードバックを繰り返す対話」はどのように組み立てればいいのでしょうか。その秘訣が「心の声を発見する“ききだし”の技術」です。

「特徴的な事実」をしっかり掴む!

さらに本題に入っていきましょう。みなさんは潜在的な意識を深掘りしたい場面で相手にどんな質問をしていますか?私が質問の最初の段階で特に気をつけていることは以下です。

時間がない中でのディスカッションでは、ついまだ見えぬ答えに早く近づきたいために「理想の○とは何ですか?」と答えをズバっと尋ねたくなってしまいます。でもそこはグッとこらえてください。そう聞いて出てくる答えはすでにみんなが知っていることがほとんどです。では、何を聞けばいいかというと、まずは今の行動や事実を押さえましょう。そして、行動や事実を聞くときには「普段どうしていますか?」ではなく「最近一番の○○は?」という具体的な話にフォーカスしたほうが潜在的な意識にたどり着くヒントに繋がることが多いのでおすすめです。例えば「あなたは普段どの程度音楽を聴いていますか?」と聞くと「毎日2時間くらいかな」という答えになりますが、「最近で一番音楽が聴きたくなった瞬間はいつですか?」と聞けば、「いやぁ、先週は仕事でとても疲れるミーティングがあって…」とより深い気づきに潜り込めるきっかけが出てきやすくなります。

また、質問には「YES/NO」や「AかBか」のように択一や選択式で答えられる質問の仕方(Closed Question)と「どう思う?」「どうやって?」など相手が自由に答えられる質問の仕方(Open Question)がありますが、質問のときにはぜひ後者のOpen Questionを心がけてみてください。Closed Questionだと気づかぬうちに聞き手の仮説や思い込みに回答を誘導してしまうことがあります。それこそ最初に挙げたジョハリの窓で言うⅣ「未知の窓(自分も他人も知らない自己)」に迫るためには、話し手と聞き手の両方の思い込みや思考の枠を離れる必要があるので、まずは聞き手がそれを阻害しないことが大事です。また、質問した後に沈黙が起こる場合にはしばらくじっと我慢して話し手の言葉を待ちましょう。話し手が言葉に詰まるということは、本人が自分では気づいていないことに気づこうとしている瞬間かもしれません。このタイミングで先に聞き手が答えを提示してしまうと、せっかくの深く潜れるチャンスが失われます。一方で、沈黙がよく生まれる場合、もしかすると質問の意図がわかりづらいのかもしれません。そうならないためにも大前提として、質問は簡潔にわかりやすくすることもとても重要です。

さてさて、行動や事実をどのようにききだせばいいのか、だいぶお話が進みました。ここからは話し手と聞き手、参加者全員で一緒に”WOW”な気づきを得ていくための “ききだし”の技術について更に踏み込んでいきます。

共に気づきを生みだすためのDeepen / Relation / Extend

事実を掴むだけで安心してはいられません。ここからどうやって参加者のみなさんと共に潜在的な意識にたどり着き、次のアクションに向けて一緒に対話を進めていけるかが私たちのクリエイティブファシリテーションの腕の見せ所です。
「話を聞きながらうなずく」「相手の言っていることを復唱して共感を示す」「自分なりのよい解釈を加えてフィードバックをする」など、受け止めとフィードバックという傾聴の姿勢を通してラポール(相互の信頼関係)をより深め、互いの心の窓を開くための土台をよりよいものにするのはもちろんですが、VoiceVisionのメンバーが特にファシリテーション上で意識しているのは、以下の3方向でのききだしです。

まずはDeepen(深める)ですが、この対話が一番大事と言っても過言ではありません。
「人々は4分の1インチのドリルが欲しいのではない。4分の1インチの穴が欲しいのだ」とはハーバード大学教授のTheodore Levitt博士がその書籍「マーケティング発想法」(1968年)で述べた有名な言葉ですが、更に深く考えていくと、では、穴を空けて何をしたいのか(穴は何に使われるのか)、それが達成した先にはどんな喜びや感情が湧きあがるのか…と、話し手の本当に求めている状態を一緒に探っていくことで「未知の窓(自分も他人も知らない自己)」の開放が進み、これまで発見されていなかった心の声に対する互いの気づきが深まります。ただ、要注意なのは、「なぜ?」ばかりが繰り返される対話は質問された側にとって苦痛でもあるということです。そこで私は「Why?」の質問の仕方は、なるべくたくさんのバリエーションをもって行うようにしています。

2番目に挙げたRelation(関連づける)は、気づきを深めていく中で、関係のある多様な事実を集めて解釈を広げつつ、様々な角度から真髄に迫るときに重要になります。ある1つの事実を解釈しようとすると、人によって解釈が異なるということが多々あります。そんなときには「これも同じようなことから起こっているのでは?」という事象を他にも集めてくることで、拡散しているように見えつつも共通するピンとくる言葉(潜在的な意識)が見つかってきます。もちろんここにたどり着くにはたくさんの事実をどう「くくる」かが重要なわけですが、本連載では後日「くくる」がテーマの回も予定していますので、その話はぜひ後日を楽しみにお待ちください!

さて、最後にExtend(拡大させる)です。これは気づきをアイデアやアクションに繋げていくための準備運動でもあります。4分の1インチの穴の話を再度例えに取り上げると、もし、穴を空けてペットの猫の運動用具を取り付けたいのであれば、「それが実現したらどうなる?その結果どうなる?」は、「猫の健康維持ができ長生きすることで、長く一緒に過ごせる」ということになります。ということは、「猫が長生きして長く一緒に過ごせる」ことがそもそもの価値で、そのためのアクションやアイデアはドリルの穴以外にも広がってきます。アクションやアイデアをうみだすための技術については「くくる」同様、後日改めてお届けします。

寄りそって、たまには愛のある無茶ぶりで、データをひきだそう!

長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。少しでもみなさんがこのコラムを通して聞き手と話し手の参加者全員で心の声を発見する共創のプロセスに興味を持っていただけ、日々のお仕事などでもコツを実践いただけたら嬉しいです。

今回お伝えした「心の声を発見する“ききだし”の技術」は、対面で行うインタビューやワークショップだけでなく、WEB等を通じて集まってくるビッグデータの読み解きにおいても同じように活かしていくことができるのではないかと思っています。表層的な事実だけではなく、自分も他人も未だ知ることができていなかった深い気づきに、いかに潜り込むか。その時に大事になるのはやはり、思い込みを排除したデータへの傾聴の姿勢ですし、心をオープンにしながら仲間や自分自身でフィードバックを繰り返すデータとの対話ではないでしょうか。また、Deepen、Relation、Extendの3つの視点は、データの理解を深めたり、データ同士関連性を探るようなときにも活用できるのではないかと思います。

さて、最後に1つ私の経験談から心の声というデータのひきだし方についてとっておきのTIPSをご紹介します。

私は2013年から放課後活動としてものづくりコミュニティの運営に携わっていますが、そこで毎回50名以上のエンジニアやデザイナー、プランナーという作り手が参加するリアルなmeetup(コミュニティのイベントや集い)や1000人規模のオンラインコミュニティのファシリテーションを行ってきました。そこで気づいたのが、「実は面白い考え、面白いデータを持っている人にはシャイな人が多い」ことです。とくにこのような大人数の場では、オンラインであれオフラインであれ、特定の知り合いの人としか話さない人が多い…なんてことも多くあります。そんなときのききだしで実は重要なのが「愛のある無茶ぶり質問」。オフラインのイベントでは、マイクを持ったまま近づき肩にポンっと触れながら「○○さんは最近どんなもの作ったんですか?」と前触れもなく皆の前で聞いてみると、実は面白い話がたくさん出てきたりしますし、オンラインでも「あ、○○さんだったらご存知では?」と合いの手を入れれば嬉しそうな答えが返って来たりもします。
もちろん、愛のある無茶ぶりをする時にはラポール(信頼関係)の形成ができていることが大事だし、言葉をききだす場面ではオンラインであれオフラインであれ傾聴姿勢を大事にしてくださいね!

VoiceVisionのFacebookInstagramではファシリテーションの“ちょっとしたコツ”などを配信中!

プロフィール

古賀 由希子
(株)VoiceVision コミュニティプロデューサー / 産業カウンセラー

九州大学で発達心理学を専攻。雑貨店店長や企業向けのカウンセリング提供会社を経て、2005年より大手電機メーカーグループでマーケティングリサーチャーの活動を開始。エスノグラフィック調査、UXデザインのワークショップなど、エレキ製品を中心に新規開発や改善のための国内外のマーケティングリサーチ、インサイトの活用を手掛ける。 2014年からは新規事業を生み出すための共創ワークショップを担当し、数多くのワークショップ、アイデアソン、ハッカソン等を企画運営。
2017年に VoiceVision入社後は、企業のオープンイノベーションプロジェクトなどを手掛ける。
業務外では2013年より品川を中心とするものづくりコミュニティ「品モノラボ」の運営メンバー。

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