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博報堂DYグループの「生活者データ」、その無限の可能性:「“生活者データ・ドリブン”マーケティング」のすべて
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博報堂DYグループの「生活者データ」、その無限の可能性:「“生活者データ・ドリブン”マーケティング」のすべて

データ活用に対する企業の関心が、ますます加熱している。短期的な目標達成だけでなく、中長期的に顧客や生活者と絆をつくりながら未来に向けてさらに発展していくために、いま多くの企業がデータ活用に注目し、注力しはじめている。
博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(以下DAC)の3社は7月19日、六本木ヒルズのアカデミーヒルズにて、自社初となる“生活者データ・ドリブン”マーケティング領域に関するセミナーを開催した。クライアント企業を招待し、2会場にわたって行われたセミナーには、合わせて250名以上が参加。終日の熱気から関心の高さがうかがえた。

博報堂の水島正幸代表取締役社長の挨拶からはじまった、このセミナー。博報堂DYグループが掲げる“生活者データ・ドリブン”マーケティングの紹介、世界最大規模の消費者分析データを保有するLiveRamp(ライブランプ)からのプレゼンのほか、「生活者発想×サイエンス~博報堂DYグループ流データの解釈学」や「持続的な事業成長に必要なクリエイティビティ×システム開発」など、多岐にわたるテーマについて、計13のセッションが展開された。本稿では、それらの一部を紹介する。

(※本記事は、DIGIDAYの転載記事です。)
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「我々は企業のチャレンジとともに歩みたい」と語る水島氏

データを真に機能させる

「マーケティングのデジタル化。デジタルトランスフォーメーション。データドリブンマーケティング。こういったワードを聞かない日はない」と、冒頭の挨拶にて博報堂の水島社長は切り出した。

直近で視察した中国では、顔認証や静脈認証による決済を目の当たりにし、また学歴やSNSの発言まで加味した「信用スコア」の実用化も実感したという。これにそのままの形で日本が追随するかはわからないが、日本でも生活者の多種多様なデータ取得と活用の取り組みが進んでいる。水島氏は「我々も、独自の『生活者DMP』をもって200社以上の企業と“生活者データ・ドリブン”マーケティングの実績を積み、このほど包括的な統合マーケティング・ソリューション群『生活者DATA WORKS™』(登録商標出願中)を発表した」と紹介する。

博報堂DYグループがデータ活用においてもっとも大事にしてきたのは、データを真に「ワーク」させることだ。1981年から提唱し続けている理念「生活者発想」に基づき、現在はデータによって生活者を理解し、データをマーケティング戦略の立案から施策の実行まで、すべての段階において活かしている。「世の中が進化する限り、我々は企業のチャレンジとともに歩みたい」と、水島氏は締めくくった。

「情熱をもって新しいマーケティングの世界をつくる」と語る安藤氏

個人情報を安全に活用できる技術を確立

続いて、博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 執行役員でありエグゼクティブマーケティングディレクターの安藤元博氏が、“生活者データ・ドリブン”マーケティングの全体像を解説。特筆すべきは、独自に開発した「k-統計化&データフュージョン技術」だ。
これにより、安全性の問題から外部へ持ち出せなかった個人情報をもとに、マーケティング上では十分有効な「仮想個人」の情報を作成することで、別々に蓄積したデータベースを融合させることも可能になった。さらに現在、各プラットフォーマーやデータホルダーと協業し、データ・エクスチェンジ・プラットフォームの設立に向けて動いている。

さまざまなテクノロジーと技術によって集められた膨大なデータ基盤をまさしく「活用」して、次の一手につなげていくソリューション体系が「生活者DATA WORKS」だ。いま、施策を展開した瞬間からデータが生じている。誰が何にどのような反応を示したのか、その人は顧客になったのか、その後どうしたのか…。「これらのマーケティング的に重要なデータを、戦略に活かせなければ意味がない。『生活者DATA WORKS』では、従来の川上から川下への単純な一方通行ではなく、戦略と施策が密接に絡み合って進化したマーケティングを可能にする」と、安藤氏は語る。

博報堂DYグループが“生活者データ・ドリブン”マーケティングで目指すのは、企業のマーケティング活動の支援を通じて生活者にとっての価値を創造することだ。「これまでの実績と知見、そして情熱をもって新しいマーケティングの世界をつくることをお手伝いできれば」と結んだ。

「さらに高品質な統合マーケティングを提供したい」と語るエリス氏

ID統合でデータ基盤を充実

「生活者DMP」は、博報堂DYグループのDACが手がける国内最大級のDMP「AudienceOne(オーディエンスワン)」を基盤としている。同社はまさに本セミナーの開催日の前日、LiveRampとの連携を発表。グローバルで数々のブランドが採用しているID統合ソリューション、LiveRampを用いてオムニチャネルIDの統合を進め、AudienceOneのデータ基盤を充実させていく。

安藤氏に続く講演では、この「次期ID基盤」について、LiveRampのインターナショナルマネージングディレクターのデニス・エリス氏、そしてD.A.コンソーシアムホールディングスおよびDACの専務取締役である徳久昭彦氏が語った。LiveRampは現在550以上のパートナーと連携し、グローバルで25億の消費者分析データを保有。そのデータ基盤は世界最大とされている。

エリス氏は、92%のマーケターがIDを統合した「人」ベースのマーケティングに投資する意向だという同社の調査データを提示。「我々はスケールと正確性、スピードを強みとし、そしてセキュリティとデータ倫理を追求している。DACとのパートナーシップを通して、さらに高品質な統合マーケティングを提供することを楽しみにしている」と、抱負を話した。

一方、AudienceOneは月間4.8億ユニークブラウザと9000万のモバイルIDデータを有し、すでに1000社以上の企業に導入されている。そのうえで徳久氏は、「まだ見ぬ顧客のことをもっと知りたい」という企業のニーズに触れ、「AudienceOneとLiveRampを掛け合わせて、より鮮明に潜在顧客の顔を把握できる状態を目指す」と語った。

「より鮮明に潜在顧客の顔を把握できる状態を目指す」と語る徳久氏

社会のサイバーフィジカル化

生活者DATA WORKS、そしてデータ基盤の詳説に続いて、テーマは「データを活用した社会連携と企業連携」へ。産業技術総合研究所 人工知能技術コンソーシアム会長を務める本村陽一氏と、博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター室長の青木雅人氏が語り合った。

産業技術総合研究所は、2015年の人工知能研究センター設立と同時に人工知能技術コンソーシアムを発足、約180社の会員社が有する、シーズ/データ/ニーズをマッチングし、AI技術の社会実装を目指している。博報堂DYホールディングスもその1社としてデータプラットフォームWGのリーダーを務めており、安全かつ有用な形でデータを流通させる技術、ノウハウの開発を進めている。前述の設立準備中であるデータ・エクスチェンジ・プラットフォームも、同研究所およびコンソーシアムと連携していく。

いま、スマートフォンやさまざまなIoTデバイスをセンサーとして生成された実社会のデータが、デジタル化されたインターネット空間に流れ込む社会が出現してきており、このことを、「社会のサイバーフィジカル化」と呼んでいる。

「今後センサーデバイスが浸透し、『社会のサイバーフィジカル化』が進む」と語る本村氏

本村氏は「『社会のサイバーフィジカル化』が進むと、リアル世界でのビッグデータと、それを処理する人工知能の進化により、新たなサービス・産業創造を起こすことができる時代へ移行していくだろう」と語る。これを受けて青木氏は、「『社会のサイバーフィジカル化』が進むと、生活者の多面的なデータの取得が可能となり、取得したデータを統合することで新たなサービス開発にもつながる」とし、需要創造に向けて、データを活用した社会連携・企業連携の重要性に言及した。

「『社会のサイバーフィジカル化』は、新たなサービス開発にもつながる」と語る青木氏

「人」に関するデータこそ重要

テレビとデジタルの統合、SP、CRM、クリエイティブといった複数のセッションを経て、夕刻に設けられた最後の講演は、デジタルプラットフォーマーからそれぞれ登壇者を迎えたパネルディスカッション。「デジタルプラットフォーマーと拓く、革新的なマーケティングの地平」と題し、博報堂DYメディアパートナーズ 代表取締役社長の矢嶋弘毅氏がモデレーターとして進行し、さまざまな意見が交わされた。

プラットフォーマー各社はそれぞれ、ユーザー行動や購買に関する強力なデータを保有している。本セミナーで掲げた“生活者データ・ドリブン”マーケティングの推進にあたり、出発点になるのは「どのようなデータが自社にとって/ユーザーへの新たな価値創造にとって重要なのか」を考えることだろう。その点では、やはり「どう感じ、どう行動したのか、『人』に関するデータがもっとも重要だ」という指摘が挙がった。

また、マーケティング業界においても社会的にも大きな課題になっている、デジタル広告の信頼性・安全性もテーマのひとつに据えられた。先日、WFA(世界広告主連盟)が「グローバルメディア憲章」を発表し、アドフラウドやブランドセーフティといった問題には広告主企業、広告会社、アドテク企業、メディア、プラットフォーマーらが協力して解決すべきだとした。こうした動きも踏まえ、プラットフォーマー各社からは、個人情報の取り扱いを含めて健全なデータ活用に関する考えが述べられた。

デジタル広告の健全化に尽力

最後に矢嶋氏は、参加企業へ共有したい事柄をふたつ強調した。ひとつは、博報堂DYグループが一丸となって、この“生活者データ・ドリブン”マーケティング対応力の強化を推進していること。IoTによって、既存メディアだけでなく、モノや街、生活者自体とあらゆる要素がデジタルインフラ上でつながり、メディア化する時代になっている。こうした環境下で志向すべきは、データ、クリエイティブ、テクノロジー、そしてコンテンツを活用してメディアの広告価値を高めることだ。
既存メディア、デジタルでつながった新しいメディア、それらから無数のデータが生成される。これらのデータに加え、いままで蓄積してきた生活者データ、そして企業の保有するデータを高度に活用し、広告そしてマーケティング活動に還元していく考えだという。

もうひとつは、同様に全社を挙げて、デジタル広告そしてデータ活用の健全性の向上に努めていくことだ。前述のWFAの発表も踏まえ、デジタル広告の健全性の維持向上に広告会社として対応策を考え、各プレイヤーと協力して実践していく。

昨年までの21年間、DACの代表を務めてきた矢嶋氏は「広告活動が単なるコミュニケーションではなく、ダイナミックデータを活用したマーケティング全般の活動に役割が変化していることを実感する」と語り、データ活用とその環境の健全化に引き続き尽力すると表明した。本セミナーは来年も開催予定だ。

「デジタル広告そしてデータ活用の健全性の向上に努める」と語る矢嶋氏
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