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「全てのマーケティング活動を購買データ起点にできていますか?」と問われたら、はっきり「イエス」と答えられる人は少ないでしょう。
マーケティング活動に購買データを活用するのは当たり前のことになっていますが、現状ではメーカーと流通の間でデータが分断されており、統合したデータ活用は難しい状況です。こうした課題を解決し、購買データ起点のマーケティング改革を実現する方法について、博報堂 データドリブンマーケティング局第一グループグループマネジャー/シニアストラテジックプラニングディレクター 徳久真也が、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムの3社主催で行った“生活者データ・ドリブン”マーケティング領域に関するセミナーで語りました。

全てのマーケティング活動を“購買データ起点”に変えて成果を生み出す方法

私は2005年の入社以来、一貫してマーケティング畑におり、主に一般消費財や流通企業の支援をさせていただいております。これまで多くの購買データに親しんできました。

この講演の要旨は「購買データ起点で、新しいマーケティングサイクルを作っていきませんか」ということになります。皆さんは、「全てのマーケティング活動を購買データ起点にできていますか」と問われたら、どうお答えになりますか。購買データを一切見ていないという人はいないと思いますが、全てのマーケティング活動を購買データ起点で行っていると自信を持って言える方は少ないのではないでしょうか。

全てのマーケティング活動を購買データ起点で行うのが難しい理由は、データの所在にあります。企業の最終KGIである売上データのほとんどはオフラインデータのままで、かつ、スーパーマーケットやドラッグストア、コンビニといった流通側にあります。このためメーカーがマーケティングプランニングで「22〜39歳、女性・子持ちママ、情報感度がかなり高い、化粧品ブランドAのロイヤルユーザー」といった具体的なターゲット分析をすることができても、実際の特にオンラインメディア上でのエグゼキューションは「F1の化粧品関心層」といった大枠になりがちです。いわゆる、戦略と施策の分断問題です。

この課題を解決するために我々が提唱しているのが、「オフラインの購買データとオンラインのWeb閲覧データを統計的に結合すること」です。これによりマーケティングプランニングとエグゼキューションを切れ目なく統合できるようになります。

購買アクチュアルデータの量と質が「POS-AD」の強み

利用するのは「POS-AD」というソリューションです。POS-ADは博報堂DYメディアパートナーズとデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)が共同開発し、2016年から提供しています。

POS-ADで実現できることを具体的にお話します。博報堂DYグループが「Audience-One」というDMPで持っている生活者のWeb閲覧履歴データと、外部の購買データホルダーが持つオフラインのID-POSデータなど、様々な購買アクチュアルデータを組み合わせます。
流れとしては、購買アクチュアルデータから「マーケティング上、狙いたいターゲット」を設定し、次に「購買特性と似たWeb上の閲覧傾向を持つ人」を統計的に推定します。そして、狙いたいターゲットの特性を保持して、幅広いデジタルメディアに広告配信をしています。

何故外部にあるオフラインの購買アクチュアルデータの利用が可能かというと、それには博報堂DYグループが持つ2つの特許技術が関係しています。1つは「k-統計化&データフュージョン技術」です。まず、k-統計化ツールを用いることで購買特性の近い複数人から一人の仮想個人のデータを生成したうえ、個人情報を安全に保護したうえで、データホルダーから購買データを拠出してもらいます。

そのうえで、「データフュージョン」を行います。先ほどのk-統計化をした仮想個人のデータや、Audience-OneのWeb閲覧履歴データを統計的に統合し、マーケティングで活用できる状態にします。オフラインデータのオンボーディング(オンライン化)処理を施します。これによって例えば、「シャンプーとコンディショナーの両方を買っている人にアプローチしたい」という場合に、実際の購買履歴に基づいたターゲティングを行うことで、デジタル上で「シャンプーとコンディショナーを両方買っている可能性が高いセグメント」に向けて広告配信をする、といったことが可能になります。

POS-ADは、極めて効果の高いマーケティング施策の実行が可能な一方で、k-統計化などの手法を使うことで情報漏洩の心配がありません。法的な問題もクリアしており、情報法制研究所でも「適法かつ有効な例」としてPOS-ADをご紹介いただいております。

昨今、様々な購買データの利用をうたうものがありますが、「大規模な購買アクチュアルデータ」という「量」の部分と、購買データの「代表性の担保」という「質」の両方に対応しているのはPOS-ADだけだと自負しています。

POS-ADは消費材メーカーや流通・外食チェーンなどで多くご利用いただいており、通信・金融・自動車業界でもご利用いただいております。サービス開始以降、27社60超の案件に導入実績があります。リピートで利用していただくケースが非常に多いのも特徴です。

優良顧客の積み上げを実現 -ロングセラー商品のマーケティング改革-

では、POS-ADを使ってどのようにマーケティングプロセスを改革するのか、その事例をご紹介します。実際の事例に基づいてはいますが、具体的な商品名などを公開できないため、内容も一部をデフォルメしております。

あるヨーグルトのブランドはロングセラー商品でしたが、ある課題を抱えていました。それは、優良顧客の週出入が多く、その数が横ばいで積み上がらないというものでした。ダイエット効果が売りでしたが、生活者は効果を感じなくなったり、飽きてきたりすると一定期間後に離れてしまっていました。

メーカーはヨーグルトの機能性に強い誇りを持っていたため、マーケティングコミュニケーションも商品の効果効能(USP)を中心にしていました。しかし相談を受けた当社としては、優良顧客が積み上がっていない現状から「物起点から、人起点にシフトするべきなのではないか」と考え、調査を始めました。

調査により分かったのが、月10個以上購入するヘビーユーザーと月5個以上購入するミドルユーザーが、売り上げの6割以上を占めているということでした。

この方たちのことを深く知ろうとPOS-ADのマーケティング分析支援メニューである「POS-AD for insigth」を活用したところ、ヘビー層については「40〜50代の男性で、まだまだ若さを保ちたいけれど体が変化している。同時に購入しているのは加齢臭対策グッズであり、健康のためではなく、体重を減らしてモテたいと考えている」といった特徴が見えてきました。いわゆる“モテ”たいニーズを強く持つ中年層でした。一方、ミドル層についてはプロファイルが異なり「男女問わず健康に関心が強く、いろいろな健康法や健康食品に手を出している。効果が実感できないと新しい手法・商品に移る」ということが分かりました。

こうして見出したインサイトを元に訴求メッセージを変える提案を行いました。メーカーは機能性訴求にこだわっていたため当初は折り合いがつかないこともありましたが、最終的にはPOS-ADで得られたインサイトを基に機能訴求ではなく、「モテ」などのエンドベネフィット訴求を中心に据え、メッセージ内容も複数パターンを試すことになりました。

以前は「CM放映後4週目問題」と呼んでいた悩みがあり、3週目までは購入者が歩留まるものの、4週目以降は離れてしまうという問題です。これを防ぐためテレビCM放映の狭間になっている期間は、ヘビー・ミドルユーザーとのコミュニケーションをデジタルで行い需要を下支えすることにしました。またテレビ出稿の時間についても、ヘビーユーザーがどの時間帯にテレビを見ているかをヒートマップで表示し、それに合わせて出稿時間を決める方針に切り替えました。

オフラインの店頭プロモーションは、「加齢臭対策グッズを買っている潜在顧客層にトライアルクーポンを渡す」など、優良顧客に近しい人を対象に行いました。
こうしたマーケティング活動の結果、長い間横ばいだった優良顧客の積み上げに成功しました。

一般消費財メーカーでも“擬似CRM”が可能に

全てのマーケティング活動を購買データ起点にすることで見えてきたものが3つあります。まず1つ目は、「マーケティングの解像度」が向上することです。ターゲットのリアルな姿が見えてきますし、単なるプロファイリングやインサイト発掘に利用する打でなく、試作開発や配信、効果検証などのプロセス全体の解像度も上がります。

2つ目は、“疑似CRM”の構築が可能になることです。冒頭に申し上げたように購買データを直接保有しにくい環境にあり効果的なCRM実施が難しいと言われてきた一般消費財メーカーでも、ターゲットを区切って「箱庭」のような形を作り、そこに向けてアプローチをすることで、「クリエイティブをどうするか」の検証など、擬似的なCRMを回すことができます。ポイントは、戦略構築や分析の局面ではデータフュージョンなどの統計的な推計を行って解像度を上げたとしても、効果測定の部分はたとえ数が少なくても推計ではなく、直接配信(直当て)を行ってPDCAを回すことです。

3つ目は「マーケティングの通年化」が可能になることです。購買データを中心においてマーケティングのPDCAを回すようになると、単発のキャンペーンではなく、1年365日を通してマーケティングの実施・可視化・改善ができるようになります。

今後より多くの方と「マーケティングの通年化」や「疑似CRM」などの取り組みでご一緒していければと考えております。今日の事例などを参考にお考えいただけますと幸いです。

プロフィール

徳久 真也(とくひさ しんや)
博報堂 データドリブンマーケティング局第一グループ
グループマネジャー/シニアストラテジックプラニングディレクター

2005年博報堂入社。流通・通信・飲料・食品・自動車・電気機器メーカー等、50社を超える幅広い得意先のマーケティング/事業戦略立案、統合コミュニケーション戦略立案、ブランディング、商品開発、キャンペーン開発業務等に従事。 2017年より現職。データを活用したマーケティング×メディア×クリエイティブ×ビジネスデザインの融合を目指し、新規事業開発に従事。

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