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行動観察などにより生活者の隠れた欲求を発見する手法、エスノグラフィ。これをデジタルデータを活用して行おうというのが今回の「デジノグラフィ」の試みです。デジタルデータを獲得率向上に活用するだけではなく、その深層意識(インサイト)の探索に活用して、より大きな視点で生活者の欲求に応えるマーケティングに活用する可能性を探ります。

博報堂生活総合研究所の酒井崇匡上席研究員が、Q&Aサイト『OKWAVE』を運営するオウケイウェイヴ研究開発本部の齊藤学シニアエンジニアと一緒に掘り下げるのは、『OKWAVE』恋愛カテゴリーに寄せられた恋の悩みです。恋愛は対面の調査では最も生活者の本音が明らかにしにくいテーマの一つ。匿名性の担保されたWeb空間上に存在する生活者の声から、深層意識を探求していきます。
第1回は20代に見られる恋の悩みの男女差について掘り下げましたが、第2回では40代男女の恋について見ていきます。

40代は回答者になることも多い世代

酒井
我々と年代が近いというのもありますが、40代という大人の男女の恋の悩みも気になりますね。どんなインサイトや欲求が隠れているんでしょうか。前提として、40代が質問投稿者に占める比率ってどのくらいなんでしょうか。

齊藤
今回分析した40代男女の質問投稿数は約8000件で、これはOKWAVEの恋愛カテゴリー全体の約1割程度ですね。実は40代は恋愛カテゴリーでは質問者というより回答者として投稿される方が多いんです。

酒井
そうなんですか。質問者としては20代の女性が最も多いんですよね。

齊藤
はい。そのため、20代女子の悩みに30~40代の男性が回答するというのは最も典型的なパターンです。一方で、この世代の質問内容はかなり身につまされるものも多くてですね……。

酒井
20代の時と同様に、質問文中の頻出ワードについて、男女それぞれにどのようなワードが特徴的に出てくるのか見てみましょう。

容姿の悩みは男性の方が根深い

酒井
30代アラフォーの我々としては、すごく身につまされるものがありますね……。男性のみに出てくるワードは上位のほとんどが「外見の悩み」です。

齊藤
具体的な質問内容で言えば、たとえば「ハゲはダメか」という見た目のこと、他には「彼女ができない容姿とは?」「髪型や清潔感、ファッションに気をつけているけど彼女ができないのはなぜ?」といった質問ですね。
20代男性でも、「イケメン」というワードは男性のみに頻出していました。逆に女性では自分の容姿に関してのワードは上位にあがってきませんでしたね。容姿を気にするのは実は女性よりも男性なのでしょう。

酒井
2つ仮説があって、40代になると容姿の悩みが年齢とともに新たに出てくるということでしょうか。それとも、もともとあった容姿の悩みが更に深くなるということでしょうか。

齊藤
質問を見てみると、40代の未婚男性は、「恋人ができない原因はこの容姿しかないんじゃないのか」というふうに思ってしまうことが多いようです。20~30代で仕事にうち込んで、趣味も頑張ってみたけどダメだったとすれば、最後は容姿を考えてしまうのかもしれない。

酒井
齊藤さんも先程仰ったように、女性では20代も40代も容姿についての悩みはほとんど出てこないですよね。今回、齊藤さんには頻出ワードを各年代の男女それぞれで1,000ほど抽出して頂きました。その中にも、女性の方では例えば「美人」とか「ブサイク」、「容姿」というようなワードは含まれていませんでしたね。どうも女性はこと恋愛に限っていえば、男性のように「美人じゃないと」とか、「容姿のせいで」とは、あまり悩まないようです。女性にとって外見はお化粧とかであまりにも日常的に気にするものになっているから、あえてQ&Aサイトに悩みを書き込まないってこともあるかもしれない。結構、同性内の評価の方が厳しかったりもしますし。いずれにしても、男性の方が質問文の中に最初から諦めが入っている傾向があって、やや卑屈なのは気にかかります。

「何故」という疑問をぶつける40代男たち

酒井
「何故」というキーワードも男性に偏って出現していますね。

齊藤
「なぜ結婚できたの」とかですね。既婚者になぜあなたは結婚できたかを聞きたい、と。あるいは「なぜ異性と全く出会えないのか」という質問もあります。「もうこの国では恋愛困難ではないのか?」とか。

酒井
なるほど。こういうn=1、一人ひとりの声をマクロデータで検証するのも重要です。厚生労働省の人口動態調査や出生動向基本調査から推計すると、恋愛結婚の数は70年代からそれほど変わっていないのですよね。実は見合い結婚や職場結婚が大きく減少した分、未婚化が進んでるところが大きい。そもそも恋愛結婚する人はどの時代も一定で、そこに入らなかった人が未婚化しているという。だからこそ婚活サービスには社会的な意味もあるのでしょう。

齊藤
一方で、「なぜ不細工な男と付き合ってしまうのか」という質問もありますね。回答として「不細工は浮気の心配がない」という意見も出ています。

横で聞いていた博報堂スタッフ(女性)
そんなことないですよね!?不細工、ナメちゃいけないですよ。浮気しますよ!

齊藤・酒井
そうなんだ……。

複雑な事情が増える40代女性

酒井
40代女性も見てみましょう。女性に偏って頻出しているものの中に、「遠距離」、「連絡」、「待つ」というワードが出てきていますね。

齊藤
「婚活で遠距離はむずかしい?」とか。「最初からそんなリスキーな結婚や恋愛するならほかを探すべき?」とか。「連絡を待ってしまうのは未練がある証拠ですか?」とか。

酒井
連絡と未練がセットなんですね。20代女性の分析でも元の恋人との復縁に関する悩みは男性より女性に多いという傾向がありましたが、共通するところがあります。

齊藤
「忙しくて会えないという彼から連絡を待ってる状態なんだけど、これはどうしたらいいのか」というのも。どこか依存してしまうような側面はあるのかもしれません。

酒井
40代になると「待つ」ことが多くなるのか。あるいは、不倫のような事情が増えたり、考えるべきことが増えたりしているのでしょうか。

齊藤
不倫は悩み相談として多いですね。女性の固有ワードの1位が「奥さん」ですから。

酒井
そういえば、「30代」というのも女性に偏って頻出していますね。30代に比べてどうだ、と30代の頃の自分自身と比べてしまうのでしょうか。

齊藤
あるいは、40代の方が、30代の同僚が気になるとかですね。

酒井
なるほど、歳下への恋というのが現れるんですね。

齊藤
30代独身男性に聞きたい、という歳下への恋。その心情を知りたいと。

酒井
いずれにしても、女性の相談の方が次のアクションにつながりやすい相談が多い印象を受けますね。男性の方が悶々としている。

かつての婚姻関係を気にする様子も

酒井
女性に偏って出現するワードとして「バツイチ」も出てきていますね。

齊藤
世の中の時流にあっていると思うのですが「婚活中の人が、バツイチであることをメールなどで最初に聞いてもいいのか、会ってからのがいいのか」と。あるいは「バツイチ子持ちで、という人と恋愛を進めていいか」という。

酒井
男性よりも女性の方が相手のバツイチで悩むのが興味深いですね。厚生労働省の人口動態統計年報の再婚に関する統計によると、「男性が再婚で女性が初婚」というパターンのほうが「男性が初婚で女性が再婚」というパターンより多いんです。そういう意味で、女性のほうが相手の離婚歴を気にする機会が多いのかもしれませんね。

齊藤
まさにその質問ありますね。「バツイチ男性に質問ですが、離婚して新しく彼女ができたら元妻と比較していますか」とか。

酒井
個人的な経験から言えば、比較なんて全くしないですけどね!ただ、異性にこういう質問をリアルな場でするのは気が引けるというのはよく分かります。そういう意味でも、匿名性があって様々な境遇の方が利用しているQ&Aサイトは、リアルで表出しえない生活者の悩みが溢れているということでしょう。デジノグラフィの対象として、やはり深掘りのし甲斐がありますね。恋愛だけでなく、他のテーマでもそれは共通しているはずです。
さて、次回は最後ですが、60代男女について見ていきましょう。60代がどんな恋の悩みを抱えているのか、また今回の一連の分析からデジノグラフィが持つ今後の可能性について考えてみたいと思います。

プロフィール

酒井 崇匡(さかい・ただまさ)

2005年博報堂入社。マーケティングプラナーとして諸分野でのブランディング、商品開発、コミュニケーションプラニングに従事。 2012年より博報堂生活総合研究所に所属し、日本およびアジア圏における生活者のライフスタイル、価値観変化を研究。 専門分野はバイタルデータや遺伝情報など生体情報の可視化が生活者に与える変化の研究。 著書に『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)。

齊藤 学(さいとう・まなぶ)
オウケイウェイヴ研究開発本部 シニアエンジニア

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