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デジタル×アナログが必須の時代のマーケティング術1.広告という枠を外せ
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デジタル×アナログが必須の時代のマーケティング術1.広告という枠を外せ

近年、多くの企業ではデジタルトランスフォーメーションを加速させるため、DMP 等の新たなマーケティングツールの活用が進んできています。博報堂でもこれらを活用したマーケティングの次世代化を推進していますが、その際に改めてデジタル領域とアナログ領域との融合が重要なテーマになってきています。
オンライン・オフラインといった媒体間の話だけではなく、データへの向き合い方から、マーケティングプランニングの方法論まで及ぶ問題意識を共有する博報堂のストラテジックプラナーの堀内 悠、大崎 涼介、岡本 桜、博報堂研究開発局研究員の道堂 本丸の4人が、「デジタル×アナログ」の重要性について語り合いました。

堀内

入社13年目、博報堂データドリブンマーケティング局の堀内です。データドリブンマーケティング局では、さまざまなデータを活用したマーケティング戦略の立案やその前提となるマーケティング基盤の構築を主に行っています。
特徴的なのは、狭義のデジタル領域のマーケティングだけではなく、従来型のマス媒体や施策を含めた、全体最適でのマーケティングの戦略立案を行っているということです。
今日ここに集ったメンバーは博報堂社内の部門横断プロジェクトに参加しています。このプロジェクトでは、生活者を把握するための“生活者DMP”という博報堂DYグループ独自のデータの中から、特定のカテゴリーを分析するために必要なデータを限定し、各カテゴリーに特化したマーケティングやアウトプットを取り組みです。
参加者は様々な部門から集っているので、それぞれが自動車や一般消費財、エンタメコンテンツ、スマホゲームなど様々な業種のクライアントを担当しています。ただ皆の問題意識は共通しているところがあって、「デジタル広告をやる場合でも、テレビCMなどのマスマーケティング領域との掛け合わせが重要なのではないか」、という話によくなります。今日はその辺りについて話せたらと思っています。

大崎

入社6年目、データドリブンマーケティング局の大崎です。局の名前的にも、社内でも一部からは「ビッグデータをどう使うかを考えるのでしょ?」「Web配信がアウトプットの中心なのでしょ?」と思われていることもあります。クライアントからもそういった形でお声掛けいただくこともあります。ただ、データ活用はあくまで手段であり目的ではありません。我々の仕事の流れも、まずマーケティングの目的があった上でそれにふさわしいテクノロジーを使う、といった流れで進めています。
しかし、クライアントでお話を聞くと、データを活用する、という手段が先に来てしまっているケースもまだ多く、その分凄く期待されているのだなと感じています。

岡本

入社3年目、博報堂第二プラニング局所属の岡本です。クライアントには、テレビCMなど従来型のマスメディアを中心に、様々なマーケティングの提案をしています。デジタル広告はテレビCMなどと違って皆で一斉に見るものではないし、幅広くキャンペーンを到達させることには向いていない面もあり、得意先の一般消費財の仕事でデジタルをどのように活用するかというのは難しく、いつも悩んでいます。

道堂

博報堂研究開発局、入社4年目の道堂です。仕事の内容は、データドリブンマーケティングに必要な武器を作ることです。入社前は広告会社に研究開発なんて部署があることを知らず、配属されて驚きました。
他部署からは「プログラム書いてばかりいるんでしょ」と思われていたりもしますが、実際は技術だけでなく、それを使って実現出来る仕組みづくりまで含めて考えています。そのため、研究開発局には広告の現場経験が長い人や、システム会社からくる人など、様々な経歴の社員が集っています。

データを使うにはアナログの経験が要る

堀内

4人でよく話すのは、「データドリブンマーケティングが、従来型のアナログなマーケティングとは別だ、というのはもったいないよね」ということなんです。デジタルだけ、アナログだけで考えるのではなく、従来のアナログ的なやり方にデジタルでフィードバックして掛け算すること、またその逆も大事だと思っています。
DMPやMAなどツールを適切に使うためには、アナログ領域での経験が確実に重要です。言い方を変えると、そうしたノウハウを持ち合わせていないと、「デジタルツールをとりあえず入れてみたものの、さてこれからどうしよう。」という状態になりがちです。
クライアントの方にとってもアナログとデジタルの垣根は問題になってきています。データドリブンマーケティングを提案する場合、クライアントの担当部署はデジタルの専業部署の場合が多いです。そういった部署の場合、採用も他の部署とは分かれていたりします。そうするとクライアントでの組織間の分断が大きく、アナログとデジタルの融合も難しくなりがちです。

大崎

私は以前、よりアナログ的なコミュニケーション企画を立案する部署にいました。両方を経験した立場からも、やはり両者の融合は効果が大きいだろうなと感じています。例えば、以前は「都心に住んでいて、通勤に何時間かかり、家族が何人で、趣味はこうで」といったターゲットのペルソナを作ったりしていました。これはメッセージ開発等には使えるんですが、いざMediaプラニングをしようと思うと「あれ、こんな人にメッセージを届けるにはどうすればいいんだっけ?」となることも多く、調査などから優れたペルソナが出来ても、それを活用し切れていなかったんです。
それがデジタルデータを活用すると、具体的な数字でこんな人がどこにいる、ということが分かりましたし、精緻に分類して狙った人にメッセージを届けられるようにもなりました。しかしその一方で、「このブランドのマーケティング全体を考えると、この人たちにどのようなメッセージを伝えればいいんだっけ?」ということはデジタルデータだけでは決めきることはできません。従来のプラニング手法も駆使したインサイトの洞察なども重要であったりします。
アナログとデジタルは、両方を使うことによってお互いに足りないところを補い合い、理想のマーケティングを実現できるものだと感じます。

道堂

MAツールなどのマーケティングツールがインフラのように当たり前に導入されるようになり、入れてはみたもののその使い方に迷った企業の方からの「どう使っていいか分からないから一緒に考えて欲しい」という相談が我々のような総合広告会社にくるようになったのが、非常に象徴的だと思います。デジタルマーケティングの専業会社やシステム開発会社に相談するのではなく、博報堂に聞いてみようという流れはアナログのマーケティングの知見もあるが故だと感じています。ツールの導入時に我々が全く関わっていない案件でも、その活用法についてご相談いただくことが増えていますね。

堀内

目の前にビッグデータがあったときに、とりあえずそれを扱える仕組みを作ることから始めるのではなく、「マーケティング上の課題は何で、データでこういうことを解決できそう」という仮説を先に持つことが重要ですよね。我々もユーザーインタビューをしているときなどは、「先に仮説を持て」というのはあたりまえで、それと同じなんですよね。
データドリブンとか、統合マーケティングを考える時も、やはり“仮説思考”がとても重要だと思います。そうでないと大量のデータに溺れることになってしまって、せっかくのビッグデータの価値も活かせない。逆に、デジタル×アナログを組み合わせられれば、今まで以上にできることが無限大に広がるはずです。

岡本

クライアントで、「データがあるから使ってみてほしい」とか、「試しに分析してみて」というお話をいただくことがあります。仮説や方向性がないと、どのデータを使ってどのデータを使わないようにするかを決めるのにもとても時間がかかってしまいます。

大崎

データというと無味乾燥な感じがしますが、今まで以上に仮説が大事だと感じます。クライアントの方の「自分のカンでは何となくこういう傾向がある感じがする」といったお話や自分自身の仮説を基に、それを実証するのに必要なデータを選んで結果を出す、という流れがうまくいきやすいですし、それ以上の拡張性も見えてきます。

広告という枠を外すと見えてくるものがある

堀内

我々の仕事はマス広告や、オンライン広告の設計がメインだと思われがちですが、これまで話したデジタル×アナログの可能性は広告だけに留まることではないと思うんです。PR戦略や、ユーザーの育成戦略店頭での販促戦略や、オウンドメディア戦略など企業の情報戦略全般に関わることだと思います。つまり我々には、マーケティング活動ひとつひとつに関わるチャンスがある。広告という枠を外すと見えてくるものがあると感じています。
例えば「カスタマージャーニー」という言い方があります。CMを見て、ニュースなんかを見るようになって、それをきっかけにWebサイトに訪れ、その会社が主催するイベントにいって、ポイントシステムの会員になってもらって、といった流れを指しています。我々も、このカスタマージャーニーの流れ全体に関わり、マーケティング活動全体にコミットするといったことができるようになってきています。

大崎

以前はデータで何か分析したら、その結果をクリエイティブの担当者に渡し、縦割りで業務が進んでしまうということもありました。しかし最近では、デジタルなデータを使って、さらにアナログな手法にコミットを深めることで、より全体を俯瞰して取り組むことが当たり前になってきています。

道堂

仕事のやり方が変わって来ましたね。研究開発局でも、社内外の全然違った業種、例えばメディアやクリエイティブの人達とより関わるようになりました。
また、特に我々のようなデータを専門的に扱う立場では、分析のために手を動かすことばかりではなく、データやテクノロジーへの知見を違う立場の人に会話で分かりやすく伝える力が大事になっていると思います。

堀内

今の状況は若い人達にもチャンスが大きいと思うんです。従来のマス広告中心のアナログ型の業務の場合、すでにある程度方法論も確立していることからベテラン社員が責任者になることが多くて、若い人はその過程に部分的にしか関われないということも多い。今は、デジタルという新しい舞台だけでなく、カスタマージャーニー全体という幅広い舞台でも、チャンスが広がっています。

岡本

それはすごく感じます。マス広告だけじゃなくてデジタルも活用したマーケティング戦略でのご相談となると、新しいWebメディアの活用まで含めた統合的な戦略提案が求められるようになります。そういった案件では特に最後まで中心的に関わることが求められますし、より貢献できているな、と感じますね。

大崎

自分の中でいい調査が出来た、データに基づいた優れた戦略が立てられた、となっても、それをクリエイティブチームにただ伝えるだけだと「それで?」となってしまう。今であれば、最終的なアウトプットに向かって、自分自身もデータの裏付けのもとでコンテンツを企画したり、メディアの戦略を立ててということが重要になってきています。

堀内

「何らか新しいメディアを作って自分達で情報発信したいんだけど」、といった案件も増えてますよね。テレビCMは潜在層にアプローチするし、既存のWebサイトなどは顕在層にアプローチするけど、デジタルで“潜在層”に直接アプローチしたい、と考える企業が増えている。
最近、外部のメディアの方にマーケティングやターゲティングの視点を持ちこんだ提案をしたらとても喜んでいただきました。例えば新聞社さんには記者の方が沢山いらっしゃるので、コンテンツは作れる。その状況を考えて、「こういうターゲットを設定した記事を増やしていけば、新しい読者層を呼び込めて、広告を出したいクライアントさんも増えるはずです」といった提案をしました。
Webメディアについて面白いと思っていることがあって、専門メディアの場合はそのカテゴリーのプロの方が多く在籍しています。そういった専門メディアと協力できればマーケティングの武器になるんじゃないかと思っています。例えば自動車メディアの方は、自動車メーカー各社の経営層やジャーナリストなどいろいろな人と付き合いがあるので、各メーカーの方には得られない業界全体の情報を持っていたりする。そういったデータや情報をマーケティングに生かせば、新しい取り組みが出来ると感じます。

デジタル×アナログでクライアントの組織も変わる

大崎

クライアントのデジタル部門の方が「現状だと出来ることが限られている。これ以上何をしよう?」と迷っているケースがよくあります。クライアントの担当領域を超えた提案もしています。クライアントの縦割り組織が、ビジネスの状況に合わせて徐々に変わって来ているのも感じるので、そういう提案が受け入れてもらいやすくなっていますね。

堀内

そういった閉塞感を打ち破るためにも、クリエイティブの人とマス広告だけでなく、デジタルのコンテンツも作っていきたいですね。動画コンテンツや読み物コンテンツ、新しいカスタマージャーニーの設計なんかをこれまでマス広告をやってきた人がやると面白くなると思います。クライアントのマーケティング部門のトップにデジタル部門出身の方が就くといったケースも増えて来ていますし、多くの企業で変化が起きつつあると感じます。

道堂

研究開発局も、以前はデータホルダーやシステム開発会社との関わりが多く、クリエイティブと関わることは少なかったようですが、僕の入社したくらいのタイミングから変わり始めたと言われます。クリエイティブまで分かる人がテクノロジーを考えることの重要性に皆が気づいて来ています。そうやって作ったテクノロジーは、そうでないものとは大きく差が出ていると思います。

堀内

今まで僕たちがやってきたやり方を、一旦壊さないといけないのかなと強く感じますね。広告というと一つひとつのキャンペーンを単発で考えがちです。それがWebメディアだと常時接続するから、長いスパンで効果を考える。でも二つはそんなに違うものではないはずなんです。
例えば新聞社さんとの仕事、っていうと紙面への出稿だけを考えてしまいがちだけど、新聞社さんは膨大なアクセスがあるWebメディアを持っているし、大きな主催イベントも無数にあり、人や組織との関係値も豊富。いろいろなルートでのアプローチや繋がり方が考えられるし、広告という枠を外して新聞社さんを見ると、大きな可能性が広がる。既存の枠組みや考え方を超えて、デジタルとアナログをごちゃまぜにしながら、マーケティング全体を見直すことは、これからとても重要な視点になると感じています。

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  • 博報堂 データドリブンマーケティング局
    京都生まれ京都育ち。2006年博報堂入社。入社以来、一貫してマーケティング領域を担当。
    事業戦略、ブランド戦略、CRM、商品開発など、マーケティング領域全般の戦略立案から企画プロデュースまで、様々な手口で市場成果を上げ続ける。
    近年は、新規事業の成長戦略策定やデータドリブンマーケティングの経験を活かし、自社事業立上げやマーケティングソリューション開発など、広告代理店の枠を拡張する業務がメインに。
    ※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。
  • 博報堂 データドリブンマーケティング局 第二グループ ストラテジックプラナー
    2013年博報堂に入社。“アナログ”な手法でインサイトワーキングなどを中心としたマーケティング支援に従事。2016年からは現職の“デジタル”を活用したデータマーケティング業務を主に担当。
    アナログ×デジタルを融合したマーケティングで得意先のビジネス成長をサポートすることが使命。
  • 博報堂 研究開発局 兼 博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター
    2015年博報堂入社。初任で現職に。統計解析を活用したマーケティングツールの開発やHDYオリジナル調査の企画・分析業務、ARやVRなどのテクノロジーを活用した次世代顧客接点の研究開発などに携わる。
    コンテンツビジネスの専門家集団「コンテンツビジネスラボ」のメンバーとしても社外でのセミナーや講演会など活動中。担当は音楽と競馬。社内のクリエイティブユニット「VOID SETUP()」としても活動を行う。
    ※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。
  • 博報堂 第二プラニング局
    2016年博報堂入社。マーケティング職として、飲料、トイレタリー、アパレルなどの商品開発やコミュニケーション戦略立案業務に従事。
    ゲームや映画、など、エンタメ領域のデータを活用したコミュニケーション戦略やコンテンツ開発などに興味があり、勉強中。趣味は生モノ(舞台・ライブ)鑑賞。