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【講演レポート】“生活者発想”でのAI活用について-AI FORUM 2018

朝日新聞社が主催する社会実装フェーズにある人工知能を中心としたテクノロジーの可能性について考えるイベント「朝日新聞DIALOG AI FORUM」が、2018年5月20日~24日まで、東京ミッドタウン日比谷「BASE Q」にて開催されました。
2日目の5月21日、「生活者発想でのAI活用について」をテーマに博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター室長、兼 AIビジネス・クリエイションセンター センター長の青木雅人と、NTTデータ ライフデジタル事業部 事業部長の林田敏之氏による対談が行われました。

(左)マーケティング・テクノロジー・センター室長 兼 AIビジネス・クリエイションセンター センター長 青木雅人、(右)NTTデータ ライフデジタル事業部 事業部長 林田敏之氏

今回のテーマである「AI」について、青木は自身の業務紹介として、マーケティング・テクノロジー・センターとAIビジネス・クリエイションセンターという2つの大きな仕事があることを挙げ、「ビッグデータとAIの仕事を両輪として機能させていくことが重要。両方の仕事を連動させていることも含め、それに関する問題意識について話していきたい」と話し、林田氏は「大企業の仕事は高度経済成長期の成功体験を軸に成り立っているが、AIを含めてテクノロジーの進化によって変えていく時期。オープンイノベーションによる大企業改革が必要」と語りました。

■AIで需要創造は可能か? 
―AI活用、一巡目の課題はデータ連携

まず、青木と林田氏それぞれが感じるAI活用の問題意識について語っていきます。
青木は「AIはどうしても技能的な側面の話になりがちだが、データが揃わないとうまく機能しないという問題意識を持っている。そこで日本におけるデータの利活用はどこまで進んでいるのか?という点に着目したい」と話します。政府が策定している「Society5.0」(科学技術基本計画)と経済産業省のレポートで登場する「Connected Industries」という2つのキーワードを挙げると、レポートにも登場する言葉を引用しながら、「様々な企業、人、機関、データなどがつながり、AIなどによって新たな付加価値を創出していくためには“Connected Industries”が必要となってくる」と解説しました。

最近はプラットフォーマーとプラットフォーマーが連携したり、ブロックチェーン技術を使いデータのトレサビリティー技術を確立することで、安心してデータを利用できるなどといったニュースがいくつか出てきていることを挙げると、林田氏からはNTTグループの取り組みとして、今年1月より札幌市のデータと民間データをかけ合わせた実証実験に取り組みについて紹介がありました。
「実証実験から本格的なビジネスにつながらないことがいまは多く、データ連携をさせたい声も多くあるものの、個人情報保護やプライバシー問題の影響もあり、ビジネス化には実際はまだ時間がかかる。AIの技術が進んでも、今後はデータがどこまで使用できるかが大きなテーマになるのでは」と青木。林田氏も「個人情報は、SNSの普及もありどこに情報漏洩リスクがあるかわからない。社会的信用にも関わるため、どうしても企業連携にはリスクがある」と話しました。

続いて、「AIで需要創造がはかれるのか?」をキーワードとしてあげた青木は「レコメンドの仕組みや購入ポテンシャルの高いお客さんを見極めるなど、需要創造ができている場面はあるものの、まだAIは効率化や最適化、人がやっていることの精度を上げるという使われ方が多い」と語りました。
データ連携も含めて需要創造が可能なのか、という点においては「自社の外で起きていることを見つけることで、もっと需要創造のチャンスを見極めることができるのではないか。そのために企業間のデータ連携が需要創造につながるAIの活用の仕方になっていくのではないか」と続けます。

しかし、このデータ連携の前にも課題があり、例えば自部門のデータに留まっていたり、デジタル広告効果の測定においてもバラバラのタグによってデータが取得され、データ連携が進んでいない状況があるとのこと。
青木は「また、複数のデバイス(スマホ・PC・スマートTV等)を使う人のデバイスのログを個々人のデータに統合することも課題になっており、需要創造に向けては、様々な側面でのデータ統合・データ連携が大事だと思う」と語りました。

■AIとIoTが情報レベルをあげる触媒になる 
―林田氏の問題意識

データに特化した問題意識をあげた青木に対し、林田氏はテクノロジー関係の問題意識をあげていきます。
「ここ10年で情報流通量が94000倍(※)になった背景には、スマートフォンが普及したことで“いつでも・どこでも・誰でも繋がれる”ようになったことにある。それによって生活者の位置情報や、行動把握ができるようになった」と林田氏。
※総務省「我が国の情報通信市場の実態と情報流通量の計量に関する調査研究結果」より

さらに、データには3段階の情報レベルがあり、1段階目は世の中にある膨大な事実(Data)、2段階目はデータに意味を持たせ分析・評価の対象となるもの(Information)、3段階目が意思決定をする源泉となるもの(Intelligence)であると語り、さらに「AIとIoTがこの情報レベルをあげるための触媒となる」と語りました。

そしてこの情報レベルのなかにも、5つの課題があり、そのなかでも特に「データを活用できないケースがある」「分析モデルのブラックボックス化」「データサイエンティストの人材不足」の3つを具体例として挙げていきます。
「データを活用できないケースがある」は先ほども話題にあがった、データが組織横断的に使用できる状態ではないことを指摘。ビジネスの現場では分析モデルの妥当性説明を求められる「分析モデルのブラックボックス化」、「データサイエンティストの人材不足」では数理・統計・物理などこれまでとは異なるバックグラウンドを持つ人材が世界的にも足りていないことを課題として挙げました。

■生活者発想でのAI活用に向けて 
―k-統計化&データフュージョン

林田氏のあげた課題を受けて、青木はそのような課題を解決するために、博報堂DYグループの掲げる「生活者発想」について解説しました。博報堂DYグループの中核事業会社のひとつである博報堂は、1981年に生活総合研究所を立ち上げ、”生活者発想”という概念を提唱したという歴史から、生活者発想でデータを使うとはどういうことか、具体的な例を紹介しました。
かつて母の日は、子どもが手作りカレーで母を労う日としてカレーが売れると言われていたが、働く女性が増えたことから実際は結構リッチな食事で過ごす「母の日ではなく妻の日になった」ことがID-POS・SNS等のビッグデータで読み解けるようになったという事例を挙げ、「昔は定性調査で分析していたことを今は、様々なビッグデータを活用することで、生活者のインサイトがより鮮明にわかるようになってきている」と解説しました。

さらに、生活者発想でのデータ活用に向けての取り組みとして「k-統計化&データフュージョン」について紹介。「k-統計化」とは、似たような人を集めたマイクロクラスタリングをもとに“仮想個人”データをつくり、外部で使用できるという仕組み。実在の個人ではないため、データ連携における個人情報保護が必要という課題も、k-統計化によって克服することができると語りました。

■データ活用の今後 
-生活者の無意識下にチャンスがある

最後にまとめとして、生活者の無意識下行動について紹介。「人は無意識下の方が多くの情報を収集していることがわかってきている。AIを活用することで、人の行動動線・表情・視線・会話等の非構造化データの分析が可能になり、無意識下での生活者の欲求を明らかにすることもできるようになるのでは。AIを活用し、生活者の潜在需要を発掘することで、もっと経済を活性化させることができるのではないか。データ連携の仕組みを活かして、データドリブンマーケティングを次のステージに進めていきたい」と青木。

林田氏は「KPIとして売り上げも大事だが、チャレンジの回数をこなすのも大事。特に企業も皆さんは意識を持つべきで、バブル世代が価値観を変えて行くことが大事。いろんなチャレンジをいろんな企業がやって行くことが大事では」と語りました。

プロフィール

青木 雅人
博報堂DYホールディングス
マーケティング・テクノロジー・センター室長
兼) AIビジネス・クリエイションセンター センター長
林田 敏之
NTTデータ
ライフデジタル事業部 事業部長

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