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データ活用の新しい潮流

前回は”結果”を表すデータの中でも購買データを起点にした分析の例をご紹介しました。
購買データ自体の分析やカスタマージャーニーを描くことで、生活者像をよりマーケティングに活用できる形で具体化する手法についてフォーカスしました。

一方で、近年では”結果”表すデータが様々な領域で幅広く活用されています。
今回は、もう少し視点を広くし、マーケティングに留まらない”結果”を表すデータの活用事例として、「市場や需要などが今後どう動いていくかといった“未来の予測”」や「結果を表すデータをもとに”サービスのあり方を変える”活用」などの新しい潮流をご紹介したいと思います。

データから未来を予測できるか

皆さんは未来を予測できたらいいなと思うことはないでしょうか。
SFの世界のように未来がなんでもわかってしまう…というようなことは難しいですが、結果を表すデータとそこに至るまでの行動を表すデータを組み合わせることで、最近ではある種の未来予測が実現しはじめています。

例えば私は、商品の販売データ(=結果を表すデータ)と検索データ(=行動を表すデータ)を組み合わせることで、ある商材の新商品の売上予測に取り組んでいます。※1

データで市場を予測する――博報堂DYグループとHandy Marketingの新手法とは

データで市場を予測する――博報堂DYグループとHandy Marketingの新手法とは

この事例ではマーケティング寄りの目的で実施しましたが、AI・機械学習の進歩によってこれらの取り組みは幅広い領域で進んでいます。
現在では景気がどうなっていくかの予測や、商品の販売や在庫の予測などの事例が代表的ですが、データの組み合わせ次第で色々なことを予測できる可能性があるため、効率化によって無駄をなくしたり、予測の結果から最適化する施策を自動で実行したりと、想定できる用途もかなり幅広いものになっています。
すぐ直近の未来、いわば”近未来の予測”と言っていい技術が私達の生活をより良く変えていく日もそう遠くないのではないでしょうか。

人の信用を可視化できるか

皆さんは他人をどの程度信用しているでしょうか。
いきなりの哲学的な問いに聞こえてしまったかもしれませんが、誰しも他人に対する信用の基準のようなものをなんとなく持っていると思います。例えば、「この人になら1万円くらい貸してもいいけど、この人には100円も貸したくないな…」といった具合です。
ただ、そういった”人をどの程度信用するかの基準のようなもの”は目に見えないものですし、点数で表してくださいと言われても単純に数値化できるものではないと思います。

前回のコラム(※2)で、購買データから導き出した買い方で生活者像を理解する手法をご紹介しました。買い方で人となりがわかるその一歩先の姿として、人の信用という目に見えないものをスコア化する技術も生まれてきています。

海外ではスマート決済が普及して、決済が一瞬で終わったりレジでの決済という行動がないくらいseamless(継ぎ目がない)でfrictionless(イライラしない)な体験が生まれ始めています。
例えば中国では、Alibabaの提供するAliPayで様々なものがキャッシュレスで決済できます。店舗での買い物はもちろんのこと、街の屋台などの飲食店や電気などのインフラ料金、交通機関の支払いもキャッシュレスで可能です。
AliPayの提供する芝麻信用では、このような幅広い決済データ(=結果を表すデータ)に加え、その他の様々なデータを組み合わせて個人の信用スコアを算出し、その人にいくらまでならお金が貸せるかという人の信用を自動で判断しています。
つまり、人の信用という目に見えないものをデータをもとに可視化(スコア化)しているのです。

人の信用可視化に使われる様々なデータの例

人の信用可視化に使われる様々なデータの例

信用の可視化でサービスの前提が変わる

信用を可視化することでサービスを提供する前提が大きく変わり、結果として今までにない便利さを提供してくれるサービスも実現されています。
その例として、レンタル自転車があります。
レンタル自転車といえば、決まった乗り場で乗り降りするものをイメージされる方が多いと思います。しかし、中国のレンタル自転車はどの場所でも乗り降り自由なものが一般的です。レンタル自転車がどこにあるかは内蔵されたGPSによってスマホに表示され、スマホで解錠し、スマホで決済することができます。
そんなサービスを提供すると、自転車が雑に扱われたり壊されたりするのではないかと心配になりますが、そんなことはほとんど起こらないそうです。
なぜなら、乱暴な使い方をすればその本人の信用スコアが傷ついてしまうからです。レンタル自転車のユーザーが丁寧に自転車を扱うように、サービスが設計されているのです。

これは信用を可視化することで、安心してサービスを展開できることの強みだと思います。悪用されるリスクを限りなく低くできるからこそ、サービスの自由度を大きく高めることができるのです。このような仕組みは企業が提供するサービスだけでなく、個人間で取り引きを行うP2Pのサービスでも活用されています。

他にも、高い信用スコアのユーザーは多様なサービスを利用する際のデポジットが必要なかったり、金融系のサービスを安い金利で利用できたり、出国手続きが簡易化されたりといった優遇があります。
一方で、データを提供することでプライバシーが心配になったり、ユーザーが信用スコアに過敏になり過ぎたり、最近では信用スコアを上げる詐欺サイトも現れるなど課題もあります。

”結果“を表すデータで得られる便利さと、その一方で生じる課題を皆さんはどのように考えるでしょうか。

“結果”を表すデータの可能性

”結果”を表すデータについて、マーケティングへの活用から、未来の予測や人の信用の可視化まで三回に渡ってご紹介してきました。
私自身、データの使い方次第で生活はもっと便利に、もっと快適になっていくと考えています。そしてその先には、快適さや便利さを超えた、今よりももっと”よい未来”が待っているのではないでしょうか。
そんな未来に一人の生活者としてワクワクしながら、その一端を少しでも担っていければと思っています。そんな未来をつくる仕事を、皆さんともぜひご一緒する機会がありますと幸いです。

※1
「データで市場を予測する――博報堂DYグループとHandy Marketingの新手法とは」
/article/02064/

※2
「“結果”を表すデータの可能性 第2回 生活者像の可視化」
/article/03400/

 

プロフィール

諸橋 直也(もろはし・なおや)
博報堂DYホールディングス
マーケティング・テクノロジー・センター 開発3グループ 主任研究員

2009年博報堂入社。本社マネジメントスタッフを経て、2012年よりマーケティングプラナーとして、通信、自動車、日用消費財など諸分野での戦略立案、コミュニケーションプラニング、ブランディング、商品開発を担当。2015年より現職。様々なビッグデータ分析やマーケティングテクノロジーソリューションの開発に従事。

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