このページをシェアする

  • twitter
  • facebook
  • line
  • line

位置情報×オフライン行動データが切り拓く
データマーケティングの未来図

シナラシステムズジャパンと博報堂DYメディアパートナーズ、博報堂DYデジタルが共同で開発した「ACTAG(アクタグ)」は、両社が保有する生活者のオフライン行動データを活用した高精度な広告配信及び来店者分析・来店効果計測ソリューションです。去年12月にリリース、徐々に販売が本格化するなか、開発に携わったシナラシステムズジャパンの松塚展国さんと、博報堂DYメディアパートナーズの徳久真也、博報堂の大倉幸祐が、本サービス開発の裏側や、今後の展望などについて語りました。

位置情報をどう「料理」するか?という問いから誕生した
「ACTAG(アクタグ)」

大倉
「ACTAG(アクタグ)」開発の発端は2016年の夏ごろ、シナラが保有する位置情報に、我々博報堂DYグループが保有する生活者のオフライン行動データを掛け合わせることで、新たな価値を生み出せるのではないかと着想、ご提案したことでした。その後両社の間で具体的な位置情報の活用モデルを検討していき、2017年の夏に実証実験を実施。きわめて良好な結果を得ることができたことで、今回のリリースとなりました。
両社のご縁ということでいうと、実は松塚さんはかつて博報堂に在籍していたことがあるんですよね。

松塚
はい。博報堂に6年間ほど在籍していました。当時は主に営業でしたが、在籍時から、博報堂の持つナレッジの魅力は実感していました。
シナラに参加したのは2016年です。シナラは携帯キャリアとの協働でモバイル広告配信プラットフォームを運用しており、現在私はそのセールスと事業開発、推進に携わっています。今回の「ACTAG」開発に当たっても、そもそも位置情報には“宝の山”と言えるほどの価値があるわけで、それを適切に料理する方法が必要なのではないか、という課題意識がベースにありました。その宝の山を本当にお客様にとって価値のあるものにするためには、博報堂DYグループならではのナレッジや、生活者発想という考え方との掛け合わせが非常に有効なはずだと思ったのです。

徳久
ありがとうございます。おっしゃる通り、僕らが「ACTAG」開発で実現したのは、生活者の行動データに意味付けをするという「料理」でした。たとえば“高単価なコーヒーショップチェーンによく行く人は、情報感度や意識が高いアーリーアダプターである”という事実があったとして、これまでのデータ活用法では「高単価なコーヒーショップチェーンに月に〇回行った」という行動ログの単なる集積にしかならず、両者を結びつけることはできていませんでした。「ACTAG」は、僕ら博報堂が日頃から観察、蓄積、解釈している生活者像を「行動特性」「イベント」「消費特性」といった分類ごとに細かくセグメント化(約80種類)し、位置情報からわかる行動データにタグづけしていき、高精度なマーケティングソリューションの提供を可能にする仕組みです。たとえば広告主が新商品をローンチするとき、特定の感度の高い人たちに向けてアプローチができるとなると、ターゲットの価値、バリューは大きく高まっていくはずです。

松塚
リリース以降、結構な反響があって、さまざまなジャンルのクライアント企業から問い合わせが来ています。特に多いのは店舗形態を持つクライアント企業や、たとえば教育機関など、普段のウェブ行動からではセグメントできないようなターゲティングを指向されるクライアント企業などです。基本的に、興味に関連するサイトをブラウジングするよりも、実際にそこに通うとか、購入するといったアクションの方が背後にある思いは強いはずですから、ウェブログに比べて位置情報の情報濃度は非常に高いのです。

徳久
また、ベースとなるのはWi-Fiによる来店計測ですが、シナラさんは電波強度を適切に調整し、精度の高いWi-Fi計測をされています。Wi-Fiにありがちな、店の前をただ素通りしている歩行者も来店者とカウントされてしまうといったことがない。それも大きいですね。

日本で研磨されてきた、DSP広告のありかた

大倉
位置情報マーケティングは、これから実際にどういった方向性で展開させていくことができるでしょうか。

松塚
まず、今後の展開としては2つのステップが考えられます。まずは、来店という行動を定量的に把握していき、デジタルデータとつなげていくこと。その次に必要なのが、ウェブ上に行動が現れていない「潜在層」を追求し、アプローチしていくことです。これは、位置情報を使った、いわばブランディングに近いステップとなります。「ACTAG」はまさにこの2つ目のステップを推進するために欠かせないツールになっていくと思います。

徳久
“位置情報を使ったブランディング”について、もう少し詳しくお話いただけますか。

松塚
個人的な話で恐縮ですが、以前、僕が家族とYouTubeに上げた動画がバズったことがあったんです。600万回再生されました。

徳久
それはすごい(笑)。

松塚
そこで、その600万回が何をきっかけに発生したのかを調べたところ、90%はYouTube内の検索からで、FacebookやツイッターといったSNSからのアクセスは10%程度でした。だったら、YouTube内で何が検索されているかをまず分析し、それに合わせたコンテンツをつくれば必然的にバズが起きるのではないか?と仮説を立て、いろいろとやってみたんですがうまくいかなかった。つまり、顕在化したニーズに対していくらアプローチしても、それにこたえる何かはすでに存在しているものなんです。一方でマーケティング的な発想だと、潜在的ニーズを抱えた層をどう顕在化させていくか?が鍵になりますよね。その潜在的ニーズはふだんの無意識的な行動からあぶりだすことができるはずで、それを示すのがすなわち位置情報なんです。
さらに言うと、僕はジムに通っていますが、習慣化しているので、いちいち検索をかけてからジムに出かけるなんてことはありません。でも僕が毎週ジムに行っているという行動から導き出せる、「健康志向」だとか「ダイエットに興味がある」といった趣味嗜好、ライフスタイルの情報は、潜在ニーズをとらえるという意味ですごく重要な情報なはず。それを切り取れるのが、まさに位置情報。これから取り組むべきは、そこからブランディングのヒントを集めることだと考えています。

大倉
博報堂も、顕在化する前の人のニーズをとらまえるための研究を長らく続けていて、ちょうど先日、私も携わっているデジタルロケーションメディア・ビジネスセンターからもリリースを出しています。(ご参考)

徳久
そうですね。「移動する生活者」調査によると、生活者の行動には生活シーン別に6つのモードがあるということがわかりました。たとえば買い物に出かけているときは「ハンティングモード」で、積極的に移動先での情報を摂取し行動に移しているし、家でくつろいでいるときは「オープンマインドモード」で、リラックスして長尺のコンテンツを楽しんだりしている……など、モードによってそれぞれ情報に接する姿勢が異なるという分析です。先ほどの松塚さんの話でいうと、これまではジムに通っている=「健康志向」という情報を切り取って、モードに関係なく広告を配信していたわけですが、実際は、その人が家で集中して家事や勉強などをしているときに広告が来ても、「いまはいいや」となって、届かない。Googleさんのいう「マイクロモーメント」にも近い考え方ですが、位置情報を活用すれば、潜在層の把握と、把握した人たちにもっとも届きやすいモードを選択して届けることができるようになるんじゃないかと期待しています。

大倉
さらに、そこに付加価値をつけたうえで、クライアント企業にどういう形でソリューションを提供するかということですよね。今回は広告配信のソリューションとしてリリースしましたが、たとえばマーケティングの分析ソリューションとしてなど、活用方法は広がる気がします。

徳久
そうですね。現状では、クライアントさんは自社のお客さんが何を買ったかというデータは持っていますが、その人たちがどういった性、年代で、ほかにどういったことに興味があるかまではわかっていません。有店舗系業種においては、シナラさんのエリアデータを活用すれば、店舗によく来る人が昼夜でどう異なるか、あるいはどういう趣味嗜好性に違いがあるかといったことが、もっと立体的に見えてくるようになる。エリアデータと、購買データや公式サイト訪問履歴といったその他のデータと掛け合わせ立体的にを分析していくことが、これからのマーケティングの鍵となります。
オンラインとオフラインの行動がつながってくると、最初にその商品を知った認知の時点から、どういうルートをたどって来店、あるいは購買に至ったかがわかってくる。これまでオンラインのコンバージョンで終わっていて、ぶつ切りになっていたデータが、有機的につながっていくという意味はすごく大きいと思います。

松塚
これからマーケティング全体が可視化されることで、いま各業界で鉄板と言われるカスタマージャーニーの常識も、覆されるかもしれませんよね。

それから、プラットフォーマーの指向性としても、我々には店舗を持つお客様にとってのKPIトラッカーでありたい、という思いがあります。まずは来店そのものやWeb経由の来店を計測し、理解、可視化し、その基盤をもとに広告配信を行っていくという考え方です。こうしたシナラのデジタルマーケティングプラットフォームやDSP(Demand-Side Platform)広告の考え方は、実は日本で育まれたもの。海外には事例がないなか、商品としてどのような「料理」の仕方をするか、我々がゼロから生み出していったものなのです。

徳久
そうなんですね。
博報堂DYグループでも生活者DMPというプラットフォームを広告配信に活用していますが、基点となるのはやはり生活者理解。その解像度をあらゆる手を尽くして上げていくことが、あらゆるマーケティング活動の原点となるという考え方です。もちろん個人情報保護の視点はきちんと担保しながら、その人のインサイトや、気持ちが動く瞬間はいつなのか?というのをつねに考え続けていて、そのフィロソフィーは揺るがない。ボリュームをある程度犠牲にしてでも質の高さ・解像度の高さを重視するか、
広告配信のトラフィックを高めるために規模の経済を最初に追求するかの違いは大きいです。私たちのスタンスは前者。その点における弊社とシナラの考え方は極めて近しいものがあると感じています。

松塚
実はそうした考え方について、一度アメリカのCEOとかなり議論したことがあります(笑)。僕は「ニーズファーストであるべきだ」と主張して引きませんでした。
日本のお客様の目はすごく厳しくて、細かい。シナラはアメリカ生まれの外資系ですが、そんな日本で研磨された企業です。これからグローバルに展開するにしても、大きな武器になると考えています。

生活者情報の安全を守るという大前提のもとで、解像度を上げていく

大倉
改めて、「ACTAG」においてはこれからどういった展望が考えられるでしょうか。

松塚
まず、現段階ではWi-Fiが前提になっていますが、データソースの多角化についても当然検討を始めていて、今後はそこからさらにカバレッジを広げていきます。さらに、入店者と通行人を100%に近い精度でさばけるまでに検知精度を上げていくことを目指しています。

徳久
データの精度が上がれば上がるほど、僕らも、それならこういった料理方法が可能です、といった提案もできていく。可能性は広がりますね。
ここで改めて明確にしておきたいのは、当然のことではありますが、僕らはあくまでもデータのセキュアさを担保したうえで情報の精度を上げていくということ。データドリブンマーケティングを追求していくと、さまざまな生活者の情報が入ってくることになりますが、その生活者を守るということが大前提でなければなりません。弊社では独自に開発した「k-統計化」技術を用い、生活者の購買データを圧縮、個人情報とは切り離された「集計値」の形にして、クライアント企業さんのデータと統合するというソリューションを提供しています。そういった形をとることで、生活者の安全を守りながら、これまでわからなかったさまざまなことを可視化し、データの解像度を上げることを実現させています。

松塚
そうですね。より、マーケットに寄ったフィロソフィーを掲げているという意味でも、両社の親和性は高いのかなと思います。これからも引き続き、よろしくお願いします。

徳久・大倉
こちらこそよろしくお願いします!

プロフィール

松塚 展国
シナラシステムズジャパン株式会社
執行役員
営業部 部長 兼 ビジネス開発部 部長
徳久 真也
博報堂DYメディアパートナーズ
データビジネス開発局
データマネジメントプラットフォーム部
大倉 幸祐
博報堂
データドリブンマーケティング局

この記事に関する お問い合わせはこちら

このページをシェアする

  • twitter
  • facebook
  • line
  • line

関連記事

2018.03.14

記事・コラム

デジタルトランス フォーメーション時代の ダッシュボード活用術 2

  • 博報堂DY ホールディングス
    木下 陽介
  • 博報堂DY ホールディングス
    戸梶 大陸
  • 博報堂
    島野 真

2018.03.09

記事・コラム

独自のネットワークで 新しいデータを 抽出できる強みをいかす

  • 博報堂 アイ・スタジオ
    川崎 順平
  • 博報堂 アイ・スタジオ
    笹垣 洋介

閉じる