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楽天レシピと強力タッグ!TastechEngine
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楽天レシピと強力タッグ!TastechEngine

楽天株式会社が運営するレシピサイト「楽天レシピ」と、博報堂DYグループが提供する「生活者DMP」を掛け合わせた、日々変化する生活者の食の嗜好や食生活をリアルタイムに推計する独自ソリューション「TastechEngine®」が、2018年3月9日にリリースされました。開発に当たった楽天株式会社 通信&メディアカンパニー メディア事業部の向谷和男さん、同事業部コンテンツメディア事業課 レシピグループの蔵川弓子さん、関口美貴子さんと、博報堂DYメディアパートナーズの篠田裕之が、両社がタッグを組んだいきさつや、本ソリューション開発へのこだわりなどについて語りました。

本能的な欲求やその瞬間のフィーリングが如実に表れるのが「食」

篠田
博報堂DYメディアパートナーズの篠田です。今回リリースした「TastechEngine®」のベースになっているのは、弊社の「生活者DMP」という購買データやウェブ閲覧データ、検索やアンケートといった生活者データの集積、そして月間利用者数が1,000万人を超える「楽天レシピ」が保有するレシピ閲覧データです。本サービスは、改めて「食」というジャンルに着目し、生活者が食に対してどのような興味・嗜好を持ち、日々変化しているのかといった、食生活そのものをとらえていこうとするソリューションです。
向谷
楽天の向谷です。普段はオンラインのメディア事業開発に携わる部署におり、なかでも「楽天レシピ」を中心に、「Infoseek」という検索サイト、楽天ブログを束ねるコンテンツメディア事業課に所属しております。蔵川は同部署でレシピに関するサービス企画、編成やマーケティングに主にかかわっており、関口はサイト運営を支える広告商品の開発、また運用体制の設計といった業務を担っています。今回のソリューション開発にあたっては、この3人で担当していました。
博報堂DYメディアパートナーズ データビジネス開発局ビジネス開発部 篠田裕之
篠田
今回のTastechEngine®開発は、普段、食品メーカー様を担当させていただいている中で、生活者の定常的な食の意識や好みはもちろんのこと、日々の食嗜好の変化まで踏み込むことができれば、もう少し正確なCRMや効果的なマーケティングが可能になるのではないかと考えた背景があります。
前提として、僕らがもともと持っている生活者データは、その人の食の好みはアンケートなどからわかっても、いま、何が食べたいのかまでは正確にとらえることができないんですね。しかし、いくらお肉好きな人でも、昨日と今日、お肉料理を食べたとして、明日もお肉料理を勧められるのは結構ヘビーだと思うんです。次の日は、さっぱりしたものを食べたい、といったことがあり得ますよね。そうした食意識の変化をリアルタイムで把握し、さらに分析で終わるのではなく、打ち手につなげられるものができないだろうか、と考えていました。そこで、食に関するウェブ閲覧行動に着目した結果、膨大なデータが蓄積されているレシピサイトの重要性に気づき、相談させていただいたのが始まりです。
向谷
人が物を買ったり、旅行の予約をしたり、何かしらの意思決定をする際には、必ずその人の嗜好が影響するはずです。
裏を返せば、そうした意思決定の過程や結果というものを積み上げて解釈すれば、その人がどんな人で、何を求めているかというのは必ずわかってくるだろうということを、ここ7、8年ずっと思ってきました。たとえば過去に行ったことがあるのは、所有するクルマの種類と購買傾向の分析。ある外国車のオーナーは、ワインの購買履歴の中でもシャンパンなどの泡物の購入率が高いということがわかったのですが、そういった嗜好性はそのほかのさまざまな商品について言えると思うんです。
ただ、膨大な量のデータを処理しないといけないという物理的、環境面での課題もあります。さらには、どんな活用も可能だからこそ、そのデータを用いて何を実現したいのか?という観点から全体をデザイン、設計しなくてはいけない。想像力を働かせてデザイン、設計したら、それをシステムに落とし、実践できるように仕組み化していくといった構造が必要です。我々のようなインターネットに関わる企業は、比較的システムや構造化においては長けていますが、こと最初のデザインの部分においては広告会社さんに大きな強みがあると思っています。
楽天株式会社 メディア事業部 コンテンツメディア事業課 シニアマネージャー 向谷 和男氏

今回のお話をいただいたとき、最初は若干懐疑的な部分もあったんですが(笑)、しっかりとロゴもデザインしていただいていて、世界観とストーリー性をしっかり作り上げてくださった。それを受けて、普段僕らが対峙している企業様に向けても、単に広告枠をご提供するのではなく、もっとさまざまな価値、ソリューションを提供できるという意味で、デザイン力のある御社とパートナーを組むことに意義があると感じました。

篠田
ありがとうございます。楽天さんは多様なジャンルにわたるデータをお持ちなので、先ほどのお話の例にあった、外国車志向というクルマに関連するデータから、シャンパン好きという飲料に関する特性が現れる、というように、ジャンルを超えたインサイトを導き出すことができる。それが非常に面白いと思いますし、今後、このソリューションを発展させていくときに、重要になってくると思っています。
ただ、現段階では食に関するデータを丁寧に用いていこうと思っていまして、このソリューションでは2段階にわけて生活者の食嗜好を捉えていこうとしています。まずは、性・年齢や、アンケート、これまでの中長期的なレシピ閲覧傾向から、たとえば、基本的には甘い物が好きで、モチモチした食感が好みだということを分析します。次に、直近のレシピ閲覧傾向などを用いて、いまこのタイミングでは、さっぱりしたものが食べたくて、そのレシピを探している、といったことを捉えていきます。つまりスタティックな側面とダイナミックな側面、の両面で人の嗜好を分析しています。
向谷
人の趣味嗜好やライフスタイルは多様化していて、例えば20代女性だからこれが好みのはず、と年代属性だけで一元化するのは限界があると考えています。行動結果だけを元にターゲティングする手法も偶然性や特殊要因を除外できない。もっとその人のフィーリングや感性、嗜好性を総合的に捉えて、変化の過程もトラッキングしながら、本能的に感覚的に需要されるメッセージや施策が必要なんだと思うんです。そしてそれが可能なだけのデータ量を持つ企業は楽天を含めて数社しかないと思います。
篠田
その人が本来的に感じることと、今このタイミングのフィーリング、という両面が、こと食に関してはものすごく如実に表れますよね。
向谷
そうですね。そういったことがわかるだけではなく、今回のようなプラットフォーム化が重要だと思います。現在の広告施策は基本的にキャンペーンベースです。企業の言いたいことや消費者のちょっとした変化もトラッキングできないので、いつもテーマやターゲットを限定的に定義しては一発打って終わりとなる。我々としては、消費者の実態を理解するための環境を整える一方で、マーケティングのプラットフォーム化というか、継続性を担保する仕組みを同時に提供していかなければ、データを使って人の感性に近づいていくということはできないのではないかと考えています。

レシピサイトの豊潤なビッグデータを活用し、ペルソナを超えた生活者像を捉える

篠田
今回のサービス開発にあたっては、「味覚」という表現を使わないことにも気をつけました。味覚という言葉が入ると、舌の味蕾という器官で計るような、生体的な厳密性が求められてしまうと思います。このソリューションは、生体的な情報を扱うわけではなく、あくまでも感性とかフィーリングに近いものとして食の好みや嗜好を推計するという位置づけを明確にしたいという狙いがありました。また、食の好みや、日々のレシピ閲覧傾向から深堀して、その人の健康状況を推計する、といったことに踏み込むことは避けました。ミスリーディングになっては危ういですから。
向谷
確かにそうですね。チームでディスカッションを重ねる中で出てきたそういった懸念事項も、すごくうまく拾っていただいたかなと思っています。そういう意味でとても作り上げた感がある。勝手に満足しています(笑)。
篠田
そう言っていただけると嬉しいです。リリース以降、食品メーカー様からの引きも良く、商品開発に活かしたいといった声が届いています。
向谷
これまで、やれそうでやれなかったことを実現可能にできたという意味では、本当に大きな一歩だと感じています。あとは、ファクトの積み上げをしっかり行いたいですね。ペルソナを否定するわけではありませんが、たとえ想定したペルソナに沿って商品開発をしても、実購買者調査をするとズレているといったことはままあるわけですから。
篠田
本当におっしゃる通りで、ソリューション開発に先んじて行った、食に関するアンケート調査でも、ペルソナから推測する食の好みと、その人が実際に食べたものに矛盾が起きています。食の好みは日々変化しますし、たとえばそのタイミングというものが、季節の変わり目とか年齢的なものといったことに加えて、何かその人にネガティブなことが起きた時だったりするんですよね。
蔵川
確かに、ストレス発散が目的で甘い物を食べたり、やけ食いをしたりということは実際にある。私も仕事が行き詰まったときに、衝動的にファストフード店に行ったことがあります(笑)。
篠田
そういう瞬間って、先ほど向谷さんがおっしゃった、ペルソナを超えて起こるわけですよね。豊潤なビッグデータがなければ、その瞬間を捉えることは難しいと思います。
楽天株式会社 メディア事業部 コンテンツメディア事業課 レシピグループ 関口 美貴子氏
関口
一般のユーザーさん向けに漠然といろんな情報を提供したり、広告を配信したりするよりは、広告もコンテンツも含めてユーザーさんにとって意義があり、役立つこと……たとえば心を癒してくれるものかもしれないし、時間を埋めてくれるものなのかもしれないですが、そういったバリエーションで提供できていくといいなとは思います。現段階では広告ソリューションへの活用が前提となっていますが、そうしたパーソナライズの側面をどこまで実現していけるかをいま考え始めているところです。
向谷
僕らとしても、枠をベースにした既定の広告商品ではなく、徐々にネイティブ化させ、意味のあるコンテンツとして提供しつつ、情報流通量を上げることを実現させたいと考えている。今回の取り組みは、その最初のステップとして位置付けられると思っています。
楽天株式会社 メディア事業部 コンテンツメディア事業課 レシピグループ 蔵川 弓子氏
蔵川
現状の「楽天レシピ」では、ユーザーに検索という行為を通してレシピにたどり着くというプロセスを経てもらっているわけですが、その行為をなるべく簡略化させ、見ているだけで、自分が食べたいものがみつかる世界観というのを実現したいと思っているんです。
そこで肝だと考えているのは、「発見」をさせるということ。ネットって、すでに目的があり、そこから検索して答えを得るという意味ではとても便利ですが、何か自分に近しいところでの新しい気づきを得られるようなコンテンツを提供するのは難しかった。結果的に見たいのはレシピだとしても、その見せ方をどう変えていくのか、ということを考えています。
関口
実は、自分がいま何を欲しているかを正確に認識できていないユーザーさんも多いんですよね。いざ検索窓にはいくけど、なんて検索したらいいかわからないということがある。気分で検索するといっても、難しい点もあります。なぜなら「こってり」と検索したとしても、ユーザーさんが投稿したものにそのワードが紐づいてなければ見つけ出せないから。タグでの管理ができていないんですね。そうなったときに、どうやって気分で見つけ出させてあげるかというと、こちらからのレコメンデーションが一番実現に近いのではないかと。皆さん「今日の献立どうしよう」というところで悩まれるのであって、始めから何をつくりたいのかを問われても困ってしまう。そこからサポートすることに、ニーズがあるんだと思います。
蔵川
たとえば最初のステップとしてTastechEngine®が「いまのあなたにはさっぱりして健康的な、こういうものがおすすめです」と言ってあげたうえで、「そうか、だったらさっぱり系のパスタを探してみようかな」という風に、そこから先は自分で能動的に選んでもらう。最後に自発的な行動がないと納得感が得られないですから。
篠田
なるほど。ちなみに「楽天レシピ」の中で、人気がある検索ワードの傾向は、ありますか。
蔵川
「子どもが喜ぶ」はすごい人気ですね。お母さんの立場で料理をする場合、お子さんの好みなどを優先してレシピを選んでいるという実態がわかります。それから「居酒屋メニュー」や「持ち寄り」なども人気ですね。お花見などのイベントがある場合は、インスタ映えを狙った「花見弁当」とかも人気ですし、「時短」「簡単」も常に人気のキーワードです。
篠田
自分の好みだけじゃなくて、家族が喜ぶものとか、パーティ需要であるとか、その人の人間関係などを含めての、“人となり”が見えてきますね。余談として、これも弊社で事前に行った食に関するアンケート調査からですが、知人や友人、などよりも家族や配偶者とは食の好みが近い、と答える人が多い結果となりました。さらに詳細に見ていくと、恋人や家族になった当初は食の好みは近くないものの、好きな人の食の好みに合わせていきたい、と答えている人もいました。食の好みは、このような人間関係の要因でも変化していくのだと思います。
関口
そうかもしれませんね。あと、レシピのアクセスって、夕方の6時に向けてアクセスが上がり、その後すっと下がるんです。何をつくろうか調べるためにアクセスいただいて、その後スーパーに向かうという動きが見えますね。
篠田
まさにそれが鍵だと思います。つまり、その日何を食べるかというのは、決してしっかり計画された行動ではなくて、瞬間的な欲望の側面もあると思います。それがレシピの閲覧などから見えてくると思います。

楽天のシステム構築力と博報堂DYグループのデザイン力で、役割分担しながら協業していく

向谷
今回博報堂DYグループさんにもっとも期待しているのは、先にも言いましたが、やっぱりストーリー構築と施策デザインの部分です。できそうでできない特殊な作業だと思うんですが、そこを強くやっていただけそうだと思ったことが大きいですね。それから仕組み作りまでは僕らもせっせと行うことですが、その先のクライアントさん、あるいはコンシューマーと対峙するとなったときに、根幹の思想をしっかりと理解した運用がどれだけ実行できるかという点がある。そこにおいては人の力がすごく重要だと思っていて、単なるオペレーターではまったく意味がないわけです。その思想と運用の一致という点で、僕らとしては、博報堂DYグループさんとうまく役割分担しながら協業できたらいいなと思っています。

あと、そもそも「楽天レシピ」のカテゴリー数は約1,900あるわけですが、そのカテゴリー情報をお渡しした後、一つ一つに因子をつけてくださった。カテゴライズしたデータにどう因子をつけていくか、その因子の設計の仕方と、それをいかに実装していくかというのは、“デザイン”においては避けて通れない作業です。ただ因子の定義をつくるのも、それを割り振るのも膨大な作業なんですが、それを短い時間で実現してくださったのには驚きました。篠田さんがスピード感をもって物事を決め、手を動かしてくださったことに、覚悟と熱意を感じました。まず形にすることが大事なんだ、と気づかされたというか。

篠田
それは恐縮です。実際延々とデータと向き合う作業というのは、一人でやると、なかなか辛いんですよね(笑)。でも今回のプロジェクトでは、チームで集まって「キムチ鍋って別に辛い物好きじゃなくても好きですよ」なんて言う風に、「食」について和気あいあいと議論する時間がすごく楽しくて、大変な作業に対する対価として、楽しい時間をいただけたというのが実感としてあります。今回のようなソリューションに限らず、データクリエイティブに取り組んでいくときには、データサイエンティストだけではなく、様々な専門や立場の人が、データに対等に向き合い、対話する空気が大切なのかなと思いますし、それができるチームに恵まれたこともありがたいと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

向谷・蔵川・関口

こちらこそよろしくお願いします!

※本記事は博報堂DYメディアパートナーズHPに掲載した記事を転載しています。

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