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データドリブンな広告の「未来のカタチ」-vol.1

先進的なアイデアを形にする自主開発型クリエイティブ・ラボ、博報堂「スダラボ」の代表 須田和博が、データドリブンで変わる広告の「未来のカタチ」を解き明かします。

鏡に言われたとき、
一番グッとくるコピーがある

鏡には鏡に合ったコピーがある。これは何のことかと言いますと、マイクロソフトの顔認証APIを使った広告配信システム、「Face Targeting AD」を作ってわかったことです。
マイクロソフトのクラウド・サーバーを使うと顔認識APIを一緒に利用できるという話を聞いて、これを使って何かできないかな?と考えたのがはじまりでした。

最初は「顔認識だったら鏡でしょう」くらいの素直な発想で、クリエイティブに“顔”を取り込んだおもしろ表現を出す鏡、というのを作ったんですね。たとえば、メガネをしてない人にメガネの広告を出すとか、疲れた顔をしている人にはエナジードリンクを出すとか。それをサウス・バイ・サウスウエスト*に持って行ったとき、気付いたことがあったんです。
(*サウス・バイ・サウスウエスト : 米国・テキサス州オースティンで開催される、世界的なテクノロジー・スタートアップ・イベント。)

それは、「You look tired.」というコピーに対してユーザーの反応がすごくよかったこと。エナジードリンクの広告に付けていたキャッチフレーズですが、「お疲れですね」というコピーが鏡から出てきたときに、照れくさがりながらも喜んでくれたんです。「あれ、わかった?」みたいに。それを見たとき、鏡に言われたときに一番グッとくるコピーがあるんだということに気付きました。

鏡に言われる言葉、というので万人が思い出すのが、白雪姫に出てくる「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」「それはあなたです、女王様」というくだりですよね。鏡はそもそも、人間と「そういう関係性にある物体」なんです。鏡というデバイスと人間との太古からの関係を踏まえたうえでコミュニケーションを設計したほうが、ユーザーに喜ばれる。

IoTとAI技術が合体した「モノ・メディア」が今後増えていくと、いろいろな物体から広告メッセージが出てくる時代になると思います。鏡の体験で気付いたことは、物体ごとに最適なコミュニケーションのお作法があるんだということ。ボールペンから広告が出てくるとしたら、ボールペンからのメッセージとして最適なコピーの書き方があるし、ペットボトルから出てくるとしたら、ペットボトルに言ってほしいメッセージがきっとあるんだということです。

広告はいつもメディアの
似姿を借りている

「広告はいつもメディアの似姿を借りている」という言い方を自分はしているのですが、似姿とは何かと言えば、たとえば江戸時代、歌舞伎が広告メディアだったときは、市川團十郎が「江戸香の歯磨きは歯が白くなって息がさわやかになります」という文句を演目の合間に言うんです。歌舞伎の中にもぐり込んで広告をしていたんですね。

新聞の名作広告は、読んだときに「なるほどいいことを知ったな」という知識欲を満たすものですし、テレビCMは「おもしろい」とか「歌が素敵!」とかある種のエンターテイメントを提供できるものがいい。ウェブは何か情報を探しているときにサッサと探せるのがいいところだからAdWordsなんだなぁと。この延長で考えれば、鏡は自分をチェックするデバイスだから、「あなたはこういう状態じゃないですか?」という広告が受けとめてもらいやすいんだろうということです。

それを考えると、IoTに広告も“慣れていけばいい”だけなんですね。新聞広告もテレビCMも、はじめて出現したとき先人達は模索していたはず。新聞は確立された広告だ、鏡は特殊な広告だと思いがちですが、そんなにとんでもなく違う時代が来たわけじゃなくて、今までと地続きなんだと考えたほうがいいと思っています。

漫画:須田 和博

プロフィール

須田 和博(すだ・かずひろ)
株式会社博報堂
エグゼクティブ・クリエイティブディレクター/スダラボ代表

1990年多摩美術大学卒・博報堂入社。アートディレクター、CMプラナーを経て、2005年よりインタラクティブ領域へ。2009年「ミクシィ年賀状」で、東京インタラクティブ・アドアワード・グランプリ受賞。2014年スダラボ発足。第1弾「ライスコード」で、アドフェスト・グランプリ、カンヌ・ゴールドなど、国内外で60以上の広告賞を受賞。2016〜17年 ACC賞インタラクティブ部門・審査委員長。
著書:「使ってもらえる広告」アスキー新書

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