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デジタルトランスフォーメーション時代におけるマーケティングダッシュボード活用術 第2回

デジタルトランスフォーメーション時代における、マーケティングダッシュボードはどうあるべきかを語る対談企画。マーケティングダッシュボードのサービス開発・導入支援に携わる木下陽介、戸梶大陸、島野真の3名が、前回に続いてマーケティングダッシュボードの今と未来について語ります。

前回はこちら

マーケティングダッシュボードは活用されなければ意味がない

島野
では、マーケティングダッシュボードの導入・活用には、どのようなプロセスが重要なのかをお話しいただけますでしょうか。

木下
マーケティングダッシュボードに限りませんが、新しいキーワードや概念が流行っている時期には「新しいテクノロジーの活用を検討するように」という「導入自体が目的」の指示が上層部から降りてくることが多いようです。しかし「なぜそれを入れるのか、何のために使うのか」が曖昧のままだと、うまくいきません。
ある自動車会社のケースでは、データを入れたダッシュボードを作るだけではなく、業務プロセスの中でそのダッシュボードを活用することが義務化されました。それを実現するため、我々が活用研修プログラム作り、クライアント企業での社内研修も繰り返し実施し、実際に使い始めた後の「こういう部分を変えてほしい」という声にもお応えするプロセスを設計しております。その結果、このクライアントでは今でもたくさんの人にきちんと使われています。

戸梶
クライアントからの「こういうデータがあるから可視化したい」というニーズは非常に多いのですが、 そういった目先のニーズで導入されたものは、見栄えが良いものを作っても、担当者や組織が変わってしまったら、半年たたずに使われなくなってしまうケースが多いのが現状です。 マーケティングダッシュボードは軽い取り組みではなく、業務に組み込んで改善していく一大プロジェクトなのです。

木下
そうなりますよね。さまざまなデータを一元管理するとなると、部署ごとに分かれているデータをまとめていくことが必要になります。例えば、宣伝部はマスキャンペーン系のデータ、 デジタル部はPVやコンバージョンデータ、販売促進部は配荷率やPOSデータなどを持っています。さらに、それらのデータ管理に情報システム部が関わり、経営企画部が意思決定するという大きなプロジェクトに発展していくことが多くなっています。

博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター 木下陽介

博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター 木下陽介

島野
社内の各組織の枠を超えて、マーケティングプロセス自体を全体最適するという視点が重要ということですね。結果的に「組織のサイロ化」を崩すきっかけとしてもダッシュボード導入が効くことがある。では、導入を提案するときに意識していることは何ですか?

木下
本質的には、クライアントの経営者レベルが見ている数字、例えば売上や販売台数、ブランドのイメージ指標など、 全社視点で重要な数字を把握するという視点でダッシュボードを作りましょう、と提案しています。実際は各部門それぞれが見たい細かなデータはあると思いますが、経営視点に立った広い視野でデータというエビデンスを見ながら議論できるようにしています。

さらに、マーケッターの意思決定を支援するマーケティング・ミックス・モデリングサービス『m-Quad(エム クアッド)』や、博報堂DYグループ独自の『生活者DMP』なども活用しながら、 需要予測を立てたり、何が売上に関係性があるのか確認したり、その前に共分散構造分析で一度可視化しましょうと、より高度にデータを活用するために組み合わせで話をすることが多いです。
結果によっては「広告費をかけすぎている」ということになることもあります。しかし、僕の立場ではあえてフラットな立場で、 「クライアント企業のマーケティングの全体最適を考えたときにどうあるべきか」という話をするようにしています。

戸梶
誰が、どのタイミングで、何を見て、どのようなアクションをしていくか、という業務プロセス設計と、それらが形骸化しないように、クライアントと博報堂DYグループが一体となってマーケティング業務を押し進めていく、いわゆる「マーケティング・コミッティ」と呼ばれるような運用体制を構築し運営していくのが一番大事だと思います。

システム的な観点でお話しすると、クライアントが購入しているデータをダッシュボードに載せたいという要望がある時、データの権利関係の整理が課題になることも多いです。クライアントからお預かりしたデータを元にレポートを作成して提供するという話と、システムにデータを載せて提供するという話では、データプロバイダーとの権利範囲によってダッシュボードで活用可能かどうかが異なってきます。

また、『個』で取れるデータもある中で、どう個人情報ではない形でデータ受け取るかとか、サーバーのセキュリティ対策は問題がないかなど、得意先からチェックが入ることが多いので、システム的なスキルや法的な知見も含め、幅広いスキルが必要になってきていると感じています。

博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター 戸梶大陸

博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター 戸梶大陸

デジタルとリアルの領域を超えた分析シーンが拡がっていく

島野
他にはどのような事例がありますか?

木下
例えば、ある食品メーカーでは、年間100種類以上出している広告の効果を素材別に分析したい、さらに、博報堂オリジナルのTVCM定点観測調査『Best HIT(ベスト・ヒット)』をリアルタイムに見たいというニーズがありました。それをダッシュボードで対応したところ、リアルタイムにさまざまな結果を見て、評価は目標水準に達しているか、出稿量とのバランスはどうなのかなどを見て、次のコミュニケーション計画に活かして頂いています。

また、ある住宅関連企業がショールームの出店計画をする上で、エリアデータを活用した事例があります。出店の際には、国勢調査などの人口の分布でプランニングを行うことがオーソドックスですが、最近は「そのエリアにはどのエリアから人が来ているか?」を表す人流データを活用した分析が注目されています。そこでダッシュボードに該当エリアの地図を作り、人流分析を直感的にできるような対応を行いました。結果そのビジュアライゼーションは直感的にわかりやすく、経営層とのディスカッションに非常に役に立ったと聞いています。

ダッシュボード上での人流分析の例

ダッシュボード上での人流分析の例

戸梶
エリアデータはこの1年ほどで非常に需要が増してきています。以前はかなり高額なデータでしたし、個々のデータごとに個別にデータプロバイダーと交渉が必要となり非常に手間がかかりました。最近ではデータの権利処理を行ったうえで、複数のデータをサブスクリプションモデルで安価に提供する会社も出てきており、エリアデータを活用できる土台が整ってきました。

島野
デジタルの領域だけでマーケティング活動をしている得意先は少ないので、リアルな世界のデータも充実していることは大切ですね。博報堂は各社の戦略に応じて、最適なマーケティングダッシュボードと、搭載するべきデータを選ぶ目利きを持っているということですよね。

戸梶
そうですね。マーケティングダッシュボードは、マーケティングのプロセスを変える一つのシンボルであると思いますが、われわれはマーケティングPDCAに関わるすべてのプロセスと、それらを実現するために必要なデータやシステムをトータルで提案できる力が強みだと感じています。

木下
僕がこれまで7年間ほどマーケティングダッシュボードの提案や導入を見てきた感覚で言うと、データはその場で全部、あるいはたくさん見られる必要はないと思っています。

戸梶
実際、あれもこれも必要と言われてたくさんの画面を作ったダッシュボードは、使われなくなってしまうことが多いです。さらに、搭載するデータや画面が多く複雑なシステムは導入後の運用の負荷も上がってしまうのです。 システムを担当する側からすると、一回作って終わりではありません。その後の運用保守があります。使われなくなったシステムを保守するのは、これほど悲しいものはありません。

島野
マーケティングの視点とシステムの視点と、その両面から最適な設計を行っていくことが重要ということですね。

今後は、欲しいタイミングに欲しいデータが提示される時代へ

島野
これまでの話をまとめると、データを整理する「守り」のためのダッシュボードではなく、より高度な意思決定による市場創造に役立つ「攻め」のためにダッシュボードを活用することが重要ということですね。では、今後のダッシュボードの未来についてお二人はどのように思っていますか?

博報堂 データドリブンマーケティング局 島野真

博報堂 データドリブンマーケティング局 島野真

木下
マーケティングダッシュボードというと、 PCで画面を見たりデータを検索したりというイメージがあると思います。しかし今後は、エレベーターピッチのように非常に短い時間で情報を共有し、判断していくスピード感がさらに重要になってくるのではないかと思っています。そのためには、「マーケティングダッシュボードをPCのモニターだけで見る」という形ではなくなってくると感じています。
例えば「何か数字がKPIから乖離しているぞ?」という時にはアラート検知して、スマホにプッシュ通知がきて一緒に仕事をしているチームがタイムラインで見て、その場でディスカッションするようなスピード感が当たり前になっていくのではないかと感じています。

戸梶
専用のウェブサイトにログインするという形でもなくなり、必要な情報を必要なときに形式を問わず入手できるという時代が既に訪れています。中長期的に見ると、 PCのモニターではなく、目の前に3次元情報が現れるなど、もっとフルに五感を使って直観的に仕事ができる時代になっていくと思っています。

島野
本日はありがとうございました。
なお、次回以降の連載では、より具体的なマーケティングダッシュボードの導入と運用を成功させる秘訣や、目的・課題に応じたダッシュボードツール選定についてご紹介していきます。

プロフィール

木下 陽介(きのした ようすけ)
博報堂 研究開発局 主席研究員
博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター 開発1グループ グループマネージャー

2002年博報堂入社。以来、マーケティング職・コンサルタント職として、自動車、金融、医薬、スポーツ、ゲームなど業種のコミュニケーション戦略、ブランド戦略、保険、通信でのダイレクトビジネス戦略の立案や新規事業開発に携わる。2010年より現職で、データ・デジタルマーケティングに関わるサービスソリューション開発に携わり、Vision-Graphicsシリーズ, m-Quad, Tealiumを活用したサービス開発を担当。得意先導入、PDCA業務の実績多数。「生活者DMP」構築に向けたデータホルダーとのアライアンス推進業務にも従事。コンテンツ起点のビジネス設計支援チーム「コンテンツビジネスラボ」のリーダーとして、特にスポーツを中心としたコンテンツビジネスの専門家としても活動中。

戸梶 大陸(とかじ たいりく)
博報堂 研究開発局 主席研究員
博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター 開発2グループ グループマネージャー

2011年博報堂中途入社。前職では大手SI会社のシステムエンジニアとしてマーケティング関連のシステム開発を数多く経験。博報堂入社後は, 博報堂DYホールディングスに出向し, 同社のマーケティング・テクノロジー・センターにて, 博報堂DYグループのデータ・デジタルマーケティング領域におけるシステム基盤の開発と導入支援に従事。Vision-Graphicsシリーズ, 「生活者DMP」のシステム基盤, 大規模ライフログ分析システムなどのシステム開発責任者として開発実績が多数ある。

島野 真(しまの・まこと)
株式会社 博報堂
データドリブンマーケティング局 局長代理

1991年に博報堂に入社。主にマーケティングセクションに在籍。飲料、通信、サービスなど様々な業種の得意先を担当し、コミュニケーション戦略、ブランド戦略、商品サービス開発などのマーケティング戦略立案に従事。2012年よりアカウンタビリティ推進部長として、ROI最大化に向けた取組を進める。その後、データドリブンマーケティング部長を経て、2017年より現職。全体最適視点でのデータ活用による戦略企画や、そのために必要となる新たなソリューション開発による統合マーケティングマネジメントの進化を推進する。共著:基礎から学べる広告の総合講座(日経広告研究所)

Vision-Graphics

広告宣伝、Web行動、店舗・販促、CRM、売上データ等のマーケティング活動に関わるデータを統合・可視化するマーケティング・ダッシュボード

Vision-Graphics

m-Quad

構造モデリングなどを用いて現場マーケッターの意思決定を支援する 新しい形のMMM(Marketing Mix Modeling)サービス

m-Quad

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2018.03.07

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