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【第1回】デジタル上の評判形成を支援する、『エンゲージメント・コミュニケーション』

ソーシャルメディア時代とは何か、この時代の情報環境に置いて有効なコミュニケーション戦略とは何か、全4回にわたって、博報堂DYグループのデジタル・コミュニケーション・カンパニー、株式会社スパイスボックスの担当者が紐解いていく連載をお届します。
第1回目は、株式会社スパイスボックス 取締役副社長 執行役員でコミュニケーションディレクターの物延 秀が、情報環境の変化やソーシャルメディア時代のコミュニケーションの在り方について語ります。

スマホ、ソーシャルメディアで“評判形成”する時代へ

私が入社した2006年頃から、スパイスボックスはデジタルの総合広告会社として、インターネット領域の広告コミュニケーション全般に幅広く対応していました。しかし現在は、特にスマートフォンへの対応を前提としながら、ソーシャルメディアを通じた企業、ブランドの”評判形成“を行う『エンゲージメント・コミュニケーション』施策支援に軸足を置いています。アウトプットするものはイベントだったり、動画だったり、メディア設計などさまざまですが、”企業の評判をオーガニックに発生させる“ための戦略設計とクリエイティブ制作、情報流通設計に強みを持っています。

こうした“評判形成”を成功させるカギは、ソーシャルメディア上で企業やブランドが生活者に好意や共感を持って“自然と語られる”こと。デジタル・コミュニケーション領域で長く走り続けてきた私たちには、そのためのさまざまな知見が蓄積されています。

2つの大きな環境変化、「情報爆発」と「コモディティ化」

2000年代中頃に「Web 2.0」という考え方が提唱され、徐々にインターネットは、本来のコンセプトである「双方向型」への道を進み始めます。同時に、私たちを取り巻く社会環境にもさまざまな変化が起こるなか、21世紀に求められる広告コミュニケーションは明らかに形を変えています。

私たちは、大きく二つの変化を捉えていますが、一つは「情報爆発」です。 少し前のデータですが、平成18年に総務省が発表している「情報流通センサス」によると、インターネット普及前の平成8年から平成18年までの間に生活者が受け取る情報量は約1000倍にもなっています。これはSNS普及以前の数字です。しかし、生活者が消費できる情報量は基本的に変わりません。その後もさまざまなデバイス、SNSをはじめとする情報プラットフォームが次々と登場し、コンテンツをデリバーするプレイヤーが増え続けるなか、生活者は今ほとんどすべての情報をスルーしながら生活しているのです。

もう一つの大きな変化は「コモディティ化」です。過去には、テレビ・洗濯機・冷蔵庫が三種の神器と言われていました。これらの家電が爆発的に普及したのは、それまでの生活を変えるほどまったく新しい機能があったからです。この頃は、メーカーが新製品を開発すれば、それだけで生活者の興味を引くことができました。しかし現在では、冷蔵庫だけをとってみてもさまざまなブランドの商品がひしめき合っており、完全にコモディティ化された世界になっています。こうなると、生活者に向けて商品の名前や性能を一方的に伝えるだけで、その情報が生活者のなかに深く浸透していくことを期待することはとても難しいでしょう。

かつては情報の受信者であった生活者にも大きな変化が起きています。Yahoo!やGoogleなどのポータルサイトが人々の生活に浸透し、2008年にはiPhoneが日本に上陸しました。ご存知のとおり、iPhoneは単なる小型電話ではなく、ポータブル高性能PCです。2008年のiPhone日本上陸を契機に、スマートフォンを誰もが持つようになり、一般の人でも高解像度の写真を撮影してデコレーションしたり、映像を撮影して動画を作成したりすることが簡単にできるようになりました。

そうした、誰もが“手軽にクリエイションができる”時代に、誰でも“手軽に情報発信ができる”ソーシャルメディアの台頭が始まります。日本では Twitter 、Facebook 、Instagram の順番で普及し、2017年には『インスタ映え』が流行語大賞にもなりました。今では、一生活者の情報発信が時に巨大メディアを超える影響力を持つことがあるほどです。

こうした社会や情報環境の変化を踏まえると、今、商品やサービスの情報を生活者のもとに確実に届けるためには、ソーシャルメディア上で、情報の発信主体でもある生活者にいかに好意や共感を持って自発的に“語られる”か、が決定的に重要です。そのために、商品情報を知ってもらうことだけではなく、時流に合わせて企業やブランド、商品そのもののストーリーに“共感”してもらうための戦略が大事になってきています。 同じ商品でも意味を再開発し、新しいストーリーを伝えていく必要があるのです。

1枚の投稿が66万ものエンゲージメント数を叩き出したOLD NAVYの事例

また、情報を的確かつ、より多くのターゲットに伝えるという意味では、評判形成のボリュームも重要です。 過去には、「どれだけPVが伸びたのか」、「どれだけの媒体に掲載されたのか」、「動画がどれだけ再生されたのか」などが一つの指標になっていました。しかし、今後は、これらは重要な指標ではないかもしれません。

スパイスボックスでは、FacebookとTwitter、Instagramでのいいねやシェア、コメント、リツイートなどの総アクション数に加え、対象コンテンツについて取り上げた記事に対するSNS上における口コミなどの総数を「エンゲージメント数」として捉えて、定量的に分析をしています。生活者にその企業やブランドの情報がどの程度広まったのか、つまり、評判形成されたのか、ということと相関の高いアクチュアルデータの一つとして、「エンゲージメント数」が重要な指標となっているからです。

SNS上のエンゲージメント数の計測イメージ

このエンゲージメント数(評判ボリューム)を、たった一枚のクリエイティブで大量に獲得した分かりやすい事例があります。2016年に話題になったアメリカのOLD NAVYの事例です。
まず、こちらのリンクを開いてみてください。
https://twitter.com/OldNavy/status/726063493955342336?ref_src=twsrc%5Etfw

このTwitter投稿はセール告知ですが、エンゲージメント数が投稿から約1ヶ月で66万に達するほど話題になりました。 なぜだかわかりますか?

リンク先の写真には、黒人のお母さんと白人のお父さん、その間に生まれた子どもという家族構成をあえて起用しています。この1枚の写真が、主に白人至上主義を支持するアメリカの人々を刺激することになり、差別的なコメントが相次ぎ一時炎上状態となりました。

しかしその後、ある投稿により一気に形勢逆転となる展開が待っていました。この広告を務めたモデルのグレース・マハリーさんが、自身のInstagramに「異人種間の愛や多文化主義、すべての民族を支えようとする精神の象徴になれたことを誇りに思います」というコメントに、 #lovewins というハッシュタグを添えて投稿したのです。それに共感した同じ異人種間結婚の家族たちが #lovewins のハッシュタグとともに、自分たちの家族写真を添えて続々と投稿しはじめました。

この流れを受け、OLD NAVYは「われわれには多様性と受容性を支持する誇らしい歴史がある」とコメントを出しました。 その結果、多くの人々がOLD NAVYを応援するというムーブメントが起こったのです。

この施策が爆発的なエンゲージメントを獲得した背景には、当時行われていたアメリカ合衆国大統領選挙が影響していると考えられます。当時、トランプ陣営からは白人至上主義とも捉えられるようなさまざまな人種差別発言があり、多くのアメリカ国民から批判の声が上がっていました。時代背景として、そもそもそういう問題意識がない状態だったとしたら、これほどのムーブメントにはならなかったと思います。

このポストは、時間をかけて準備して戦略を練って作られたものではなく、 時代の空気を読みながらスピード感を持って打ち出されたもののようです。その結果、OLD NAVYは、多くのアメリカ国民からブランドが持つ思想やスタンスへの大きな共感を得ることができました。

ソーシャルメディア時代の情報の広げ方

ソーシャルメディア時代に、企業やブランドが真に伝えたいメッセージをターゲットに届けるための一つの方法が「エンゲージメント・コミュニケーション」施策です。事例のようにスピード感を持ってこれらの施策を実施するには、ソーシャルメディア上で顕在化している生活者の興味や行動をどう捉えるか、常に意識していくことが重要です。

スパイスボックスでは、企業やブランドが伝えたい要素のほかに、ソーシャルメディア上で顕在化している“今”の生活者のトレンドや問題意識、社会状況を掛け算しながらコミュニケーション施策の戦略設計を行っていきます。次回、連載第2回では、この「エンゲージメント・コミュニケーション」施策の具体的なプランニング方法をご紹介します。

プロフィール

物延 秀(もののべ・しゅう)
株式会社スパイスボックス
取締役副社長 執行役員

2006年 多摩美術大学卒業後、スパイスボックス入社。博報堂に出向し、大手飲料・化粧品メーカーのデジタル・プランニング・プロデュースを担当後、2012年以降はソーシャルメディアを中心とした「共感」と「話題」を生むコンテンツのプランニングとプロデュース、自社ソリューション開発を統括。2016年に事業統括責任者および執行役員に就任。2017年より現職。著書:『新ヒットの方程式』~ソーシャルメディア時代は、「モノ」を売るな「共感」を売れ!~(宝島社)、連載:MarkeZine「シェア拡散されるブランドストーリー」(https://markezine.jp/article/corner/605

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