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普段の食事のための買い物をしたことがある方なら、お店に入る前には知らなかった商品に売り場で出会ったり、決めていなかった夜ごはんのメニューがお店を出るときには決まっていたりした経験が何度もあるでしょう。そんな経験は、毎日の暮らしを楽しくしてくれるはずです。そんな出会いや提案の裏側を支える役割をしているのが、私たちショッパーインサイトです。
読売広告社の子会社として、我々はメーカー様が自社商品をどのような人にどのように売り込むと魅力的に見えるのか、買い物をする一人ひとりのことをより知るためのマーケティングデータサービスを  real shopper SMというサービス名でご提供しています。

real shopper SMとはどんなサービスか

ショッパーインサイトがご提供しているreal shopper SMサービス(以下rsSM)は、全国の食品スーパーマーケット様のID-POSデータを基にした購買履歴データベースです。
rsSMに搭載されているデータ規模は日本最大級※1、匿名化された多数の買い物客の普段の食品購入動向を詳細に分析できるという特徴があります。加えて、i-codeという独自の商品分類を採用することにより、日本で初めて※2、生鮮食品や惣菜を含むすべての食品を分析対象とすることができるという特徴があります。これにより、これまでは分析できなかった食品カテゴリー間の関連性が分析できる唯一のデータとなっています。
たとえば、サウザンドレッシングをよく買う人が普段よく買う野菜は何か?といった分析や、ビールをよく飲む人が寒い時期にビールと一緒に買うのは揚げ物か?焼き鳥か?といった分析ができるのです。
このような分析を使い、食品メーカー様は自社の商品を買ってくれる人の食嗜好を知ることができますので、商品の魅力をどのように伝えるとよいのかを考えたり、どんな食べ方でお勧めすると購入意欲が高まるのかを予測したりすることが出来るようになります。
値引きしても魅力が感じられないものは買ってもらえない時代に、どうすれば商品を魅力的に見せられるのかの仮説を立てる為のデータとして、活用いただいています。
※1 2017年株式会社ショッパーインサイト調べ
※2 2013年株式会社アイディーズ調べ

rsSMデータの分析例~バレンタインデーをテーマに

それでは実際にどのようなことがわかるのか、具体的に分析を進めてみましょう。
今回の分析テーマとしてバレンタインデー(以下VD)のチョコレートの買われ方を取り上げてみます。百貨店やコンビニエンスストアでは有名ブランドのチョコレートギフトが売場に並ぶ時期ですが、食品スーパーではどんな人が、どのようなチョコレートを買っているのでしょうか。

■バレンタインデーのインパクト
まず、チョコレートカテゴリにとってVDがどのくらい重要な催事イベントなのかを確認してみます。

図1は2016年1月から2017年12月までの2年間の、rsSMでの週別のチョコレート全体の買上動向ですが、2016年6週と2017年6週のタイミングで買上が大きく増えていることがわかります。この週にVDがあり、チョコレートメーカーにとってVDはとても大切なイベントであることがわかります。

■バレンタインデーに特徴的に売れるチョコレートの種類
それではもう少し掘り下げて、チョコレートの種類別に買上動向を確認してみます。
図2はチョコレートのタイプ別の買上動向推移です。

年間を通して買われているのがチョコ菓子で、チョコビスケット等、チョコレート以外の素材の割合が高い商品をチョコ菓子として分類しています。VD時期でも一番買われているのはチョコ菓子ですが、VD時期だけが突出して買われているわけではありません。

売上規模が大きい上にVD時期だけに特化して買われているチョコレートは、図3に示したように板チョコです。VD時期以外の板チョコの買上は低いので、VDのために買われるのが板チョコだと考えられます。
念のため、VD時期に板チョコを買った人は普段も板チョコを買っているかを確認したのが図4です。

やはり普段は板チョコを買わない人が、VDだから板チョコを買っていることがわかります。図4からもう一つ読み取れるのが、16年のVDと17年のVDの両方とも板チョコを買った人は非常に少ない、ということです。
ここで少し考えてみてください。
VDに板チョコをスーパーで買っているということは、手作りのチョコレートを作っているはずです。手作りチョコを作る年代は、おおよそ幼稚園から高校生の期間ではないでしょうか。とすると、2年連続で手作りチョコを作る人が多くてもよいところ、ほとんどの人は1年しか手作りチョコを作っていないようです。(なお、集計対象はこの2年間の間、月1回以上何らかの買い物をしている人です。)なぜかはここではわかりませんが、手作りチョコが継続されない理由を解消することで、新たなバレンタインチョコレートニーズを掘り起こすことができるかもしれません。

■板チョコと同時に買われるものは?
あらためてVD当日に目を向けてみましょう。
板チョコを購入する際、他にどんな食品を買っているのかを確認してみます。
表1は、VD期間に板チョコを買う際、同時に買われやすかった食品の分類を示しているランキングです。

生鮮食品や総菜を含む全食品の中から、同時に買われやすかったものが表にあがっている食品群となります。デザート素材の分類には製菓用のデコレーション素材などが含まれています。また洋風ミックス粉の分類にはホットケーキミックスが含まれています。ホイップクリームを使って生チョコを作り、デコレーションしている様子が浮かんできます。またシリアルはチョコバーを作るために買われていると思われます。17年のVDでは、チョコバーを作るのが流行だといわれていましたが、実際の買上率からするとまだまだ流行とは言えなさそうです。
いずれにしても、板チョコだけでなく、なんらかの素材をプラスして手作りチョコレートを作るのが定番的であることがわかります。

■いつからVDの準備をするのか?
VD期間の板チョコの購入率を日別に表したのが図5ですが、9日から購入率が上がり始め、13日にピークになる傾向があります。


この動きと合わせて、板チョコ以外の手作りチョコ素材が同時に買われる割合が高くなり、ピーク時には50%ほどのバスケットで手作りチョコ素材が同時に買われています。
11日までは上昇傾向、11日から13日は横ばいとなっていることと、VD期間前には板チョコはあまり買われておらず、実際確認してもVD期間中に複数回板チョコを買う人は少数派で事前に試作しないことから、手作りチョコ制作にとりかかるのはVD3日前から、一発勝負で手作りしている様子が浮かんできます。

■板チョコ以外の素材の組み合わせは?
実際に手作りチョコの素材を売り込む場合、ホットケーキミックス粉とナッツ類を組み合わせて売るのが良いのか、生クリームとナッツ類を組み合わせて売るのが良いのか、が問題になります。
そこで、手作りチョコ素材間のよく買われる組み合わせを確認してみたのが表2です。

各商品分類は板チョコと併買されたバスケットが多い順に並んでいます。
板チョコと同時にホイップクリームが買われたとき、そのうちの33.9%のバスケットにデザート素材も入った、という見方です。ホイップクリームと組み合わせて買われやすいのは、デコレーション用のデザート素材、次いでバター、ココアとなっています。バターも入れてコクを出した生チョコを作っているのでしょうか。ココアの併買率が低いですが、家庭内在庫があるのかそれともココアは省いているのかは不明です。
他にはナッツ類はデザート素材と関連が強く、トッピングとして使われるケースが多く、また小麦粉とシリアルの関連が強いものの小麦粉とシリアル同士は関連が弱いことから、ブラウニーに使われるパターンとチョコレートバーに使われるパターンがありそう、といったことが見えてきます。


■データからアクションへ
こういった分析をアクションにつなげて初めて分析を行う意味があります。
VDの準備状況からVD時期に板チョコを売り込むための組み立てを考えるならば、2月10日までの間に手作りチョコの制作意欲を高め、実際に作るチョコレートをどんなものにするのかイメージさせておき、2月11日からは売場で最後の決断をしてもらう、という3ステップが必要なように思われます。
板チョコとの併買商品状況からは、デコレーション用品と手作りチョコの種類は連動しない傾向が見て取れるため、デコレーション用品売り場と手作りチョコ種類別の作り方提案コーナーの大きく二つの売り場内訴求が理想的だということがわかりますし、今年手作りチョコを作ろうという人は昨年はチョコレートを作っていない初心者が多いため、成功するために適した商品とその使い方を売場で情報伝達することも重要になってくるでしょう。
また、なぜ2年連続して手作りチョコを作らないのかを調べることで、潜在化している手作りチョコへの阻害要因が見えてくるかもしれません。
このように、自社商品カテゴリーだけではなく関連する商品群を含めた実際の購買行動を分析することで、これまで見落としていた訴求ポイントや訴求の切り口、新しいチャンス発見を数字の裏付けをもってできるようになることに、ID-POS購買履歴データ分析の価値があるのです。

 

プロフィール

西川富之(にしかわとみゆき)
株式会社ショッパーインサイト
主席コンサルタント

2013年のショッパーインサイト設立以来、商品の作り手が買い手(ショッパー)をよりよく理解するために、分析システムや分析視点を開発・提供し続けている。
アクションにつながる分析結果をご提供する、をモットーに、食品業界を中心としたお得意先様に満足いただけるよう日々データの読み解きに取り組んでいる。

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