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博報堂DYグループは2017年12月、グループ横断型の新組織「デジタルロケーションメディア・ビジネスセンター」を設立しました。生活者の、移動しながら変化する生活シーンと無意識下での気分の移り変わりを重視し、その動線上にあるメディアを再構築、また、新たなメディアビジネス開発を支援する専門組織です。中でもデジタルサイネージやモバイルなど、生活動線上の接点を大きく拡大させる可能性をもつ“デジタルロケーションメディア”に着目し、活動しています。

本センター設立の経緯や今後の展望などについて、博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター 開発6グループのグループマネージャー兼デジタルロケーションメディア・ビジネスセンターのリーダーを務める佐藤智施と、博報堂 統合プラニング局 ユーザーエクスペリエンスデザイン部長で本センターにも所属する入江謙太が語りました。

潜在ニーズに訴えることが出来る、デジタルロケーションメディア

佐藤
インターネットメディアを中心としたデジタルメディアと、屋外メディアなどの生活動線上にあるフィジカルメディアは、これまで別物とされてきました。しかし、近年デジタル化が加速しIoTが進む中、いわゆるデジタルサイネ―ジなど、リアル空間にデジタル接点が生まれ、街や今自分がいる場所といったような、あらゆるものがメディア化します。こうした動きに向き合うために生まれたのが、当デジタルロケーションメディア・ビジネスセンター(以下、当センター)です。
ちなみに、デジタルロケーションメディアとは、屋外メディア、交通メディア、折込・DM、インストアメディアなどデジタル化にともない新たに生成されるメディアのことで、デジタルサイネージやモバイルなど、生活動線上の接点を大きく拡大させる可能性をもつメディアです。主な活動内容は、当領域における「全体構想~アクションプラン」の立案、外部協力会社とのネットワーク構築、事業/ソリューション開発の模索・インキュベーションを担っています。

入江
その他にも活動内容はさまざまですが、我々の活動の一つに広告効果測定の検証があります。デジタル化が進む以前から、屋外メディアって実はどのような広告効果があるのか、計測する手段が確立されていませんでした。ブランド認知を高めるためなのか、商品を購入する最後の一押しに有効なのか、販売店と相乗効果があるのか。ですが、これまで大きなブランド、大きな企業であればあるほど、テレビCMと屋外や交通メディアなどはセットで活用される機会が多くありました。効果は明確に証明できていなくても、我々も広告主も実感として屋外や交通メディアの可能性を感じていたのだと思います。
デジタル化で様々なデータが測定できるようになったことを機に、インターネットメディアと同様に広告効果を測る指標を作り、「屋外や交通メディアにはこういう効果があります」と具体的な数字でお伝えする必要性が高まってきました。

佐藤
屋外や交通メディアも含め、デジタルロケーションメディアでは、広告指標作りとともに、広告配信のネットワーク化やオンライン取引システム等を実現する“メディアを束ねる仕組み”が必要だと理解しています。広告主に自由にメディアを利活用してもらうには、より自由にプランニングとバイイングができる環境が必要ですから。そのためには、フィジカルメディアをデジタル化することによって、広告効果を引き上げて価値を高めていくこと、さらにその先はネットワーク化が必要不可欠です。このような環境を作るためのインキュベーションも当センターのミッションとしています。

入江
われわれはデジタルロケーションメディアに大きな可能性を感じていますが、中でも重視しているのが、デジタルロケーションメディアが持つ“受動視認性”です。この特徴により、顕在化されたニーズのみならず、まだ欲しいと明確には本人が認識していない潜在的なニーズに訴えることができるのではないかと考えています。インターネットメディアの場合、例えば2週間前に検索された商品をレコメンドされるなど、元々欲しいと思っていた商品が薦められることが多い。つまり顕在化したニーズを再確認させてくれるんですね。それが購入に繋がることはもちろんありますが、その一方で既に別のサイトでその商品を買っていたり、すっかり買う気がなくなっていたりするかもしれない。

佐藤
デジタルロケーションメディアの特性は、「心に残る」ということなんですよね。広告を見て道端で“ハッ”と気づく、セレンディピティ体験を提供できるんです。
そのような体験を実現していくために、どのようなタイミングと場所で情報提供するのか。そのために有効なのが生活者の“生活動線上のシーン”を考慮することです。

入江
だいたいの人は家から学校など、普段行動するところ、生活動線が決まっています。ですので、その動線上にある広告は毎日見ることになる。この「何度も見る」や「長期間継続的に見る」ということは、今まで広告コミュニケーションであまり考えられてこなかった視点です。生活動線を考えた場合、いつも持ち歩くスマートフォンでの広告についても、屋外や交通広告との組み合わせで考えたほうがいい。こうした状況を踏まえ、デジタルロケーションメディアにふさわしい新しいクリエイティブを考えるタイミングに来ていると思います。

博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター 開発6グループのグループマネージャー兼デジタルロケーションメディア・ビジネスセンターのリーダーを務める佐藤智施。

“モード”とは、生活動線上のシーンやインサイトの集合体である。

佐藤
生活動線と言えば、例えば平日の朝に地下鉄などの電車に乗っている人であれば通勤・通学の方が多いでしょう。一方で休日、電車に乗っている人であれば、買い物や遊びに行く人がかなり乗っていますよね。同じ電車に乗っていても、生活動線上シーンの違いで取るべきコミュニケーションのアプローチが変わるべきだと思っています。

入江
それぞれのシーンにおいて、個々の心理状態が違いますからね。生活者を「生活動線で変化していく存在」として捉えなおすことが出来ないかと考え、2017年の9〜10月にかけて、その実態を明らかにする調査を行いました(レポートはこちら)。
この調査で分かったことは、生活シーンや気分に応じて情報の受け取り方に変化がある、ということです。「同じ路線に乗っていても通勤・通学時と帰宅時で気分が異なる」という回答が6割以上あり、「同じ場所でも訪れる状況によってイメージが異なる」という回答も6割以上あったので、佐藤さんが言っていることを裏付けるような結果ですね。また、平日の一日の平均外出時間が5時間、平均移動時間は1時間にのぼることなども分かりました。

佐藤
今回の調査結果から「生活者には生活動線上のロケーションや気分に応じて変わる6つの『モード』がある」と分析しましたよね。このモードという考え方は入江さんの発案なんですよね。

入江
調査前は「生活者の、一日で変化していく気分みたいなものを抽出できないかなぁ」と何となく考えていました。ただ調査結果から実際にそういうものがあると分かったのですが、気分という言葉だと「個々人がたまたまそう感じる」というニュアンスが強いなと考えるようになりました。もっと一般的な、大きな枠で捉えたい、と考えたときに思い浮かんだのが「モード」という考え方です。そして、“生活動線上のシーンやインサイトの集合体が「モード」である”、と定義しました。
時間を記録するタイムスタンプと、どこを移動しているかという場所の情報だけではなかなか捉えられないけれど、生活動線という観点と結びつければ、よりはっきりと生活者の顔が見えてくる。そういった考え方を具体化したものがモードなんです。

佐藤
メディアサービス視点だと、例えば表参道や渋谷の屋外広告の場合、現状では街のイメージで広告コミュニケーションが決まっている傾向があります。でも、果たしてそれが正しいのか。平日の朝、週末の夜など、時間帯によって街の顔は変わります。そういったことを考慮して広告コミュニケーションを推進するのがモードの考え方ですよね。

入江
はい。でも、現状だとモードを捉えた広告コミュニケーションを完璧に推進するのはまだ難しいですね。例えば電車の車内広告だと、“沿線と期間”が購入の主な指標になっているため、メディアを売る側のメディア設計と、広告主のニーズが合致させることが非常に困難なことが多いです。

博報堂 統合プラニング局 ユーザーエクスペリエンスデザイン部長の入江謙太。当センターのメンバーを兼ねる。

<後編>へ続く

プロフィール

佐藤 智施 (さとう・さとし)
博報堂DYホールディングス
マーケティング・テクノロジー・センター
グループマネージャー

大学卒業後、メーカー、ITベンチャー、外資系マーケティングサービス、M&Aコンサルティング企業で、事業開発およびサービス開発のキャリアを積む。
2013年5月、株式会社博報堂入社、2017年4月から出向して現職。

 

入江 謙太(いりえ・けんた)
博報堂
統合プラニング局ユーザーエクスペリエンスデザイン部長

様々な業種のクライアントとともに、事業コンサルティング、企業・商品ブランディング、商品・サービス開発、マーケティングからクリエイティブ・デジタルまで一貫したコミュニケーション・プランニングを行ってきた。近年は、プロモーションを超えた、UX視点でのサービス領域の開発に積極的に取り組み、博報堂の次世代マーケティングを現場から牽引している。

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