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なぜ今、デジタルでブランディングなのか?


 2017年はデジタル広告史において大きな転換点となった1年であったといえます。引き続きモバイルシフトが進展し、運用型広告や動画広告が市場の継続的成長を牽引する一方で、年始から世界中で吹き荒れた『デジタル広告の品質や透明性に関する問題』は、大手広告主を中心にデジタル広告の現状に大きな一石を投じる結果となりました。
 一方で、博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所のメディア定点調査において、生活者のメディア別接触時間がテレビを大きく上回るまでに成長したデジタルメディアは、ターゲットリーチの観点からも、広告効果の観点からも、いまや広告コミュニケーションを行う上で不可避且つ不可欠な地位を確立しています。これは同時に、これまでデジタル広告が主に担ってきたローワーファネル領域(顕在層への行動喚起)への効果だけでなく、アッパーファネル領域(潜在層への態度変容)への効果についても、決して無視できない存在になってきていることを意味しています。
 こういった流れを受け、デジタルメディア、プラットフォーマー各社は、これまでデジタル広告のなかで主流であったサイト流入を促進するクリック課金型のメニューに加え、よりプレミアム性や視認性を重視したブランディング効果向上のためのメニューを積極的に開発し、本格的な啓蒙活動及びセールス活動を開始しつつあります。
 さらに、これまでデジタル広告における行動系のパフォーマンスを追求してきたネット専業系代理店各社も、デジタル広告を活用したブランディング効果といったテーマに対応する専門組織を新たに組成し、関連ソリューションを次々とリリースしています。
上記のように、デジタル広告を取り巻く市場環境、メディア環境、広告主環境、競合環境、すべての側面において、「デジタルを活用したブランディング」の動きが本格化しつつあるといえます。

「デジタルでブランディングする」とはどういうことか?


 では、「デジタルでブランディングする」というのは実際どういうことなのでしょうか?それは、「デジタル広告を活用してターゲットに効率的にリーチして、短期及び中長期で態度変容及び行動喚起を促すこと」、つまりテレビCMをはじめとしてこれまでマス広告で行っていたことをデジタル広告でも同様に行うこと、に尽きます。
 当然、これまでもデジタル広告がそういった目的で活用されてきたことはありましたが、そんなときでさえ、デジタル広告の効果を『CPC(Cost Per Click)』による流入効果で、また動画広告であれば『CPV(Cost Per View)』や視聴効率といった容易に測定可能な指標でその成果を判断してきたのがこれまでの実状といえます。
 しかし、ブランディングを実施するにあたって必要最低限の要素であり、最重要指標となるのは「ターゲットリーチ」です。いかにターゲットとするユーザーに効率的にリーチできるか?そして次に、該当ブランドが競合に比して、市場シェアを維持・拡大するために必要なブランド固有の課題となる指標(認知、興味、好意、購入意向等)をいかに引き上げていけるのか?デジタルを活用したブランディングが果たすべき役割はこの2点に集約されます。そして、この「効率的なターゲットリーチ」と「課題となるブランド指標の向上」を起点として、マス広告と同様にデジタル広告のプラニングを行い、その結果を精緻に測定して、次回の出稿の改善につなげていく、ということがいま求められています。
 これを聞いて、『そんなことあたりまえなのでは?』と思う方々も多いかもしれません。しかし、このあたりまえのことをあたりまえにできるようになったのが実は、最近のことなのです。というのも、デジタル広告における真の意味でのターゲットリーチを測定するには以下の3つの要素を考えなくてはいけませんが、それを測定する技術が確立してきたのが直近のことだからです。その3つの要素とは、①オンターゲット率、②ビューアビリティ、③ユニークリーチ、です。
 ①オンターゲット率とは、あらかじめ設定したターゲットへ実際に広告を表示できたのかという指標です。デジタル広告は盲目的にターゲティング精度が高いと思われがちですが、メディアによってターゲティングの基となるデータソースは様々で、実際のオンターゲット率もメディアによって大きく異なってくるのが実情です。
 ②ビューアビリティとは、その名の通り広告がしっかりと視認されることです。広告が表示されても視認されないことには当然リーチしたとはいえません。これもメディアやメニューによってその値はさまざまであり、最近ではビューアビリティを基準として買付けできる広告メニューというものも徐々に登場しはじめています。
 ③ユニークリーチとは、複数の媒体を横断的に出稿した際、各媒体での重複リーチを省いた純粋なリーチの総体です。通常レポートされる各メディア、メニューごとにリーチはそれぞれ個別のものであり、それらの合計は延べリーチにすぎません。
 これら3つの要素をしっかりと考慮したものがデジタル広告における「真のターゲットリーチ」といえます。そしてこれらを客観的に測定・評価するために、オンターゲット率とユニークリーチの測定にはDigital Ad Ratings(Nielsen社)、ビューアビリティの測定には、IAS(Integral Ad Science社)やMOAT(Oracle社)といったグローバルでスタンダード化している計測サービスを活用します。これらも現状では、すべてのメディア、デバイスを網羅的に対応するまでには至っていないのですが、ある程度のカバレッジを持つにいたったのが最近のことなのです。
 こういったツールを駆使してターゲットリーチを正確に測定し、あわせて各広告メニューの態度変容効果を横断的に調査測定してその効果、効率を検証していくことでデジタル広告を活用したブランディングのプラニング及びメジャメントの基盤が確立します。そして、この考え方をデジタル単体の世界だけでなく、テレビCMをはじめとしたマス広告のプラニングと組み合せて考えたり、比較して考えたりしていくことがこれからの統合プラニングのひとつの大きな潮流といえます。

             <ターゲットリーチ算定に必要な3つの要素>

             <デジタル広告横断での態度変容調査>

博報堂DYデジタル が取り組む「デジタルブランディング」

 こういったさまざまな環境変化やテクノロジーの進化に向き合い新たな時代を率先的に切り拓くべく、博報堂DYデジタルでは、デジタルをブランディングに活用するための
Hakuhodo DY digital_branding」という活動体を昨年末からスタートいたしました。全社横断でアカウント、メディア、クリエイティブ、テクノロジー、データ、ストラテジーといった各領域のスペシャリストを集結させた専門チーム「digital branding next(通称dbx)」が主体となって、この取り組みを推進しています。
 「Hakuhodo DY digital_branding」の具体的な活動としては、①メディアプラニング、②クリエイティブ開発、③メジャメントの3つの領域に対し、それぞれデジタルメディア、クロスメディア双方において独自のノウハウを蓄積していくことでプラニングウェイを確立し、その過程において競争力の高いソリューションを実際に開発していくことです。

                                                        <専門組織 digital branding next>


             <Hakuhodo DY digital_branding 活動概要>

 今回はこの活動のなかでも、クリエイティブ開発領域についての取り組みとして後続リリースした、「動画広告の最適解発掘に向けた取り組み」についてご紹介します。これは、博報堂DYグループでこれまで実施した1,500件以上のYouTubeのブランドリフト調査を集合データ化して分析するといったもので、どういった動画広告が企業のブランディングに効果的に寄与するかを科学的に解明していく試みになります。これによって、たとえば「飲料といった消費財において、ブランド認知を上げるために最適な動画フォーマットはなにか?」であるとか、「自動車といった耐久財において、ブランド好意を上げるために最適なクリエイティブ要素はなにか?」といったように、該当する業種・商材と目的とするブランド指標ごとに効果的な動画クリエイティブを制作する糸口を実際のアクチュアルデータをもとに導きだすことができます。本分析は今後も継続的にデータを拡充していく予定で、さまざまなプラットフォームやフォーマットに対応していくとともに、マスメディアの広告データや実購買データとデジタル上の動画広告の関係性の解明にもその分析対象を拡張していく予定です。

                                            <動画広告要素別のブランド効果検証>

                                              <動画広告メニューとKPIの最適化>

 デジタルを活用したブランディングということ自体は当然ながら、今に始まったことではありません。しかしながら、今まさにさまざまな環境変化と技術進化を受け、今後この領域が加速度的に進化していくタイミングにきているといえます。こういった状況を受け、博報堂DYグループでは、2017年8月にリリースしたデジタル広告の透明性や品質改善に全方位で対応する「Hakuhodo DY MQM_」(MQM:Media Quality Management)もこの取り組みに包含していくことで、広告主企業のマーケティング成果向上とともに業界の健全な発展にむけて本課題に取り組んでまいります。そして、「デジタルでブランディングする」を推進する活動体である「Hakuhodo DY digital_branding」において得られた知見や開発されたソリューションは今後も随時、積極的に発信していきたいと思います。

プロフィール

藤井 亮(ふじい りょう)
博報堂DYデジタル ソリューションプラニング本部
インテグレーテッドプラニンググループ グループリーダー

2005年博報堂入社。外資系・ダイレクト系をはじめマーケティングROIを重視するクライアントのアカウント業務に従事。 2009年、デジタル・ダイレクト領域に特化したプラニング部署に異動、様々な業種・規模のクライアントビジネスに携わり、PDCAを中心に据えた統合マーケティング型業務を実践。2016年より現職、デジタルを起点とした次世代型統合マーケティング推進及びそれによるマーケティング効果最大化をミッションとした各種プラニング業務に従事。

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