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概念はわかった、それは本当に効くのか?

少し間をあけてしまいました。デジタル・アナログ組み合わせの有効性を考察する連載の2回目です。
(本稿を初めてご覧の方は、よろしければ連載第1回もご覧ください。)

連載第1回では、デジタルシフトによるコミュニケーションの変化の一端と、デジタル施策で顕在化しやすい課題の洗い出しを行いました。加えて生活者はデジタルとアナログを縦横無尽に行き来していることから、デジタル化時代だからこそ、デジタル施策に閉じることなく、ましてやアナログ施策と対峙する視点でもなく、むしろ「組み合わせ」が大事という提起をさせていただきました。
高い情報収集能力をもつ生活者はオンからオフへ、オフからオンへと、自分に合った購買体験を意識的に、あるいは無意識に選び取っています。ビジネスの課題解決のためには、顧客を軸にしたデジタルとアナログ施策の組み合わせの具体的な解を求めていくことが必要と考えています。
実際のところ、デジタル施策に傾注する企業が自ら解を求めるべく、実証を試みる事例が増えているようです。マーケティング専門誌「MarkeZine」では、紙面上で実験してみたい企業を募集したところ、多くのエントリーがあったようです。

そもそも、デジタル・アナログの組み合わせが効果を発揮するポイントは何でしょうか。
様々な意見があると思いますが、

  1. オンラインで到達し得ない層へのアナログ施策による補完
  2. オンラインの閲読志向・行動特性を踏まえ、アナログで届ける情報も個別最適化
  3. 五感に訴えるアナログの仕掛けを交えることで、コミュニケーションをよりリッチに

このあたりがポイントでは!?と考えています。

「概念はわかった、でも・・・本当に、有効なのか?」

私が言うまでもなく、デジタルとアナログの組み合わせの大切さは充分に語られていると思います。
では実際にどうなのか? いくつかの事例を。

事例から学びを得る

※事例について:
NDAの観点から、講演やweb記事で公開されている事例を任意に選択し、更に伏字 & 抽象化した上での記載となります。詳しく知りたい場合は、ぜひ記事下部より、お問い合わせください。

デジタルとアナログ組み合わせに関する実験の事例をご紹介します。わかりやすさも考慮し、デジタル施策は「メール」、アナログ施策は「DM」を用いた組み合わせ事例に焦点をあてました。

1. 組み合わせたほうが良いのか?

某BtoB向けクラウドソリューションを展開する企業は、マーケティングオートメーションを導入し、獲得した商談見込み客にオンライン上でリードナーチャリングを展開しています。 見込み客の状態に応じたシナリオを設計し、タイミングよく情報を届けることで成果を上げていますが、一方でメール未開封・サイト未訪問などオンラインでコミュニケーションが出来なくなった「オンライン not アクティブ」が徐々に増加。対策が後手にまわっていることが大きな課題となっていました。
そこで、図表1のように「オンライン not アクティブ」を対象とし、商談・受注を目的としたキャンペーンを、(1)メールで届けるグループ(いつもどおりの手法)、(2)DMで届けるグループ(メールの内容を置き換える)、(3)メールとDMを組み合わせて届けるグループの3つに分けてテストをしました。(3)のグループの組み合わせとは、DMを発送の上、到着直後に「お手紙はご覧になりましたか?」というリマインドをメールで行う手法となります。
結果は、(3)の組み合わせたグループが、(1)のグループに比べサイトアクセスが1.8倍に。加えてその後の受注にも大きな差が生まれました。「ただでさえハードルが高い、オンラインに反応しなくなった層にサイトアクセスを促す」ことが、メールとDMを組み合わせることで従来より1.8倍も向上している点は評価に値すると考えています。「それってメールとDMという複数の接点がもてたからでは?」と言われればその通りですが、その後の受注まで差がついている点からも意味がありそうです。デジタルとアナログの特性の違いは、連載第1回目に整理の通りですが、紙媒体が有する保存性、おもてなし感がオンライン施策にプラスされたことが要因の一つと考えられます。

2. 組み合わせの順番はあるのか? アナログ(DM)ならではの効能は?

BtoC向けサービスを展開する企業の場合です。マーケティングオートメーションを導入し、過去の購買履歴や嗜好性に基づく緻密な施策を推進しています。既に前述のケースと類似した実験で「オンライン not アクティブ」へのDMの成果を把握されたうえで、「情報を届けるチャネルの順番はあるのか?」といった視点を組み入れたテストを新たに取り組みました。(1)従来どおりメールのみのグループ、(2)DM→(数日後に)メールのグループ、(3)メール→(数日後に)DMのグループと分けて、同じ条件下でキャンペーンを行いました。
結果、(2)のDM→メールという順番のグループが最も良い反応となりました。次に良かったのは(3)のグループです。どうやら先にDM(アナログ施策)を届けたほうがよさそうです。
メールは、届いた1~2日間が反応を得る勝負のタイミングです。瞬間的なアテンションで価値を創る必要があります。一方でDMは「お手紙」というフィジカルな存在であることから、保存性が高いです。しばらく時間がたってからでも反応を得ることができます。
ここからは仮説ですが、最初に保存性が高いDMが届くことで記憶に留まり、あとから瞬発力のあるメールが「リマインド」の役割を担う。組み合わせの効力が発揮されるパターンであると考えられます。本実験では対象者に後日アンケートを行いました。DMが先に届く(2)のグループは、最も「ロイヤリティが高い」「記憶している割合が高い」という結果も得ています。(※有意差検定有り)。このことからもオンライン施策のみのリーチに傾注することなく、組み合わせることが大切であると気づかせてくれます。

紹介した事例と似たような取り組みは、デジタルの印象が強い企業でさえ取り組みが始まっていると述べましたが、日本郵便株式会社が主催する「全日本DM大賞」のホームページでは、過去の受賞作を実際に確認することができ、ヒントを得ることができます。

ECとリアル店舗でも…

本稿ではメール(デジタル)、DM(アナログ)における事例を主に取り上げていますが、「ECと店舗」でも組み合わせた体験が重要であることは多くの例で確認できています。あるセレクトショップでは、ECとリアル店舗での顧客ID×購買データを統合し、デジタルとアナログの「買い回り」を可視化しています。

一端のみのご紹介となりますが、
購買履歴から、

  • ECとリアル店舗両方の購買体験があると生涯顧客価値(LTV)が相対的に高い。
  • EC購買→リアル店舗購買より、リアル店舗購買→EC購買の順番を経た顧客のほうが「買い回り」が多い。

など前述の事例とも符合しているかのような傾向は随所にみてとれます。

MAとバリアブル印刷は、もうつながっている!?

DM施策のデメリットもあります。オンラインに比べて「コスト高」である、「スピード感に劣る」などが浮かびます。これを払拭し、デジタルとアナログの組み合わせを実現させる試みは始まっています。マーケティングオートメーション(MA)やECシステムとバリアブル印刷機をダイレクトにつなぐ試みです。
例えば、「メール3回未開封」といったオンライン上のフラグがたつと、即座にバリアブル印刷機に指令が届き、対象者だけに1to1メッセージを1~2日後に紙媒体で展開されます。

DMの課題点も解決できそうです。
「コスト高」:特定のフラグのたった対象者のみに送るので、一斉発送よりコストを抑えられる。
「スピード感」:まるでメールのような即時性のある発送ができる

某デジタル系のwebニュースの記事(昨秋)でみたのですが、某通販ECで「カート放棄」のフラグが立った顧客に対し、24h以内に関連するカタログを発送するテストを行ってみたところ、オンラインのみに比べ1.2倍の効果があったようです。このような取り組みは今後ますます増加していくのではと感じています。

冒頭でデジタル・アナログ組み合わせの効果を発揮するポイント(仮説)として、3点をあげました。(1)オンラインで到達し得ない層へのアナログ施策による補完、(2)オンラインの閲読志向・行動特性を踏まえ、アナログで届ける情報を最適化、(3)五感に訴えるアナログ施策を交え、コミュニケーションをよりリッチに。

連載第3回目は、1月下旬~2月上旬を目処に、これら3つのポイントを軸に活用の最適解を考察してみます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

プロフィール

大木 真吾
博報堂プロダクツ ダイレクトマーケティング事業本部 データベースマーケティング1部 シニアデータベースマーケティングディレクター

データに立脚した顧客理解を。 目指すは、良質な顧客体験の創出。

2005年博報堂プロダクツ入社。 データ分析に立脚した戦略設計、施策プランニングから実施・効果検証までワンストップで対応するマーケティングプランナーとして、様々な業界のオムニチャネル/通販/店舗送客/CRM/EC領域を担当。

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