このページをシェアする

  • twitter
  • facebook
  • line
  • line

2017年9回目を迎えた、アジア最大級のマーケティングカンファレンス「アドテック東京(ad:tech tokyo)」。10月17日(火)、18日(水)の2日間に会場を訪れた人は1万4095人にのぼりました。本稿では、博報堂DYグループ社員が登壇したセッションの模様を紹介します。

【キュレーションメディアのあるべき姿とは?】

川上慎市郎:グロービス経営大学院 准教授(マーケティング創造領域)
吉野五十也:アイレップ 執行役員 ソリューション統括本部 本部長
小林満里奈:電通デジタル コンテンツマーケティンググループ クリエイティブプランナー
竹下隆一郎:ハフポスト日本版編集長
喜納信也:株式会社ミナカラ 代表取締役薬剤師

「このセッションでは、2016年12月に広告マーケティング業界を揺るがせた「WELQ問題」を取り上げながら、キュレーションメディアは今後どうあるべきかについて考えていきます」と、モデレーターの川上氏が挨拶した後、まず「WELQ問題」の経緯を簡単におさらいしました。「DeNAが医療情報サイト『WELQ』を開設したのが2015年10月。1年後の2016年9〜11月頃、同サイトに載っている情報はどうもおかしいぞとネットで話題になり、著作権問題なども指摘されて、最終的に12月1日、同社はキュレーションメディアのすべてを閉鎖すると発表し、謝罪会見しました。すると、リクルートやサイバーエージェントなども一斉に類似のサービスを終了したことから、ネットメディアの世界はどうなっているんだ?と大きな社会問題にもなりました」。そして「誤った医療情報が大量に作成・掲載されており、薬機法違反のおそれがあること。ユーザーの自由投稿の形を取りながら、実際は運営主体がコピペ・マニュアルを用意し、外部ライターに記事を作成させていたこと。それらの記事が検索上位に表示されるよう、SEOを操作していたこと」が問題だったと振り返りました。

スピーカーを務めたアイレップ 執行役員 ソリューション統括本部 本部長 吉野五十也氏

いま、キュレーションメディアはどうなっているのか。SEOの達人といわれるアイレップ吉野氏がスライドで見せたのが、旅行系キュレーションメディアAとBの、旅行系5843キーワードをめぐる順位推移です。「2017年2月1日の時点で、キュレーションメディアBのファインダビリティが約17000から8000に半減しているのは、グーグルが品質の低いサイトは表示しないというアルゴリズムをかけ、キュレーションメディアの排除に乗り出したから。とはいえ、キュレーションメディアAはそれ以降も数字を伸ばしており、アルゴリズムがターゲットとしていたサイトを排除できていないとの声がありました。この時、知名度の高いサイトは生き残る傾向が見られました。また、医療系の一部キュレーションメディアも順位維持できていましたが、その後のグーグルの複数回にわたるアップデートにより、これらのサイトは排除されました。ちなみに、一度大幅に順位を落とされてから元の水準に復活したサイトはいまのところなく、今後キュレーションメディアを新たに立ち上げてSEO集客をメインとして収益を上げるのは難易度が高くなりました」。

インターネットで服薬支援サービスを展開しているミナカラの喜納氏は、自社のサービスが「薬剤師Q&A」からスタートしたことを紹介。薬の飲み合わせや授乳中の服薬について問い合わせが多かったことを明かし、同様の質問が多いことに気づいてからは「薬事典」などの記事へと展開していったとか。「サービスを開始した2014年当時、ネット上での服薬相談は2ちゃんねるやYahoo!知恵袋くらいでしか行われておらず、薬剤師から見て間違った情報が多かったので、服薬支援サイトを始める意義があると感じた」と語りました。当初、服薬支援サービスはロングテール対応が適していると感じていましたが、「途中から記事を中心にミドル対応へとシフトした結果トラフィック数も伸びたので、ミドル対応を狙ってキュレーションメディアが当時活発化したのも理解できる」そうです。今回の問題が残したものは、当時言われていた「医療系メディア500万MAU限界説」を打破したことと、ユーザーニーズとペインがあることを証明したこと。「医療系メディアではネット広告の効果が低い、という観念をどう変えていくかがこれからの課題」と発言を締めくくりました。

「この問題以降、『キュレーションメディアは嘘情報だらけ』のように言われていますが、キュレーションメディアには本当に存在価値はないのでしょうか」という川上氏の問いに対して、電通デジタルの小林氏が発言しました。「キュレーションメディアが発達してきた背景には、オウンドメディアとソーシャルメディアの充実で検索環境が整い、人々は自ら好む情報を取り込むようになるという、能動的検索社会への変化がありました。また、7ゼタバイト環境で強引に提示される企業メッセージより、友人知人や第三者メディアなど自然に接する情報を重視するという、自然情報主義の広がりもありました。さらに、スマホによるオールウェイズオン環境が実現、消費者主導の時代が到来したことも大きかったですね。弊社が調査したスマホでの各サービス利用率推移を見ても、2014年からの2年間では『ニュースアプリ』『まとめサイト』といったキュレーションメディア、バイラルメディアが最も伸びています」。キュレーションメディアの社会的地位は、海外での方が圧倒的に高いという印象があり、2015年にオバマ大統領がBuzzFeedの単独インタビューを受けたこともその一例。「欧米でも若者の既存メディア離れが進んでおり、政治家や企業の間では新興メディアを活用する動きが日本よりも顕著ですね。大統領選でフェイクニュースが話題になっていましたが、アメリカでは今、読み手のリテラシー教育に力が入れられており、高校や大学で『ニュースをどう見るか』といった授業も行われています」と、海外のキュレーションメディア事情にも言及しました。

続いてハフポスト日本版編集長の竹下氏は「アメリカでキュレーションメディアから出発したハフポストは、トラフィックを稼ぐにつれてオリジナルコンテンツが増え、さらにはLGBTなど少数派の権利をきちんと主張するリベラルなサイトだと認められてくると、SEO対策から離れ、自分からコミュニティを作っていくメディアへとスイッチしていきました」と話します。「以前はSEOが強いと言われたが、現在ではフェイスブック上でワシントン・ポストより信頼度の高いメディアと評価されており、フェイスブック上でのコメントがNBCやFox Newsより多いのは、個性や多様性を重視する人々の間でコミュニティができているから」と解説。また、日本では海外に比べてYahoo! Newsが圧倒的に強いという特殊事情があり、単なるマスメディア的な戦略では勝てないので、日本でもコミュニティを作る方向に動き、「子育て中のママを招いてミニイベントを開催するなど、コミュニティの維持にコストをかけています。読者を可視化できるのでスポンサーにも好評」とのこと。一方アメリカでは、「ハフィントンポスト」というフェイスブック上のページをユーザー別に細分化する作業が進んでおり、日本もそれにならいつつあるとか。とはいえ、今年2月以降はSEOがまた格段に良くなってきたので、「『共謀罪』の解説記事など長く読まれるコンテンツも作り、今後はロングテールも狙っていこうと考えている」とのこと。

その後、質疑応答を経て、モデレーター川上氏は「インターネットは良くも悪くも民主的な世界で、参加するすべての人に責任があります。キュレーションメディアについては、クライアント、代理店、メディアが共にこれからも考えていかなければいけない問題」と締めくくり、セッションを終えました。

プロフィール

吉野 五十也
アイレップ
執行役員 ソリューション統括本部 本部長

前職よりSEO事業新規立上げに参画するなど、システム・ツール開発事業に従事。2010年、株式会社アイレップ入社。その後ソリューション統括本部のエースとして、チームマネージャー、グループマネージャー、本部長と異例のスピードで昇進。2016年に、執行役員就任。

この記事に関する お問い合わせはこちら

このページをシェアする

  • twitter
  • facebook
  • line
  • line

関連記事

2018.01.31

記事・コラム

コンテンツビジネスラボ リレーコラム 第4回 <音楽>前編

  • 博報堂DY ホールディングス
    道堂 本丸(みちどう ほんまる)

2018.01.19

記事・コラム

「リリックスピーカー」の 顧客体験はデータで 進化する。【第1回】

  • SIX
    藤原 晴雄(ふじわら・はるお)

2017.12.26

記事・コラム

コンテンツビジネスラボ リレーコラム 第3回 アニメ編

  • 博報堂
    後 皓介

閉じる