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 「データ・ドリブンマーケティング」「ビックデータマネジメント」「デジタルトランスフォーメーション」、こういったデジタル領域におけるデータマーケティングの関連キーワードは、今ある種のBUZZワードになっています。特に近年は、アナログなオフラインコミュニケーションやマス向けのアド展開をメインとしていた企業も、データを活用したONE to ONEコミュニケーションにフォーカスするなど、業界を問わず企業戦略においてひとつの大きな柱になっていることは、すでに周知の事実と言えるでしょう。
 それに伴い、データマーケティングのツールの開発ベンダーや、複雑化するデータ管理を一元的に集約できるビジネスインテリジェンス(以下BI)ツールなど、多くの新ツールやデジタルサービスのリリースが続いています。
 新進気鋭のスタートアップを含む、多くのソフトウェア提供企業が、自身がパイオニアになるべくデジタルマーケティングを舞台に狼煙を上げ、ツール同士がシェアを争う時代に突入している印象を受けます。
 では、そんな中で企業として本質を捉え、有益なデジタルマーケティングを行なうために重要なことは何なのでしょうか。
 それこそが、今回ご紹介する「プロジェクトマネジメント」の視点です。導入する企業だけでなく、多くのステークホルダーがかかわるデジタルマーケティングにおいて、プロジェクトマネジメントの質こそが最重要な要素といっても過言でなく、デジタルトランスフォーメーションの土台をつくっていく作業ともいえるかもしれません。
 本記事では概念的な部分から、大きなデジタル化の流れの中で重要だと感じたポイントを3点ご紹介したいと思います。

手段が目的にならないよう、本来のゴールを定期で振り返る

 おそらく、そんな基本的なことは分かっているとお思いになる方が大半かと思います。ただ、ここで敢えて書かせていただいた背景としては、プロジェクト課題がここに起因しているケースが非常に多いと感じることが多いためです。
 マーケティングという言葉は非常に広義で、何の業務までが“マーケティング”なのか、その定義が曖昧です。マーケット(市場)シェア拡大のための取組ということであれば、すべての広報・宣伝・販売活動は種類云々を問わずマーケティングと言えるでしょう。
 ただそれがデジタルとなると、一気に“データ”という要素が主軸になります。データはとても膨大で、ただ眺めるだけではその量に埋もれてしまいます。データから確実に戦術に落とすためにはその管理が必要で、そのためにツールやパッケージを活用するということになります。これは当然の流れで、そもそもスクラッチで仕組みを開発する場合のコストとリスクと比較した際に、すでに稼働しているツールに自らのビッグデータを乗せていく方が、コストやリスクの軽減はもちろん、多くのメリットを受領できます。さらに、それらのソフトウェア開発会社は自らのサービスをグロースさせていくため、機能追加が少量のコストで実現する可能性もあるでしょう。
 例えばツールといっても、分析であればGoogleやAdobe等々の主流のものから、今は世界規模で様々なスタートアップ企業がオリジナルのアルゴリズムを採用した分析ツールをリリースしています。顧客管理や営業管理であればSales force、リード育成とユーザーの態度変容シナリオに即したプッシュ型アプローチのためのMAツールならMarketoやシャノン、データの一元管理のためのBIツールであればDOMOやTableauなど。最近流行りのパーソナライズ分野においてはDMPツールも数多く存在します。
 こうしたツールは非常に優秀で、互いの連携を前提にして開発されているものがほとんどです。これも近年のツール多発の要因でもあると思います。何かの管理ツール導入は、他のツール導入のチャンスでもあるわけです。そしてその青写真を描くのが、デジタル領域におけるコンサルティングの役割の一部。そのメリットとデメリットを検証し、費用対効果から選定が行われ、それぞれのベンダーと契約すれば、多くの場合、ベンダーの提供するクラウド環境下でツールそれぞれの利用がすぐに可能となります。
 しかし、ツール導入と聞くと言葉は優しいですが、その先を見据えたカスタムを行なうとなると、これだけでも相当なパワーと体力が必要になります。そして導入終盤になって初めて、プロジェクトゴールが“本来達成すべき成果”から“ツールを導入すること”になっていることにようやく気が付く、というプロジェクトが非常に多いと感じます。ツール導入はできたがそれを活用できず本来やりたかったことにつながらない、その原因はゴール達成までの成果指標を段階的に設定しておらず、施策だけにフォーカスしてしまっていることではないかと思います。施策が目的になっていないか、俯瞰でプロジェクトを管理する責任者を定めているか、そのプロセスを見直すことがこうした失敗を回避するための基本でもあり、重要なタスクと言えるのではないでしょうか。

全方位型のステークホルダーマネジメントでプロジェクトを俯瞰する

 デジタルトランスフォーメーションのような大きな変革を伴うプロジェクトで、もうひとつ気をつけるべきだと感じるのはステークホルダーの認知と対応戦略です。
 多くの企業の場合、ステークホルダーという言葉自体は非常に一般的に使われているものの、RFP(提案依頼書)やプロポーザルを読んでみると、to Cであればリテール、to Bであればクライアント、要はターゲットユーザーを示す言葉としてのみ使われているケースがあります。
 本来、ステークホルダーとはその意味合いの通り、当該プロジェクトやその成果物によってプラスもマイナスも含め、影響を受けるすべての関係者、関係組織を指します。つまりユーザーはもちろんですが、プロジェクト関係者(社内社外問わず)、さらに経営陣といった最終意思決定層、2次/3次委託者、事務処理を行なう経理担当者なども該当します。特に関係各所とのコミュニケーションチャネルが複雑化する場合、プロジェクト立上げの時点から、思いつく限りのステークホルダーをリスト化し、影響度と期待する関わり方を定義した上で、コミュニケーション頻度や詳細度を含む対応戦略を立てておくことが大事だと言えるでしょう。
 例えばBIツールの導入プロジェクトをケースと考えると、インナー向けの業務効率化のためのシステムになるため、この時点で発案者(担当者)、ツールベンダーの関係メンバー、BIツールの利用部署が思い浮かびます。ただもう少し深掘りをしてみると、まずは利用部署の中でも、部署のマネジャーとスタッフでは発言の影響力が異なります。またツールに導入するデータが個人情報や機密情報に触れる場合は、セキュリティ関係者も該当することになるでしょう。またBIツールは、そのままではあくまでも“箱”でしかないため、そこに入るデータを適切な形で加工するアナリストが必要になります。さらにそのデータを表示するためのエンジニアも稼働するかもしれない。データベースを管理するSierが入ることも珍しくありません。
 プロジェクトを進める上で、落とし穴は意外と社内関係者やプロジェクト内体制に存在することが多く、お互いの利害が一致しない場合など、その実行に伴うリスクをどこまで網の目にかけることができるかが、プロジェクト進行においてキーになると言えます。

やるべきことの優先度を設定し、達成までの道筋をデザインする

 最後に、実際にプロジェクトを進めていく上でタスクの“見える化”についてお伝えできればと思います。例えば“今もっている会員データを活用して、LTV(Life Time Value 以下:LTV)を向上させる”という戦略がビジネス判断としてあったとします。そこから、LTV向上というゴールに対して現状を把握し、ボトルネックを洗い出すといったフローなどを経て、「会員属性データと3rd Partyデータを活用してパーソナライズしたメールマーケティングを実施する」という施策に一歩進めたとしましょう。
 さて、ここからネクストステップとしてすべきことは何でしょうか。このフェーズから発注先の責務として頼りすぎてしまうことが多いのではないでしょうか。実は、この出だしのプロセスから直近のタスクがブラックボックス化し、実は歯車がズレていた、ということが多いと感じています。
 私達はキックオフの際に、プロジェクトにおいて大切なことは“計画”のプロセスということを必ず伝えるようにしています。
 何をするのか、はもちろんですが、どういったプロセスを誰が責任者として行なうのか、そして何を成果指標とするのかがプロジェクト成功のカギを握ります。計画プロセスには色々な考え方があり、そこで行なうことはテーラリングされますが、“計画”はウォーターフォール型であろうがアジャイル型の進め方であろうが、重要な要素だと考えています。
 前述で言うのであれば、ツール選定において行われた分析の視点は何をもって行われていたのか。本来やりたかったことに準じる基準で選定が進んでいたのかを把握しておくに越したことはありません。
 さらに、そのツールに対して会員データベースからどう情報を連携させるのか、そのためには誰に協力してもらう必要があって、それが外部の会社であった場合は、そのコストは追加コストになることなどを予想できているか、を俯瞰してみる必要があります。

 デジタルマーケティングの重要性は疑う人を少ないですが、それは何でもできる魔法のようなものではありません。最終的には結局、誰かが決断と最終説明の責任を負う非常にアナログな側面を持っています。
 そのロールは発注先かもしれないし、部署のマネジャーかもしれないし、オーダーした自分自身かもしれません。その責任を負う覚悟を持つためには、必要なプロセスを自分の言葉で把握していること、そして次に行われるタスクの重要性と優先度をできるだけ認識していた方がいいでしょう。専門用語である必要はありません。そのためには、タスクを可能な限り定義し“見える化”することをお薦めします。

  1. 手段が目的にならないよう、本来のゴールを定期で振り返る
  2. 全方位型のステークホルダーマネジメントでプロジェクトを俯瞰する
  3. やるべきことの優先度を設定し、達成までの道筋をデザインする

以上が、クライアント企業のビジネス課題に対して最適なUXを構築し、解決してきた博報堂アイ・スタジオのプロジェクトマネージャー視点での、デジタルマーケティングプロジェクトにおける3つの重要ポイントとなります。概念的で分かりづらい部分も多いかと思いますが、上記を頭の片隅においてプロジェクトをスタートすることが、成功へのヒントになれば幸いです。

プロフィール

當摩和也
博報堂アイ・スタジオ アクセラレーション部 副部長/シニアプロジェクトマネジャー/シニアプロデューサー

2013年度博報堂アイ・スタジオ入社。デジタル戦略策定やUX設計、オウンドメディア構築、CRMアプリ、マーケティングツール導入など幅広いインダストリーでの大規模プロジェクトに数多く従事している。PRINCE2(R) Practitioner Certificate/Certified Scrum Master

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2018.09.19

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