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「FAIV」開発の背景

インターネット広告を含むデジタルマーケティングには、レポートとして明瞭な数値が取得できるという特徴があります。代表的な指標としては、掲載した広告経由でのクリック率やコンバージョン率(サイト上での購買や会員登録などの行動に至った比率)、あるいはクリック後のランディングページからの直帰率やサイト滞在時間などです。
これらの数値は広告に対する生活者の生の反応データであり、数値をもとに効果改善に繋げることができる、という利点があります。しかしその反面、具体的な数値が出るがゆえに、数値に表れない広告効果については考慮されにくい、という側面もあります。

実際、広告キャンペーンや掲載メディア等にもよりますが、掲載した広告のうち、クリックやコンバージョンに直接的に結び付くのは、1割にも満たない場合も多いです。つまり、現在利用されているインターネット広告の代表的な指標では、掲載した広告の9割以上が評価されないケースがある、ということです。では、その時クリックやコンバージョンに結び付かなかった広告には全く意味がないかというと、そんなことはありません。広告にはそもそも、生活者に商品やサービスを知ってもらう、興味や好意を持ってもらう、そのきっかけになるという役割があるからです。

このような、直接的な数値以外の広告効果をいかに把握し測定するか、という課題に対して、従来からある手法としてはリサーチ会社を使ったブランドリフト調査があります。しかし広告ごとに毎回調査を実施するとなると大変です。また、別の手法としてアトリビューション分析という手法が一時期より注目を集めました。アトリビューション分析とは、直接的なクリック経由のコンバージョンだけではなく、間接コンバージョン(直接コンバージョン以前のクリックや広告接触によるアシスト)も含めて広告効果を評価する方法です。しかしこの分析手法は、間接効果に着目しつつも、やはり広告経由でのコンバージョンに対する評価の手法であり、コンバージョンに至らなかった広告の効果は、依然として測定されないままでした。

このような背景から、クリックやコンバージョンに結び付かなかった広告の効果を測定し、価値を可視化する方法はないのか、という課題意識を持って開発したソリューションが、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)のFAIV「Framework for Audience Intent Visualization」です。

DMPデータを活用

具体的なFAIVの説明に入る前に、まずはDACが提供しているAudienceOne(R)というDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)について簡単にご説明します。AudienceOne(R)とは、生活者の広告主サイト外行動が大量に蓄積されているデータベースだと捉えてください。例えばある生活者(ブラウザ単位であり、個人を特定はできません)は、3日前には自動車関連のサイトを閲覧し、2日前には金融情報サイトを閲覧し、1日前には不動産関連のサイトを閲覧している、というようなデータです。AudienceOne(R)は、このようなサイト閲覧データを月間約4.8億ユニークブラウザ分も保持しています。これだけのボリュームのデータですから、生活者のインターネット行動全般、とみなすことができます。

このデータを用いることで、広告に接触した生活者の、クリックやコンバージョン以外のインターネット行動の変化が可視化できるのではないか。このような思いから、FAIVの開発はスタートしました。

購買ファネルの可視化

FAIVの仕組みをご説明します。
まずは仮説として、生活者は商品やサービスに対して購買や登録(=コンバージョン)に至るまでに、いくつかのステージを経ているのではないかと考えました。これは認知、理解・好意、検討、購入、などで説明される、パーチェスファネルの考え方と似ています。コンバージョンは必ずしも購買に限りませんが、このステージのことをわかりやすく以降では「購買ファネル」と呼ぶことにします。
上記の仮説に基づき、生活者の「購買ファネル」を、AudienceOne(R)のインターネット行動データを使って可視化することを試みました。生活者はいくつかのファネル階層を遷移してコンバージョンに至ると仮定し、それぞれのファネル階層に特徴的な行動パターンを、最終的にコンバージョンに至ったユーザーの行動履歴から見つけ出します。

具体例を見ながらご説明します。
ある生命保険のインターネット上での資料請求をコンバージョンとして分析を行いました。AudienceOne(R)のデータを使って、資料請求した生活者の行動を過去にさかのぼって分析し、時系列でインターネット行動の変化をモデル化します。その分析結果を、生活者の意識の遷移に沿って示したのが下の図です。この例では資料請求に至るまでに4つのステージがあり、4つのステージの中に3つの階層があることがわかりました。また各ステージに特徴的な行動パターンも図に記載しています。エンタメや自動車関連サイトを見ているステージと、ビジネスや投資関連サイトを見ているステージがそれぞれ一番初期のファネル階層、ライフステージの変化をうかがわせる結婚・育児関連のサイトを見ているのが次のファネル階層です。保険関連のサイトやQ&Aサイトで情報収集を行うファネル階層を経て、最終的に資料請求に至る、という「購買ファネル」の推移を読み取ることができました。

広告効果の測定

次に、可視化されたこの「購買ファネル」を用いて、広告効果を測定していきます。先ほどの「購買ファネル」可視化において、生活者がファネル階層を次第に遷移して購買に至る、というモデルが出来ました。このファネル遷移に注目し、広告に接触した生活者と接触していない生活者で、ファネル遷移率を比較できれば、広告の全体的な効果を可視化できると考えました。
具体的には、計測対象の広告にトラッキングタグを設定し、広告接触した生活者を識別します。次にAudienceOne(R)データから、広告接触していないコントロール・グループを設定します。広告接触グループ、非接触グループそれぞれで、広告掲載後のファネル遷移を見てみます。もちろん、生活者それぞれで初期段階にどのファネル階層に該当するかは違いますので、すべてのファネル階層間での遷移率を計測します。具体的には下の図のようになります。この例では、ファネル階層Dからファネル階層Aへの遷移率が、広告接触グループでは14.2パーセント、非接触グループでは11.5パーセントであり、広告接触グループのほうが2.7ポイント(1.23倍)リフトしていることが分かります。
このように、購買(コンバージョン)前のファネル階層間での遷移率の比較によって、コンバージョンには至らなかった広告の効果が可視化できると考えています。

活用方法

この比較計測は、複数の広告媒体やクリエイティブで横断的に実施することが可能です。どのファネル階層間に効いた媒体か?どのファネル階層間に効いたクリエイティブか?を比較検討することができます。例えば、ある広告媒体は認知から興味関心フェーズのような浅いファネル階層に効く、別の広告媒体は興味関心から検討や購買直前フェーズのようなファネル階層に効く、というような解釈ができれば、それぞれの広告媒体へのクリエイティブメッセージも適切なものに差し替えていくことができるのではないでしょうか。

広告の重要な役割の一つである「自社商品を広く世の中に知らせ、見込み顧客を獲得すること」に対して、FAIVではこのようにフルファネルで広告効果を数値化することにより、より長期的な視点に立ったコミュニケーション設計のお役に立てると考えています。

プロフィール

岩井崇明
プロダクト開発本部 第三データ解析部 部長

2009年、DACに入社。運用型インターネット広告の営業兼コンサルタントを経て、プロダクト開発職へ。自社データやアライアンスデータを用いた広告商品・マーケティングサービスの企画開発に従事。現在はクライアント向けにデータを活用した分析支援及びプランニング支援業務を行う。

那須川進一
プロダクト開発本部 フェロー

2013年、DACに入社。データを 活用した広告商品の開発に従事。現在は主に人工知能など先端技術の研究を行う。

銭騁
プロダクト開発本部 第一データ解析部 データアナリスト

2015年、DACに入社。データを活用したユーザー分析、広告商品の開発に従事。

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